- 納谷 新
- 納谷建築設計事務所
- 建築家
対象:リフォーム・増改築
- 木下 泰徳
- (アップライフデザイナー)
- 溝部 公寛
- (建築家)
建物は老朽化が激しく、雨漏りはあたりまえ、断熱は一切施されておらず、構造も平屋とはいえ瓦屋根の不安定なものでした。
それでも、クライアントが望んだのはリフォームという選択でした。リフォームの難しいところは、既存建物の図面がなかったり、仮に図面があってもその通り施行されていないという現実もそうですが、クライアントの建物への想いというところが大きい要素となります。戸建てであれば、なおいっそうのことです。ご自分の家族の想い出など、われわれでは入り込めない部分があります。
事実、ファーストプレゼンテーションから約1年経過して、クライアントより正式な工事の依頼がありました。時間をかけて悩んだ決心でしょう。
既存建物は無計画に増改築されており、南側に便所・納戸が配置され採光・通風が遮断されている状態でした。
そこでわれわれは平面のプログラミングから、始めることにしました。具体的にはトイレの位置を変更し水回りとして洗面・浴室と近い位置にまとめ、納戸をなくしたかわりに収納をコアとして中央にまとめる計画としました。そうすることによって、LDKはもちろんのこと和室にも南の採光を届けることが可能になり、遮断されていた風も通り抜けるようになりました。
また解体することで露わになった構造は筋交いが一本も入っておらず、頼りの柱・梁も腐っていたりと築63年という歳月の現実を見ることになりました。外装にはほとんど手をつけず、基礎・柱・梁・筋交いと全てを補強し、同時に断熱も施しました。
ただ単に古くなって想い出までも色褪せていく建物が、リフォームすることにより新旧それぞれを引き立てあい生き返らせました。裏庭も表庭として生まれ変わり、樹齢100年の桜の樹は、今年の春も満開となりました。
このコラムの執筆専門家
- 納谷 新
- (建築家)
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「Why」を突き詰めると、家の本当の役割が見えてきます
例えば「ここに窓が欲しい」と思う気持ちは、記憶の産物でしかありません。欲しい「why」を突き詰め、家作りで答えを出すのが僕らの仕事です。家への思いを遠慮せず話して下さい。楽しくて新しい家を一緒に作っていきましょう。※僕が納谷兄弟の弟です
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