対象:遺産相続
芦川 京之助
司法書士
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まず、遺産の明細を要求して、確認しましょう。
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司法書士の芦川京之助でございます。
専門家(司法書士)からの書類が、突然、届いたことに戸惑っておられること、ご心中をお察し申し上げます。
ご記入いただいた内容を前提に、今後どのように対処したらよいかを考えてみます。
まず、ご記入いただいた内容から推察して、次のことが考えられます。
1 お祖母様が亡くなってから15年を経過していることから、債務の消滅時効を主張できる可能性があります。
2 お母様とご兄妹に同様の手紙が届いていることから、お祖母様が亡くなった後、お父様が亡くなった、と考えられます。
3 司法書士が関与していることから、お祖母様名義のままの不動産がある、と考えられます。通常、債務だけの遺産分割協議書を作成することは考えにくいことです。それがあるとすれば、金融機関に対して債務がある場合です。
4 3のことから遺産分割協議書には、債務を叔父が引き継ぐ代わりに、叔父が不動産を相続取得する、と考えられます。
司法書士は、他の専門家、税理士や行政書士もそうですが、弁護士と違って、相続人のある人を代理して、他の相続人と交渉、すなわち、話し合い、相続問題をどうするのかを話し合うことができません。
相続の場合は、相続人の代理人としてではなく、その専門家として、相続の内容について、相続人に説明することができるだけです。
また、相続人間の話し合いの結果があって、あるいは、この結果を前提として、その内容を文書にし、すなわち、遺産分割協議書などを作成して、相続人に対して書類を郵送し、署名、押印をいただくのが基本です。
相続問題で、他の相続人と直接交渉ができるのは法律上、弁護士に限られます。
そこで、ご相談者としては、まず、司法書士を相手にするのではなく、叔父を直接の相手とすべきです。
遺産分割協議書に記載されている内容について、郵便で、次の事項を確認、返答してもらいます。
次の書類を郵送してもらいます。この際、ご相談者の書く文書は次のとおりです。
「遺産分割協議書の明細を知りたいので、次の書類を郵送してください。」とし、
(1)不動産の登記事項証明書(登記所の登記記録情報)
(2)預貯金があれば残高証明書
(3)お祖母様が会社に借金したという1800万円の内容
すなわち、借金した日付、借金した理由、借金した金額
(4)その他、遺産の明細
補足
これらの書類が到着してから、次の段階に移ります。
お祖母様が会社に借金したという1800万円は、お祖母様が亡くなってから15年を経過しています。
その間、その会社からこの借金の請求を、亡くなったお父様も請求されていなかった、ということであれば、借金を時効で消滅できる可能性があります。
ただし、お祖母様の1800万円の債務について不動産に差押などが登記されている場合は、その借金は時効で消滅しません。
そのうえで、叔父の会社に対して、借金は時効で消滅しているから、会社に対する債務はありません、という内容証明を、もちろん、お母様とご兄妹全員で、別々に内容証明で郵送します。
内容証明の書き方は、郵便局のホームページで調べれば簡単に作成できます。
これで、お祖母様の借金は消えます。
おそらく、お祖母様名義の不動産があると思いますので、15年も経過した今頃になって、相続手続をしている、叔父としては、どうしても、お祖母様の不動産を手に入れたいのだと思われます。
ご相談者がお祖母様の借金を時効で消滅させても、お祖母様の不動産を相続する権利があります。不動産の所有権は、通常、自らの時効で消滅しません。
もし、お祖母様名義の不動産があるのであれば、遺産分割協議で、不動産を叔父に相続取得させる代わりに、いくらかの金額(代償金)を要求してもよいでしょう。これを代償分割といいます。
この代償金について、遺産分割協議書に書いてもらうことです。
なお、お祖母様の1800万円のことが書かれていないことを確認してください。
遺産分割協議書に、お祖母様の1800万円について書かれているのであれば、その1800万円の債務を承認したこと、認めたことになってしまいます。
相続税については、お祖母様が亡くなったのが15年前のことであれば、お祖母様の相続税の問題は発生しません。
ただし、お祖母様の相続税について、不動産に差押などが登記されている場合は、その税金は時効で消滅しません。
詳しくは、最寄の税務署にご確認ください。
最後に、専門家に相談する場所についてですが、各市区町村役場には、無料の法律相談があります。
また、神奈川県では、横浜駅西口に、かながわ中央消費生活センターがありますので、ご相談されるのがよいでしょう。
なお、これら、相談時間は30分です。弁護士の相談では、事前予約が必要です。
評価・お礼
マルコの大迷惑 さん
2012/09/19 14:46
ご返事が遅くなりまして申し訳ありません。この度のご回答、本当に助かりました。これからのご指示等、大変参考になります。こういった問題に関してはまったく分からないものですから、相談する所等もお知らせいただき安心することができました。
協議書を送る前に、専門家に相談してみます。本当にありがとうございました。
芦川 京之助
2012/09/19 15:20
高評価をいただき、ありがとうございます。
参考までに、遺産分割協議書に、お祖母様の1800万円について書かれているのであれば、その1800万円の債務を承認したこと、認めたことになってしまいます。
この点について、債務の引継ぎについて相続人間で取り決めをした場合、相続人間では有効であっても、債権者がこれを承認しない限り、少なくとも、法定相続分に相当する債務を免れることができません。
したがいまして、債務だけの遺産分割協議書に署名・押印することは危険であると思われます。
叔父の真意がどこにあるのかを確認されてから、判断されるのがよろしいと思われます。
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