大澤 眞知子(カナダ留学・クリティカルシンキング専門家)- コラム「日本の高校の単位はカナダに移せますか?」 - 専門家プロファイル

大澤 眞知子
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( カナダ留学・クリティカルシンキング専門家 )
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日本の高校の単位はカナダに移せますか?

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留学 大学・高校正規留学 2017-10-09 07:07

「カナダに高校留学し卒業したい!」というお問い合わせを頻繁にいただきます。

必ず最初にお答えすることは「非常に難しいです。」

特に高校2年生、3年生からカナダの高校に移り、卒業を目指したいという希望をよくお聞きしますが、更に難しい状況です。


そんな非現実的な希望はカナダの受け入れ側にも届いているようで、最近何やらきな臭い呼び込みが始まっています。

「需要があるんだから、売らねば!」です。


「卒業出来るかも。。。日本の高校の単位が使えるかも。。。」という非常に複雑でわかりにくい制度で、留学生の払う授業料をとにかく獲得するマーケティング競争が起こっています。


今日は、そのうちのひとつGreater Victoria スクールボードを例に取り、留学生獲得マーケティングの裏を読み解いてみたいと思います。


「仮に本当に日本の高校の単位が使えたとしたら、卒業は楽になりますか?」

さて、どうでしょう。


カナダでは各州が規定する単位をすべて満たさないと卒業証書をもらえません。

特にLanguage Art (English) 11,12は最難関ですし、この単位がないと卒業出来ません。

Language Art12には州の試験もありますので、また更に難しいです。


地元カナダの生徒でもLanguage Art 12は難関で、到底能力が届かない高校生も多くいます。

それでも高校卒業資格の必要な生徒は、レベルの低いLanguage 12 (BCではCommunicationという名前、AlbertaではEnglish 30-2と呼ばれます)をどうにかパスして卒業して行きます。

が、レベルを落としたEnglish12では大学には進学出来ません。

日本からの留学生が帰国子女で日本の大学に入学する際も同じです。

高いレベルのEnglish12を好成績で合格した卒業資格が必要です。


こんなに難しいEnglish12も、日本の高校の英語単位で置き換えてくれますか?

出来ません。


Greater Victoria スクールボードは1990年代初頭から積極的に日本人留学生の受け入れを行い、私自身もこの中の教育区を数か所訪問したことがあります。

  

留学生の質より数をというビジネスモデルが気になり、生徒を送ることはありませんでした。


多くの留学生を受け容れる学区では、通常クラスの先生たちに負担をかけないように(労働組合がうるさい!地元の親もうるさい!ですから)英語の出来ない留学生はESLというクラスに入れて隔離します。

一旦ESLに隔離された日本人留学生は、その中で村を作り閉じこもった留学生活を余儀なくされます。 地元のカナダ人生徒たちも「留学生は別物」扱いで寄り付きもしません。


数を入れ過ぎ、そのESLも負担になったようで、新しいプログラムが出来ていました。

Academic Transition Program (4月〜8月)という、「留学生?学校に負担をかけるより、留学生だけのプログラムで隔離訓練を!」のようです。 高校外で行われ、履修した留学生のみ正式な高校へ行けるという振り落としプログラムで、ますます留学生隔離です。

授業料、滞在費すべて含めて5ヶ月で130万ほどかかります。(得られるものの割には高額です)

うまく行けば4コースの単位(developmental English, mathematics, physical education, and intercultural studies)がもらえるそうです。

卒業単位に数えるかどうかは明確には書かれていませんが、おそらくmath, PEの2つはGrade10レベルの単位として認められ、合格すれば9月からGrade11のmathが取れるのかも。

費用の割に合わない単位だと思えます。


どうも説明が曖昧でもやもやしますので、英語のFine print (小さな字でこっそり書かれている部分)のそのまた裏を読み解いてみました。

エージェントはそこまで説明しないですし(知らないかも)日本の親にも基本的な制度理解なしでは不可解なFine printです。


1.卒業に必要な単位をすべて取得することはまず無理です 

unless they have had considerable instruction in one of Canada's two official languages prior to coming to British Columbia. (BC州に来るまでにカナダの公用語である英語かフランス語で相当レベルの訓練を受けていない限り


明確に書かれています。


2.To ensure language competencies, international students, when working toward a Dogwood Diploma, are restricted in which courses may be used to receive credit through equivalency, external credentials, or challenge for skills and knowledge obtained in a language other than English or French.

