対象:独立開業
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事業を始めるにあたり、地方出身の従業員を何人か雇いますが、彼らに自社所有の物件を社宅として提供し居住させる予定です。
そこで社宅の規定を作成しますが、退職の際の退去のタイミングについて、退職後1ヶ月以内に社宅を明け渡す旨規定するなど自由に会社で決めてよいものでしょうか。 6ヶ月の期間をおかなければならないという話も聞いてます。
実は私も前勤務先で社宅の退職時の明け渡しについてトラブルになっているのを見たことがあります。
法的なことも含めてトラブル防止策についてご教示ください。
miwaminさん ( 東京都 / 女性 / 36歳 )
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後藤 義弘
社会保険労務士
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従業員の負担額がポイントです
miwaminさんご質問ありがとうございます。 後藤がお答えします。どうぞよろしくお願いします。
貴社所有の物件を社宅として従業員に居住させた場合の退職時の退去猶予期間についてのご質問ですが、これについては労働基準法に具体的な基準が規定されているわけではなく、当事者の契約の問題、つまり貴社従業員の社宅の利用に関し会社と従業員との間で実態としてどのような契約関係にあるかにかかってくると思われます。
この契約が一般に私たちが不動産会社を通じ部屋を借りる場合と同じく
''賃貸借契約''
にあたれば
''借家法''
の適用を受けることになり、退職時の明け渡しの請求について、仮に貴社の社宅規定が請求後1ヶ月以内の退去となっていても、この借家法の規定が優先され、お話のとおり(明け渡し請求の意思表示から)
''6ヶ月以上の猶予期間''
をおかなければならないことになります。つまり、借家法の適用がある社宅利用(つまり賃貸借契約)ということになれば、退職する従業員から見ると退職しても6ヶ月は社宅に住むことができる権利があることになります。 miwaminさんの前勤務先でのトラブルもおそらくこのあたりの問題が背景にあったものではないかと想像します。
では貴社の社宅利用についてどのような事情があれば ''賃貸借契約'' と認められ ''借家法'' の規制を受けることになるのでしょうか?
これについて最高裁判例では、「社宅」ということのみでストレートに借家法の適用がないとは言えず、使用料その他諸事情を考慮し賃貸借関係の存否を判断する立場をとっています。
つまりこの
''使用料 ( = 従業員の負担額 )''
が適否の判断基準で大きなウェイトを占めていると言ってよいでしょう。 ではその額・割合はどの程度かと言うと(法律の基準ではありませんが)
補足
''家賃相当額の3分の2以上''
が目安と考えられています。 例えば、貴社の社宅の家賃を世間相場に照らし10万円とし、従業員負担をその80%の8万円に設定した場合、上の比率を上回ることになり賃貸借関係の存在が推定され借家法が適用される可能性が高くなるものと思われます。
また、''使用料の額が少額'' であることで、この使用料が社宅使用の対価とは言えず借家法の適用がないとの判断を示す判例も多いのが実情です。 こうした判例の動向も考慮し貴社のケースにおいても、従業員負担額を少額に抑えることで借家法適用が排除される方向に働きやすくなり、結果貴社の作成する社宅に関する規定において合理的な猶予期間を設定(ご質問では1ヶ月)することができるものと思われます。
つまり借家法ではなく、社内規定に沿った明け渡しの請求が可能と考えられます。
退職に際し、従業員がこうした借家法の適用を主張し社宅からの退去がスムーズにいかないことで新入社員の住居確保に支障をきたす事態をご心配されているものと思われますが、これを避けるためにも、可能であれば上の目安(3分の2)を考慮し、従業員負担額を少額に抑える福利厚生設計が必要でしょう。
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評価・お礼

miwaminさん
早速のお返事ありがとうございました。
とってもわかりやすい説明で大変満足しています。
もともと従業員には数千円の維持費程度を負担させることを考えていたので、先生のアドバイス通り退職時のトラブル回避を考えるとちょうどよかったわけですね。
これに懲りずまたご質問させていただきたいと思いますのでその折はどうぞよろしくお願いします。
ありがとうございました。
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