有責配偶者からの離婚請求について、財産分与や慰謝料が高額であること - 離婚問題全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
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有責配偶者からの離婚請求について、財産分与や慰謝料が高額であること

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有責配偶者からの離婚請求について、財産分与や慰謝料が高額であること。

 

 

最高裁判所大法廷判決昭和62年9月2日、最高裁判所民事判例集41巻6号1423頁

【判示事項】

一、長期別居と有責配偶者からの離婚請求

二、有責配偶者からの離婚請求が長期別居等により認容すべきであるとされた事例

【判決要旨】

一、有責配偶者からされた離婚請求であっても、①夫婦の別居が当事者の年齢及び同居期間と対比して相当の長期間に及び、②その間に未成熟子がいない場合には、③相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできない。

二、有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦の別居期間が36年に及び、その間に未成熟子がいない場合には、相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、認容すべきである。

 

その差し戻し控訴審である東京高等裁判所判決平成元年11月22日家庭裁判月報42巻3号80頁、判例時報1330号48頁

【判示事項】

有責配偶者からの離婚請求事件の差戻審において、著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り請求を認容すべきであるとの上告審の判断を受けて、有責配偶者である夫の離婚請求を認容し、併せて、妻からの請求の一部を認めて夫に財産分与及び慰謝料の支払いを命じた事例

 

 右の事実関係によれば、Xはいわゆる有責配偶者というべきところ、有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦の別居が両当事者間の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態に置かれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできない。

  二 財産分与について

  1 共有財産の清算

  XとYが昭和12年2月婚姻届をして昭和24年の別居に至るまでの間に文京区指ヶ谷町所在の建物(昭和25年当時の価格24万円)を取得した。

  Yは、そのほかに、豊島区巣鴨二丁目の宅地二筆と地上建物、更に多額の現金と株券があり、右巣鴨の土地建物は北区稲付町にX名義で所有していた宅地75坪を売却した代金等によって購入、建築したものである旨主張している。

一方、巣鴨の土地は甲野松子が買主となって昭和25年11月13万円余で買受け、その地上に木造モルタル塗瓦葺二階建居宅を建築し、昭和27年10月甲野松子名義で所有権保存登記を申請し、当時の建物評価額は82万円余であったことが認められる。Xは、甲野松子が同女の父から15万円、Xの父から10万円をもらい、これらを資金として買い受けた旨、北区稲付町の土地を買い受けたことはあるがこれを売却した代金は指ヶ谷町所在の建物の買受代金に充てた旨供述していること、XとYが共有財産を形成できたのはXが南方から復員した昭和21年5月から(昭和24年の別居に至るまでの)約3年間であり、XはD株式会社に勤務していたこと、XはYに対し昭和25年Yが指ヶ谷町所在の建物の売却代金24万円等の支払を求める訴訟を提起し、続いて、昭和26年に離婚訴訟を提起し、XはYが前記売却代金24万円を取得するならば、Yは離婚に応ずべきであると考えていたことが認められること、これらの点を考慮すると、巣鴨の土地、建物が共有財産であったと断定することは困難であり、Yの主張によっても、現金の額も明確ではなく、株券の券面額も約7万円であることからすると、Xが別居に当たり指ヶ谷町所在の建物を与えたことは共有財産の主要なものを既に分与していたというべきであるから、Yには他に共有財産の清算として請求できるものはなく、右請求は失当である。

  2 過去の婚姻費用の清算

  Yは過去の婚姻費用として2900万円を請求するけれども、Yが別居に際し指ヶ谷町所在の建物を取得したこと、昭和25年にYが右建物を売却した後はYの実兄の家の一部屋を借りて住み、人形製作の技術を身に着け、昭和53年ころまで人形店に勤務するなどして生活を立ててきたこと、Yはこれまで婚姻費用分担の申立てをしたことはなく、自力で生活してきたこと、これらの事情を考慮すると、過去の婚姻費用の清算として財産分与を命ずることは相当ではなく、XがYを悪意で遺棄してきたことは後記のとおりであるから、慰藉料算定に当たり考慮すれば足りるものというべきである。

  3 離婚後の生活費

   本件離婚請求が認容されたならば、Yは将来の配偶者としての相続権を失い、また、現在は請求していないものの、事情が変更した場合の婚姻費用分担申立ても不可能となることから、老後の不安が増大することは避けられないというべきである。

Xは現在の年間320~330万円の収入しかないとする部分もあるけれども、株式会社Aの代表取締役、有限会社Cの取締役をし、甲野松子との間に2人の男子に恵まれ、一家によって3つの会社(A、B、C)を経営しており、少なくとも平均以上の経済生活を送っていることが推認される。

他方、Yは現在年間110万円余りの厚生年金の収入しかなく、73歳の高齢で自活能力が全くないことが認められ、これらの事情を考慮すると、Yが主張する月額10万円ずつを少なくとも平均余命の範囲内である今後10年間の生活費として負担を命じることは相当というべきであり、一切の事情を考慮すると、右生活費にかかわる財産分与としてXに1000万円の支払を命ずるのが相当である。

  三 Yの慰藉料請求について

  Xは、昭和24年8月ころから甲野松子と同棲し不貞行為を継続しているものであり、しかもYと別居するに際して文京区指ヶ谷町所在の建物(当時の価格24万円)を与えたほかには40年間何らの経済的給付をせずに今日に至ったのであって、Yを悪意で遺棄したものというべきであるから、Xには民法第709条に基づきYが受けた精神的損害を賠償する義務がある。

  そこで慰藉料の金額について検討するに、Yは破綻の原因を作出していないのに自己の意思に反して強制的に離婚させられ、Xが不貞の相手方たる甲野松子と法律上の婚姻ができる状態になることはYに多大の精神的苦痛を与えることは明らかであり、Xが甲野松子と生活して2人の子供も生まれ、一家によって会社を経営し、相当程度の生活を営んでいることは前記のとおりであり、一方、Yは実兄の家に身を寄せ、今日まで単身生活を送ってきたこと、その他一切の事情を斟酌するならば、Yの精神的苦痛(Xが破綻原因を作ってから本件慰藉料請求反訴状がXに送達された平成元年7月28日まで)を慰藉するには1500万円をもって相当というべきであり、XはYに対し右金員及びこれに対する不法行為の後である平成元年7月29日から完済に至るまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。

  四 以上のとおり、Xの本訴離婚請求は理由があるから認容すべきであり、これを棄却した原判決を取り消し、併せてXに対し財産分与として1000万円の支払を命じ、Yの反訴慰藉料請求は1500万円とその遅延損害金の支払を求める限度で正当として認容した。

 

 


 

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