戦略的ビール売り子の作戦はまだまだ続きます。
試合に興奮しながら短い時間で、どんどんビールを飲む客は、更に酔いが回ってきます。こうなると、居酒屋やスナックと勘違いしている客も増えてきます。そこで、今度は、名札作戦です。
居酒屋やスナックでは、お客様との会話のきっかけにするために、名札に出身地や趣味を手書きで書いたものを使うところがあります。
この手書き名札ツールのお陰で、「お客様の方から会話のアプローチ」がし易くなります。この名札を見て「○○ちゃんって言うんだ。良い名前だね~お!北海道出身?俺と一緒だ!」何て言われるとシメシメです(笑)
彼女は、差し込んであるだけの手書き名札を、取り外して近くで見せるのです。酔っ払いのおじさんは「これ、ちょーだい!」と言います。まだ試合の途中の場合は、「ダメですよ~でも、試合の終わり頃ならあげます」と言ってじらすのです(作戦6)
試合中盤で、手書き名札に反応してくれたお客様は、試合終了まで、彼女からビールを買います。
名札が欲しいから、他の売り子には目もくれません。彼女は、新規客を再来店客にし、とうとう常連客にしてしまったのです。
そして、試合が終盤になると「はい、お待たせ~名札あげますからね~、次回この球場に来られるときは、必ず持ってきて下さいね。ビール大盛サービスしちゃうから~」と言って渡します。(作戦7)
このお客様は、次の試合にも来たくなるのです。野球場としても来店頻度も上げてしまう凄いマーケティングですね。ちなみに彼女は、この名札は、常時数十枚は、準備していたそうです。
で、次の試合。
このお客様は、試合と言うよりも、彼女を目当てに球場に来ます。
そして、彼女を探します。
彼女からすれば、短い接客時間なのでいちいち、そのお客様の顔を覚えてはいません。
しかし、そのお客様は「手書き名札」を持ってきているのです。(作戦8)
「あら~約束通りに来て下さったんですね~嬉しいです!今日もたくさん飲んで下さいね~」
お客様の立場で、一番嬉しいのは顔を覚えてくれている常連扱いです。
この特別感が嬉しくて、何度も通ってしまうのです。
この名札はもう一つの効果があります。
他の売り子が、彼女の名札を持っているお客様には、ビールを売らなくなるのです。
と言うか、売れなくなるのです。だって、「彼女のお客様」なんですからね。
ここら辺の暗黙のしきたりは、売り子間で共有されているそうです。
つまり、この手書き名札作戦は、常連客をそのまま、自分だけの「指名客」にしてしまう効果があるのです。(これが作戦9)
さて、如何ですか?
彼女は、野球場のビール売りという舞台で、徹底的に顧客分析を行い、顧客心理と顧客ニーズをわしづかみして、新規客獲得を、再来店、常連化、固定化(指名化)に結びつけていきました。
でも、これって、視点を変えれば、どの業界、業態でも応用出来る方法ですよね。
お客様の心理とニーズを正確に掴めば、後はそこを攻めていくだけ。
たったこれだけで、新規客も常連客も掴むことが出来るのです。
いかに相手の気持ちを理解し、相手を喜ばせるか!
これが「相手軸に立つ」「お客様の立場に立つ」と言うということです。
是非、自分のお店でもどんな風に応用出来るか、考えてみて下さいね。
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