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米国特許法改正規則ガイド
第10回 (第6回)
先願主義に関する規則及びガイドラインの解説
河野特許事務所 2013年4月24日 執筆者:弁理士 河野 英仁
(v)出願人同一の場合の例外 102条(b)(2)(C)
開示された主題とクレームされた発明とが、クレーム発明の有効出願日前に、同一人に所有されているか、または、同一人に譲渡する義務がある場合、先願は102条(a)(2)における先行技術に該当しない。すなわち、参考図7に示すように後願の有効出願日前において、先願の出願人と先願の出願人とが同一の場合、先願は拡大先願の地位を有さない。同一企業から同一の研究・開発テーマで関連する発明が集中的に出願される傾向にあることから、先願が公開されるまでは同一企業の後願に対し、後願排除効を有さないようにしたものである。
このように拡大先願は、102条(b)(2)(C)に基づき先願と後願とが出願人同一の場合、後願排除効を有さず、また、先願が他の発明者を挙げてない場合も102条(a)(2)の規定に基づき後願排除効を有さない。この点、拡大先願の地位について規定する日本国特許法第29条の2かっこ書き(発明者同一)及び但し書き(出願人同一)と類似する。
参考図7
先願と後願の出願人が同一の場合、規則1.104(c)(4)(i)に規定する陳述書を提出することができる。
規則 1.104 審査の内容
(c) * * *
(4)(i)米国特許法第102条(a)に基づく先行技術として適格である主題とクレーム発明とは、出願人または特許権者が、主題とクレーム発明とが同一人によって共通して所有されている、または、同一人への譲渡義務が課せられているという旨の陳述書を、クレーム発明の有効出願日以前に提供した場合、米国特許法第102条(b)(2)(c)に関しては同一人に所有されていると取り扱われる。
改正前 |
改正後 |
第102条(b) その発明が,合衆国における特許出願日前1 年より前に,合衆国若しくは外国において特許を受けた若しくは刊行物に記載されたか,又は合衆国において公然実施若しくは販売された場合
|
第102条(b) 例外 (1) クレーム発明の有効出願日前1年以内の開示 有効出願日前1年以内の開示は、以下の場合102条(a)(1)における先行技術に該当しない (A)開示が発明者若しくは共同発明者、又は直接的若しくは間接的に発明者若しくは共同発明者により開示された主題を得た他人によりなされた場合;または (B)開示された主題がそのような開示前に、発明者若しくは共同発明者、又は直接的若しくは間接的に発明者若しくは共同発明者により開示された主題を得た他人により公衆に開示された場合。 (2) 出願及び特許中の開示 開示は以下の場合、102条(a)(2)における先行技術に該当しない (A) 開示された主題が、直接的又は間接的 に発明者又は共同発明者から得られた場合; (B)開示された主題が、そのような主題が有効に102条(a)(2)の規定に基づき出願される前に、発明者若しくは共同発明者、又は直接的若しくは間接的に発明者若しくは共同発明者により開示された主題を得た他人により公衆に開示された場合;又は (C)開示された主題及びクレームされた発明が、クレーム発明の有効出願日前に、同一人に所有されているか、または、同一人に譲渡する義務がある場合。 |
(4)米国特許法第102条(c)
以下の条件を満たす場合、102条(b)(2)(C)の適用において「同一人によって所有されているか、又は、同一人に譲渡する義務があるもの」とみなされ、先願は拡大先願の地位を有さないこととなる。
クレーム発明の有効出願日以前に有効であった共同研究契約の単一または複数の契約当事者により、または当該当事者に代わる者により、開示された主題が開発され、当該クレーム発明が作られ、;
当該クレーム発明が、当該共同研究契約の範囲内で実行された活動の結果として作られ、かつ
クレーム発明の特許出願が、当該共同研究契約の契約当事者らの氏名を開示しているか、または、開示するよう補正された場合。
改正前特許法第103条(c)(2)に対応する改正である。参考図8に示すように、先願と後願の出願人が同一でない場合、102条(b)(2)(c)が適用されず、A社先願はB社の共同後願に対し拡大先願の地位を有する事となる。ただし、後願の出願前にA社とB社との共同研究契約が存在し、後願のクレーム発明が共同研究契約の範囲内である場合、同一人に所有されていると見なされ、A社先願はB社の後願に対し後願排除効を有さない。すなわち一定条件下で「同一人によって所有されているか、又は、同一人に譲渡する義務があるもの」の範囲が、共同研究契約の当事者の範囲にまで拡大されるのである。
参考図8
この場合、出願人は規則1.104(c)(4)(ii)(A)に規定する陳述書を提出しなければならない。また共同開発契約の当事者名がまだ出願において記述されていない場合、規則1.71(g)に従い共同開発契約における当事者の名前を含むよう出願を補正することが必要である(規則1.104(c)(4)(ii)(B))。
規則1.104(c)(4)(ii)
(ii)米国特許法第102条(a)(2)に基づく先行技術として適格である主題と、クレーム発明とは、以下の場合、米国特許法第102条(c)に係る共同研究契約に基づき、米国特許法第102条(b)(2)(c)のに関しては同一人に所有されているものとして取り扱う。
(A)出願人が、米国特許法第100条(h)及び規則1.9(e)(共同研究契約の定義)の意味内で、クレーム発明の有効出願日以前に有効であった共同研究契約の単一または複数の契約当事者により、または当該当事者に代わって当該主題が開発されかつ当該クレーム発明がなされ、また、当該クレーム発明が、当該共同研究契約の範囲内で実行された活動の結果としてなされたという旨の陳述書を提供した場合、かつ、
(B) クレーム発明に対する特許出願が、当該共同研究契約の契約当事者らの氏名を開示しているか、または、開示するよう補正された場合。
規則 1.71発明の詳細な説明及び明細書
* * * * *
(g)(1) 明細書は,規則1.9(e)に定義する共同研究契約の当事者の名称を開示することができ,又は開示するように補正することができる。
改正前 |
改正後 |
102条(c) 当該人がその発明を放棄していた場合
103条(c)(2) 本項の適用上,次に掲げる条件に該当する場合,他人によって開発された主題及びクレームされた発明は,同一人によって所有されていたか又は同一人への譲渡義務が課せられていたものとみなす。 (A) クレームされた発明は,クレームされた発明が行われた日以前に有効であった共同研究契約の当事者によって又は当該当事者のために行われたこと (B) クレームされた発明は,共同研究契約の範囲内で行われた業務の結果として行われたこと,及び (C) クレームされた発明に係る特許出願が,共同研究契約の当事者の名称を開示しているか又は開示するよう修正されていること (3) (2)の適用上,「共同研究契約」とは,クレームされた発明の分野における実験,開発又は研究上の業務を実行するために2 以上の人又は事業体によって締結された書面による契約,許諾又は協力の合意をいう。 |
102条(c) 共同開発契約のもとでの共有-以下の各項目に該当する場合、開示された主題及びクレーム発明は、本サブセクション(b)(2)(C)の適用において「同一人によって所有されているか、又は、同一人に譲渡する義務があるもの」とみなされる。 (1)クレーム発明の有効出願日以前に有効であった共同研究契約の単一または複数の契約当事者により、または当該当事者のために、開示された主題が開発され、当該クレーム発明が作られ、; (2)当該クレーム発明が、当該共同研究契約の範囲内で実行された活動の結果として作られ、かつ (3)クレーム発明の特許出願が、当該共同研究契約の契約当事者らの氏名を開示しているか、または、開示するよう補正された場合。 |
(第7回へ続く)
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