- 土井 健司
- 土井経営研究所 代表
- ファイナンシャルプランナー
対象:お金と資産の運用
しかし、標準的な投資理論では、為替リスクにリスクプレミアムは無いとされる。つまり、為替リスクをとったこと自体に対する見返り、報酬は無い。従って、為替投資という考えは短期のディーリング取引においては考えられても、ライフプランのための資産運用としては好ましくない。
また、ドル建て債券やユーロ建債券の高金利効果についても、「金利平価説」によって、たとえ高金利通貨で運用しても将来、それを円に交換する時に高金利効果を相殺するような円高が発生してしまい、その通貨の高金利効果のメリットは消えてしまうと考えられる。
したがって、ライフプランニングのための資産運用において国際分散投資が重要なのは、こうした為替投資や高金利効果によるのではなく、広く債券、株式の投資対象を海外に求め、ポートフォリオの対象として組み入れる事によって、運用資産全体のリスクが低減することにある。
例えば、公的年金積立金の基本ポートフォリオにおいては、外国債券が8%、外国株式が9%組み入れられているが、これは為替差益や高金利効果を狙った運用ではなく、分散投資効果に着目して、年金財政上の予定運用利回り3.2%を確保するためにポートフォリオ理論の原理を用いて算出した結果と考えられる。
個人の資産運用においても同様であり、例えば、国内の長期債券ファンドだけで運用するより、海外に分散投資を行うバランスファンドをごく一部取り入れたポートフォリオで運用するほうが期待リターンは向上し、リスクは低減する。
したがって、引退期に入った個人もこの理論を活用し国際分散投資を織り込んだ運用を考える事も重要である。