(BC州の卒業資格には高い語学能力が必要であるため、英語またはフランス語で履修していない単位【日本の高校の単位】の移行には制限がある。)


3. International students must earn credit for courses in the following categories through instruction from a British Columbia-certified teacher. No Equivalency review or Challenge process is permitted:(次のコースは日本の高校の単位移行は不可)
   

-   Language Arts 11 (これを好成績で履修するのにはかなりの準備が必要】
   

-   Language Arts 12 (11よりも更に難関。州の試験に合格することが必要。)
   

-   One of Science 11 or 12 (大学進学するなら12が必要)
   

-   One of Mathematics 11 or 12 (同上)
   

-   Social Studies 11 (同上)(日本からの留学生には難関)
   

-   Planning 10 (誰でも授業に出席すればパスできます)


これら必修コース単位で32、卒業に必要なのは80単位ですからあと58単位必要。

1コース4単位ですので、80単位取得には20コース必要。


1年で8コース履修し、すべて合格したとしても2年半。

好成績で(進学に必須)履修していくには、日本人高校生には最低1年は余分に必要なので3年半。


日本の高校の単位(体育とか)ATPプログラムの単位を認めてもらったとして、半年引いて2年半。

ただし、English 12レベルにその2年半でたどり着けばという仮定の話となりますが、クリティカル・シンキングの最高レベルですので、日本人留学生には相当の難関です。


4.International students must be assessed to determine if all the Graduation Transitions Prescribed Learning Outcomes have been met, regardless of the grade level at which they enter a British Columbia school. When the requirements have been met, international students will be assigned four (4) credits and “requirements met (RM)” will be noted on their transcript.

(留学生は本国での成績に関係なく、BC州の卒業規定を満たせるかの判定を受ける。判定が認められれば4単位を取得出来、成績表に記載される。)

一体誰が何を基準に判定するのかはさっぱりわかりませんが、何やら評価されるみたいです。


【結論】

Good news:

Grade10に合格してからじゃないとGrade11は取らさない!という意地悪は姿を消しつつあるようです。これは日本の高校から留学する人には有利。

Bad news:

Grade10を飛ばしてGrade11から取れるんだって!という消費者心理を煽る説明にごまかされないように。

カナダで生まれ英語とクリティカル・シンキングで育った生徒が取る難易度の高いコースがGrade11です。


スクールボードがこれだけは明確に記しているように

「BC州の卒業資格には高い語学能力が必要である。BC州に来るまでにカナダの公用語である英語かフランス語で相当レベルの訓練を受けていない限り卒業に必要な単位をすべて取得することはまず無理です。」

を肝に命じて留学して下さい。


留学生の釣りをするように、ほんの少しの単位を移行しますとマーケティングしても、結局のところ難易度は同じです。

日本人留学生のために簡単な卒業コースを用意しているわけではありませんので要注意。

この制度を効率よく利用し、卒業までの年数を3年以内に出来るのは、日本の学校でも学業成績が優秀で(特に理数系。言語中心でないので成功する確率が高い。)クリティカル・シンキングの基本を知る高校生のみだと考えます。


つまり「日本の高校の単位をカナダの高校に移せますか?」

答えは「多分、はい。焼け石に水程度。」


この飴に釣られる前に、自分の実力をよく考えてから留学を決めて下さい。


【後書き】

学習能力・知的能力の高い高校生のみなさんで、卒業留学を目指す方への忠告。


留学生を十把一からげで隔離するプログラムなどは避けて、直接希望のスクールボード、または学校に願書を送ることをお勧めします。


日本の成績が良ければ、びっくりするくらい丁寧に対応してくれますし、130万も余分に払わなくても、直接学校と交渉し、レベルに見合ったコースから始めさせてくれる可能性が高いです。

もちろん日本の高校単位も、校長・教育長裁量で認められる可能性も高いです。

(カナダで実力を披瀝すれば、です。)


直接交渉するくらいの度量と実力がないと、言葉も文化も異なる外国の高校で成功することなど不可能に近いです。

それが個人に合わせた教育制度を誇るカナダです。


折角そのカナダに来るのに、グループツアーの旗に付いて行くような「エージェントやスクールボードが作った枠の中に入れてもらう留学」では全く意義がないと、このカナダの地から、忠告を送ります。


Good Luck, Japanese Students!!


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