民法改正(財産法関係)その17 - 民事事件 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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民法改正(財産法関係)その17

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○ 請負契約

  民法改正提案は、請負については、住宅の品質確保の促進等に関する法律(いわゆる品確法)を取り込もうとする趣旨。

  民法改正提案は、瑕疵を理由とする解除について帰責事由を必要としておらず、損害賠償については義務違反等の別個の要件(現行民法の帰責事由にほぼ相当するもの)で認めている。

  現行民法では、法定責任説では、請負人の帰責事由が必要とさていない。しかし、請負人に帰責事由がある場合には、民法415条、416条で債務不履行責任も追及でき、その場合には、信頼利益に限られず、履行利益の損害賠償請求できる。請負人が無過失の場合は、現行民法によれば、信頼利益の損害賠償が認められているが、民法改正提案では、認められなくなるという考えもあろうが、契約締結上の瑕疵等の法理により、信頼利益の損害賠償は認められるのではないかというのが、道垣内教授の見解。

  民法改正提案は、下請負の注文者に対する直接請求権を新設した。債権者代位権との関係でいえば、判例は債権者代位権による直接請求を拡張してきたが、民法改正提案は、直接請求権を正面から認めたものである(なお、フランス法では、判例により直接請求権が広く認められてきた)。ただし、どのような場合に、誰が誰に対して(例、下請、孫請け、ひ孫請け等)、直接請求権を認めるか、また、倒産手続ではどのように扱われるかについて、民法改正提案は、定めていないので、今後の議論で詰めて行く必要がある。

                                                      

                                                              

1 民法改正提案の瑕疵の定義では、客観的瑕疵も包含するかどうか、明らかではない。

2 瑕疵通知義務を創設するのは、紛争を悪化させるのではないか。また、建築に必ずしも詳しくない事業者についてまでも、合理的期間内の瑕疵通知義務を課すのは、疑問。                                         

3 民法635条1項但書きを削除する民法改正提案は評価できる。 

参照、最判平成14年9月24日 裁判集民事第207号289頁は、「建築請負の仕事の目的物である建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合には,注文者は,請負人に対し,建物の建て替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる。」と判示している。

 

最判平成15年10月10日裁判集民事第211号13頁

「建物建築工事の請負契約において,耐震性の面でより安全性の高い建物にするため,主柱について特に太い鉄骨を使用することが約定され,これが契約の重要な内容になっていたにもかかわらず,建物請負業者が,注文主に無断で,上記約定に反し,主柱工事につき約定の太さの鉄骨を使用しなかったという事情の下では,使用された鉄骨が,構造計算上,居住用建物としての安全性に問題のないものであったとしても,当該主柱の工事には,瑕疵がある。」

 

最判平成16年12月16日民集第61巻5号1769頁、

「建物の建築に携わる設計者,施工者及び工事監理者は,建物の建築に当たり,契約関係にない居住者を含む建物利用者,隣人,通行人等に対する関係でも,当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負い,これを怠ったために建築された建物に上記安全性を損なう瑕疵があり,それにより居住者等の生命,身体又は財産が侵害された場合には,設計者等は,不法行為の成立を主張する者が上記瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなど特段の事情がない限り,これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負う。」

 

最判平成22年6月17日民集第64巻4号1197頁

「売買の目的物である新築建物に重大な瑕疵がありこれを建て替えざるを得ない場合において,当該瑕疵が構造耐力上の安全性にかかわるものであるため建物が倒壊する具体的なおそれがあるなど,社会通念上,建物自体が社会経済的な価値を有しないと評価すべきものであるときには,上記建物の買主がこれに居住していたという利益については,当該買主からの工事施工者等に対する不法行為に基づく建て替え費用相当額の損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として損害額から控除することはできない。」 

                                  

 

最判平成15年10月10日裁判集民事第211号13頁は、最高裁として初めて、主観的瑕疵を認めた判例である。

  建物建築工事の請負契約において,耐震性の面でより安全性の高い建物にするため,主柱について特に太い鉄骨を使用することが約定され,これが契約の重要な内容になっていたにもかかわらず,建物請負業者が,注文主に無断で,上記約定に反し,主柱工事につき約定の太さの鉄骨を使用しなかったという事情の下では,使用された鉄骨が,構造計算上,居住用建物としての安全性に問題のないものであったとしても,当該主柱の工事には,瑕疵がある。

現行民法では、瑕疵修補請求権と損害賠償請求書が選択的であるのに対し、民法改正提案では、まず瑕疵修補請求しなければならず、相当な期間の催告をしても請負人が履行しない場合に、損害賠償請求できる。この点は、現行民法よりも、債権者に不利な改正となる不都合がある。

 

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