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不正競争防止法って何?

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不正競争防止法という法律を聞いたことがありますか。不正競争防止法というのは、読んで字のごとく「不正な競争」を「防止」する「法律」です。どのようなビジネスの仕方を「不正競争」と呼び、そしてどのような手段でその「不正競争」を「防止」するのか、今回は、この法律についてできるだけポイントを絞って説明をしたいと思います。

【「不正競争」とは】

日本の社会においては、どのようなビジネスをするのも職業選択の自由として認められていますし、また、他の会社がやっているビジネスと同じビジネスをすることも営業の自由として認められています。お互いに自由に競争をして、その中でよりいいサービス・商品が残っていくという「自由競争原理」が認められているわけです。

もっとも、無制限な自由な活動を認めてしまうと、他の正当なビジネスを侵害したり、一般の消費者や市場経済の機能にも悪影響を及ぼしてしまうことがあります。自由な競争は、「なんでもOK」ということではなく、あくまでも「公正な競争」でなければならず、「不公正な競争」は許されるべきものではありません。

そこで、制定されている法律が「不正競争防止法」です。「不正競争防止法」は、「不公正な競争」を「防止」して、「取引社会の秩序を守る」ための法律です。

では、どのように「不公正な競争行為を規制する」のかというと、「不公正な競争行為」を法律でリストアップしてそのリストアップしている行為だけを禁止しています。これを「制限列挙主義」といいます。

なぜ、<「不公正な競争行為」をリストアップしてそれだけを禁止するという方法>をとっているかというと、仮に、会社の特定のビジネス活動が「不公正な競争」に該当すると判断された場合、その会社のビジネス活動に与える影響は大きいものですから、事前に何が「不公正な競争」に該当するのかということを明らかにして予測可能なものにしておくことでビジネス活動が萎縮しないようにするためです。

では、どこに禁止される「不公正な競争行為」がリストアップされているかというと、具体的には「不正競争防止法2条1項」に定められています。禁止されるべき「不正競争」とは以下の行為をいいます。

(1) 商品等の主体混同行為(1号)

(2) 著名表示不正使用等の行為(2号)

(3) 商品形態をデッドコピーした商品を流通に置く行為(3号)

(4) 営業秘密の不正利用行為(4号~9号)

(5) 技術的制限手段迂回装置を流通に置く行為(10号~11号)

(6)ドメイン名の不正取得等の行為(12号)

(7) 商品等の原産地・品質等誤認行為(13号)

(8) 他人の営業上の信用毀損行為(14号)

(9) 代理人等による商標の無断使用行為(15号)

これらの「不公正な競争行為」をどのように「不正競争防止法」が「防止」を図ろうとしているかというと、①「差止請求」を認めたり(不正競争防止法3条)、損害賠償請求についても「損害額の推定」を認めるなど被害者側の立証を容易にしている点(同法5条)にあります。

【権利のすきまを埋める法律】

我が国には、いわゆる「知的財産権」(=情報の独り占め的使用を認める権利)を保護する法律として、「発明」を保護する法律として「特許法」、「デザイン」を保護する法律として「意匠法」、「トレードマーク」(商品やサービスに付けられている名称)を保護する法律として「商標法」が定められています。

不正競争防止法は、「特許権」、「意匠権」、「商標権」のように「知的財産権」として保護されているもの以外を保護する場合に発揮します。

例えば、商標登録していない○○○というブランド商品があったとします。そのブランド商品の模倣品(コピー)が勝手に売られている場合には、商標法では保護されることはありませんが、「不正競争防止法」によって保護されることになります。

また、ブランドや商品形態をそのまま模倣した、いわゆる「デッドコピー」商品への対策としても「不正競争防止法」を有効に活用できます。ブランドや商品形態を開発するためには、お金や労力が必要だと思いますが、他社が費やしたお金や労力で開発したブランドや商品形態にタダ乗りしようとする会社に対する有効な対処方法になります。

【特許法、意匠法、商標法との関係について】

 「特許法」(=発明(アイデア)を保護する)、「意匠法」(=デザインを保護する)、「商標法」(=トレードマークを保護する)などのいわゆる「知的財産法」と、不正競争防止法との違いはどこにあるのでしょうか。

「特許法」・「意匠法」・「商標法」が、どのようにアイデア・デザイン・トレードマークを守っているかというと、「登録制度」を設けて、これらのアイデア・デザイン・トレードマークを登録すると、一定の期間、知的財産権の所有者に「独占的支配権」(=独り占めして使える権利)を与えて、その「権利を勝手に使うことを排除する」ことにによって「不正競争の防止を図る」という仕組みを取っています。

これに対して、「不正競争防止法」は、日々の市場におけるビジネスの中で発生する個別具体的な「不正競争行為」を、その都度排除していくという仕組みを取っています。

知的財産法による不正競争排除の仕組みと不正競争防止法の不正競争排除の仕組みは異なることから、両者に齟齬が生じることがあります。

【事例】「○×株式会社」が、自らの使用する「××カレー」というレトルトカレーの「商標」について「登録」を受け、営業を開始したところ、その「××カレー」という「商標」は同じ地域でビジネスをしている別の会社が使用している「商標」と類似しており、その「商標」がすでにBが売っているレトルトカレーの名称として周知(=広く知られている)のものであったようなケースです。

 「○×株式会社」は、「××カレー」の「商標権」を持っている以上、「商標法」によって保護されるはずです。しかしながら、このようなケースにおいて、商標権者が登録した商標を使うことが「不正競業行為」にあたるとして登録商標の使用差し止めを受けるということもあります。類似の事例で使用差し止めが認められた事例があります。(富山地裁平成8年6月12日「越乃立山」事件)。このように、「不正競争防止法」は、「知的財産権」を持っている権利者に対しても使用差し止めを主張できるという場合があり、法律の使いようによってはかなり強力な手段であると思われます。

 

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