対象:住宅設計・構造
野平 史彦
建築家
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遮熱を考えて見ましょう
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(株)野平都市建築研究所の、ノヒラと申します。
熱の伝わり方というのは、
1) 伝導
2) 放射(輻射)
3) 対流
という3つに分けられます。
太陽の熱は宇宙空間を放射によって地球にもたらされます。
大気圏に突入する時に、空気に伝導し、対流が生まれます。
しかし、屋根面が受ける太陽の熱は、圧倒的に放射によるものです。
暖められた屋根面はそこから天井面に熱を放射し、暖められた天井面が室内に熱を放射する、ということになります。
ですから、本来、屋根の野地板の上に遮熱シートを敷いて、その上に少し空気層を設け(熱を反射するスペースが必要)、棟換気で熱や水蒸気を排出する、というのが、今,一番効果的な方法なのですが、既存の建物にそのようなことをするには一度屋根を剥がさなければならず大掛かりな事になるので、それはできないとしましょう。
では、屋根裏面か天井上での断熱という方法を考えて見ます。
どんな屋根材か分かりませんが、屋根裏面に断熱を施すと、棟換気は付いていないでしょうから水蒸気の排出経路を確保できませんから、うまくありません。天井上に繊維系の断熱材を敷き詰めて、小屋裏(屋根裏)換気口を設ける、というのがこういう場合の一般解と言えるかもしれません。
一般の換気の給気口ならフィルターを付けて汚染された外気を多少とも清浄化できますが、小屋裏換気の場合は、フィルターなど付けると殆ど機能しなくなります。
いずれにしろ、室内が余程負圧になっていなければ、汚染された外気が小屋裏換気口から入り天井を抜けて室内に侵入する、という心配はないのではないかと思われます。
補足
天井上の断熱材を厚くする必要がありますが、断熱材というのは言ってみれば熱伝導遅延素材、即ち、熱が伝わるのを遅らせる材料ですから、いずれは熱が伝わって来ることになります。
ですから、太陽が沈んで外気温が下がった時に小屋裏内の熱気が換気口から抜けてくれるまで天井面に熱ができるだけ伝わらないだけの厚みが必要になります。(イメージ的にはGW16Kで200mmくらい必要かと思われます)
しかし、理論的には、こんなことも可能ではないかと思われます。
即ち、天井面に輻射熱を伝えなければ良い、と考えれば、もし、天井を剥がしても良いなら、一度、天井材を剥がし、天井下地にリフレクテクスとかアストロEといった遮熱シートを貼り、その上に(いや、下に)天井材を張ります。
天井裏に受ける輻射熱を遮熱シートで反射してしまうことで天井材の温度上昇を防ぐ事ができますので、室内は天井面からの輻射熱の影響を回避できる、ということになります。
しかし、小屋裏(屋根裏)の温度が高いと伝導熱を受けてしまうので、換気口で熱気を逃がす必要はあります。
いずれにしろ、対処療法として行うことですので、ある程度の効果はあると思いますが、圧倒的な効果を期待するのは難しいでしょう。
参考にして頂ければ、幸いです。
評価・お礼
Kebin さん
お返事ありがとうございます。
やはり、屋根裏の高温多湿な空気を排出しないと、いくら断熱材をしても無駄なのですね。
さっそく、棟換気と小屋裏換気口を導入しようと思います。
丁寧で親切なご回答を本当にありがとうございました。
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築20年木造2階建ての家に住んでいます。屋根裏に断熱材が入っていない家だったのですが、素人考えで、屋根裏断熱をするつもりで天井裏断熱をしてしまいました。天井裏の通気止めもしてしまった… [続きを読む]
Kebinさん (福岡県/32歳/男性)
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