- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
- 弁護士
対象:民事家事・生活トラブル
- 榎本 純子
- (行政書士)
駐車場での事故の法律的な扱い
考え方の道筋として、
1、民事の損害賠償請求
自賠法3条により「運転者」と「運行供用者」が損害賠償請求を負う。
また、民法の損害賠償責任の根拠は以下のとおり。
民法709条、慰謝料の根拠は710条
使用者責任、民法715条
工作物責任(駐車場の管理者、占有者、所有者)、民法717条
加害者が複数の場合(共同不法行為)、民法719条
過失相殺、民法722条2項
消滅時効、民法724条
人身事故の場合で、加害者の自動車が不明の場合、または自賠責保険に加入していない場合(いわゆる無保険。保険の期限切れの場合も含む。)、政府の自動車損害賠償保障事業の対象となる。自賠法72条以下。
2、刑事事件
・刑法犯
・道路交通法違反
救護措置義務(道路交通法72条1項前段)違反、運転者は道路交通法117条、同乗者等は117条の5.
警察官への報告義務(道路交通法117条1項後段)
なお、「交通事故」とは、人身事故、物損事故をいう(道路交通法67条2項)。
物損事故の運転者について、道路交通法117条の5第1号、72条1項前段
重過失建造物損壊罪(道路交通法116条)
なお、刑法に規定する器物損壊罪(刑法262条)、建造物損壊罪(刑法261条)は、故意を要件とするため、通常の物損事故は過失にもとづくものであろうから、適用されない。
3、行政上の問題、道路交通法による義務(ただし、道路交通法による罰則がある。)、反則金、行政処分(点数、運転免許の停止・取消)
・駐車場での事故の法律的な扱い
(道路交通法が適用されるか?、
→原則として、道路交通法が適用されると考えた方がよい。駐車場が「道路」またはそれに隣接する限り、道路交通法が適用される。
「道路」とは、不特定、多数の人の出入りがあることという要件がある。
道路交通法が適用されないと軽率に誤信しても、加害者は道路交通法違反の罪を免れない。
警察への通報義務などについて
→道路交通法が適用される限り、人身事故について、運転者には負傷者の救護義務(被害者を医師に受診させたり、救急車を呼ぶ義務)、通報義務がある。物損事故について、通報義務がある。
・駐車場での事故について、私が担当した代表的なトラブルやその傾向
→刑事事件。同乗者を降ろして、エンジンをかけて駐車中に、同乗者が戻ってきたので発進したところ、急発進してしまい、同乗者をはねてしまった事例。欠陥車が疑われたケース。
→駐車中に後ろから追突された事例で、当日、病院に受診したが、かなり後になってから、被害者が鞭打ち症を主張して通院した事例。保険実務では、事故後3か月間1回も通院していないと、事故との因果関係を否定して保険金を支払わないケースが多い。また刑事事件でも、不起訴か軽い処分になる傾向が多い。
→道路を進行中、駐車場からの出入りする車と衝突した事例。民事事件、刑事事件ともにあり。民事事件では損害賠償金をもらえたが、刑事事件としては道路を直進する車の加害者が不起訴や軽い処分になった事例もある。
→民事事件。物損事故、近くの工事現場の土砂が車の窓や車体にかかったので、工事業者が車体を箒で払ったため、車体を傷つけた事例。
・具体的に想定される事例として、以下の場合について、想定される過失割合、実際の手続きなどについて教えてください。
①公共機関や商業施設などの駐車場で駐車中の車に自身の車をぶつけてしまった
→相手方は全く動いていないから、基本的に、加害者が100%悪い。ただし、被害者が駐車区域に全く沿わないような、はみだした形で駐車していた場合には、被害者にも過失あり。
②駐車場で
1、動いている車
→両方の車の位置関係などにより、過失割合は異なる。信号機等により交通整理が行われているかどうか。十字形で交差した場合。右折車と直進車など。
2、人が乗っている自転車
→前記1と同じ要素が考慮されるが、自転車は「軽車両」のため、保護される。過失割合が自転車に有利。
3、歩行者と接触した場合
→民事事件として、過失割合が人に有利。
過失割合が有利な順序は、人、軽車両、自動車の順序。
→刑事事件として、自動車運転過失致死傷罪。警察に通報せずにひき逃げした場合には、道路交通法違反(救護義務・報告義務違反の罪)、道路交通法が適用されない場合には、保護責任者遺棄(致死傷)罪。
③駐車場でゲート待ち、あるいはスペースのあきを待つため、停車中の車に接触した
→駐停車中の車に追突した場合には、加害者が100%悪い。
④上記①のケースで、駐車してあった車に戻ってきたら車が破損していた(当て逃げ)の場合、どのような手続きを取るべきか
→駐車場管理者と警察に通報する。
・事故の相手方(駐車場の管理者を含む)とトラブルになった場合、弁護士さんを含めてどこに相談すべきでしょうか?
→まずは、警察への報告、実況見分
→交通事故証明書(当事者の住所、氏名、生年月日、自賠責と任意保険が記載されている。なお、事故の態様も記載されているが、この点を証明するものではないことが注記されている。)
→被害者も加害者も利用できる、無料の法律相談として、弁護士会の法律相談センター、法テラス(日本司法支援センター)
また、例えば、東京都内では市区(相談者の居住地、勤務地)の運営する無料の交通事故相談
→保険会社と紛争の場合には、弁護士会の交通事故紛争処理センター
→加害者ならば、自賠責保険・任意保険の保険会社への報告。任意保険の示談代行付きだと、示談を代行してもらえる。ただし、自賠責保険には、示談代行という機能は、そもそもついていない。
→被害者ならば、家庭総合保険等の利用がありえる。弁護士費用担保特約付きだと、補償金、弁護士費用の支給。
→加害者・保険会社と話し合いがまとまれば、示談成立。まとまらなければ、被害者が加害者に対して、弁護士に依頼して、損害賠償請求訴訟。60万円以下ならば、少額訴訟という方法もあり。請求額が140万円以下の場合には、管轄が簡易裁判所で、司法書士に依頼することもできる。
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