
服部 明美
ハットリ アケミグループ
うつ病からの復職・・・朝、起きられないうちは無理
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労働者がうつ病等メンタルの病気で休職する必要があるときは、復職までのルール作りが必要です。
しかし、就業規則に休職規程はあっても、職場復帰支援について具体的に定めている会社は少ないのではないでしょうか。
職場復帰支援プログラムを策定するには、厚生労働省から平成16年10月に公表され、平成21年3月に改訂された『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』(以下 『手引き』という)をマニュアルとして活用するようお勧めします。
この『手引き』はパンフレットが発行されており、厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」からダウンロードできます。
http://kokoro.mhlw.go.jp/images/pdf/H23_Return.pdf
『手引き』 では、休職開始から職場復帰後のフォローアップまで5つのステップに分けて進め方と注意点が解説されています。
ところで、本人が復職したいと言い、主治医の「復職可能」の診断書が提出されても、本当に復職できる状態であるとは限りません。
産業医が診察すると、まだ職場に適応できる状態ではないことが多いものです。
主治医と産業医の間で見解の相違が起こるのは、よくあることです。
主治医(精神科医等)は一般的に、休養および治療の効果が出て病状が回復し、日常生活が支障なく送れる状態になったら復職可能、と判断します。できるだけ早く社会復帰してほしい、という思いもあるでしょう。
しかし、実際に職場復帰するためには、定時に出社できて、集中力の持続性や人間関係を含めた職場適応能力が回復している必要があり、産業医はそういった視点で診断します。
平成21年3月の『手引き』の改訂で「産業医による精査と主治医への情報提供」という項目が追加され、産業医と主治医の間で連絡調整するための様式もWordでダウンロードできるようになっているので利用するとよいでしょう。
http://kokoro.mhlw.go.jp/word/tebiki_1_4.doc
なお、復職可否の判断材料としては、生活記録表が役に立ちます。
小学生の頃、夏休みに記録を付けた、あれです。
復職時期の見通しが立った時点から2週間程度、生活行動を1日24時間の帯グラフ、または円グラフで記録してもらいます。
その結果、いつも10時以降まで寝ている状態とか、昼寝が多い段階では、復職はまだ無理だといえます。
先ほど述べた職場復帰の条件を満たせるよう、まずは定時に出勤することを前提に生活リズムを整える必要があります。
これに関しては、ハローワークでキャリアコンサルタントをしている人から、こんな話を聞きました。
うつ病で離職した人が社会復帰を目指し、職業相談に来て、次回の約束を朝9時に指定すると「午前中は都合が悪い」と言う。
何故なのか。
初めは口ごもっているが、よくよく聞いてみると、午前中は起きられないらしい。
そこで、
「朝9時に来られないうちは、会社勤めは無理よ」
と言ってあげるそうです。
そして、出勤できる時間に起きることと、そのために図書館に出かけるなど用事を作るといった行動療法を試みてもらい、リハビリを兼ねて職業相談に応じている、ということでした。
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