- 岡野あつこ
- 株式会社カラットクラブ 代表取締役
- 東京都
- 離婚アドバイザー
対象:離婚問題
- 岡野あつこ
- (離婚アドバイザー)
ギャンブラー夫婦の経済破綻 離婚をしないでやり直したい
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定職に就いていない芳彦さん(44歳)と貞子さん(45歳)は,夫婦ともにギャンブラー。競馬場で知り合ったという筋金入りの2人は、若いころからギャンブルで生計を立てていました。しかし、そんな人生に陰りが出始めました。
高校を中退したとき、俺はすでにプロの麻雀士として食っていました。しばらくは、親のスネをかじりながら、お小遣いは麻雀で・・・・・・という感じでしたが。
親は、就職をしろと言いました。が、何をやっても割が悪そうで、とてもそんな気になれず、結局は麻雀で稼いだ資金を元手に、パチンコや競輪、競馬、競艇と、ギャンブラーの人生を選びました。(※1)
20代半ばで、貞子と知り合いました。いい女なのにギャンブルで生きているということに、すっかりほれ込んだ俺は、彼女と一緒に暮らすことにしました。
貞子は、負けが続くと、水商売や風俗で稼いでくるので、俺たちの生活はかなり安定したいい暮らしぶりだったと思います。将来の見通しもできたので、30歳のときに入籍。俺たちは幸せでした。
「今月、負けが混んじゃったよ」
「あんたでもそんなことがあるの?」
「ヤバいから、おまえ稼いできてくれよ」
「しょうがないねぇ。わかったよ」
貞子はいつでも、俺を助けてくれました。もちろん、貞子の稼ぎが悪い時には、俺が場を増やしたりして、うまくやっていました。(※2)
30代半ばになったとき、貞子が言いました。
「もう風俗では稼げなくなっちゃった。指名が来なくなっちゃったよ」
「ま、最近は俺のパチンコもあるし、気楽にいこうぜ」
2人は、今までの人生で一度たりとも地道に働こうと思ったことがなかったので、それから働く気もなかったですし、何より雇ってくれるところもないでしょう。
いつになく弱気な発言をしていた貞子でしたが、2ヵ月ほどすると、またのんきに遊びに行ったり、買い物をしたりし始めました。きっと公営ギャンブルで儲かったんだろうと思い込んでいた俺は、別に何も聞きませんでした。あまり興味がなかったとも言えます。(※3)
貞子は自慢の女房でした。いつまでもお洒落をしてきれいでいてくれることが、いちばん大切なことだったのです。家の中で貞子を見ていても満足でしたし、飲みに行ったときなど仲間から、
「ご両人、いつまでも仲がいいね?」
などと冷やかされては、一層満足していました。
ところが、真冬のある日、寒がりなので、いつもと早めに帰ってきていた貞子が、夜中になっても帰ってこないことがありました。俺は、浮気でもしているんじゃないかと気をもんでいました。(※4)
そのとき、アパートのドアがけたたましい音を立てて叩かれました。ビックリした俺は、慌ててドアを開けると、
「いらっしゃいましたね。貞子さんを出してもらいましょうか」
「いや、貞子はまだ帰ってないけど・・・・・・」
「じゃあ、待たせてもらうことにします」
強面の男が2人、アパートの部屋に入り込んできました。俺だった、人相がいい方ではありませんが、明らかにその筋の者とわかる雰囲気の2人は、堂々とちゃぶ台の前に座り込みました。
「なんの用だとぉ?とぼけてもらっちゃ困るね。あんたのかみさんの借金だよ。知らないって話は通らなしっしょ!」
「借金ですか?貞子が・・・・・・俺は、全く知らないんですが・・・・・・」
「あ?そうはいかないよなぁ。あんたの保険証のコピーだってもらってんだよ、こっちは」
「そ、そ、そんな・・・・・・。で、いくらなんですか?」
「今、返してもらえるんだったら、280万円ってとこだな。まぁ、来月になりゃ、倍になると思うけどな」
俺は愕然としました。貞子がまさか、借金をして過ごしているとは思いもしませんでした。しかも、悪質な業者から借りているらしく、刻々と大変なことになっているらしいのです。(※5)
俺は、確かに今までずっとギャンブルで生きてきたような男です。金がなくて、貧乏のどん底だったこともありますし、その筋の人に睨まれたこともあります。でも、一度たりとも犯罪はしてないですし、極道の道に入ったこともありません。俺なりに真面目に生きてきたつもりでした。貞子も、そうして生きてきたはずだったのです。
確かに、少し前から実入りが悪くなったとは言っていましたが、借金をしなくては生きられないほど、困らせたつもりはなかったのに・・・・・・。
強面の男たちは、朝になってしまったので、また来るという言葉を残して去っていきました。と、どこかで様子をうかがっていたかのように、30分もしないうちに貞子が帰ってきました。
「ごめん・・・・・・」
「おまえ、どこにいたんだ!ゆうべから、何が起きていたと思うんだ?」
「ごめん・・・・・・」
「借金をしているなんて聞いてなかったぞ」
「ごめん・・・・・・」
「はじめはいくら借りたんだ?」
「10万円」
「さっき、取り立てが来たんだぞ。いくら返さなきゃならないと思ってるんだ?」
「ごめん・・・・・・」
何を行っても、下を向いて謝るだけの貞子でした。
俺は、その日、知人に頼みまくって、ほぼ半額の150万円を調達しました。(※6)
そして、貞子を連れて前夜の男たちのところに持って行きました。
焼け石に水かもしれませんが、業者は意外と親切で、
「来月中だったら、あと150万円で勘弁してやるよ」
と言ってくれました。借りたときに貞子が助かったのは事実。暴利であっても感謝をしたい気持ちにもなりました。
帰りがけに、俺は貞子に言いました。
「ダメかもしれないけどさ、俺、仕事探してみるよ。日曜日には、また競馬やなんかに行けばいいけど、平日に働こうかと思って」(※7)
「あたしのせい?あんたのギャンブラー姿が好きだったのに・・・・・・」
泣き崩れる貞子を見て、俺は悲しくなりました。人生をやり直そうと思っていたのに、こんなことを言われるなんて・・・・・・。これから、貞子のために働いていけるのだろうかと不安に襲われました。
※1:なぜ地道な人生を選ばなかったのか、社会人としての自覚の欠如を感じます。ギャンブルで大成した人はいません。
※2:似たもの夫婦なので、2人がよければいいとも思えますが、行き当たりばったりで生きていては、何かがあったら人生全てが破綻してしまいます。
※3:せめてお互いのことに興味を持つぐらいの気持ちがないのだったら、夫婦でいる意味があるのでしょうか?
※4:ここで気になるのは浮気だけのようですが、日頃からお互いのことやそれぞれが自分の人生をもっと真剣に考えていればよかったのに・・・・・・。
※5:妻の行動、家計の収支は、いくら信じている、任せてある、といっても、時々は確認して知っておくべきだったと思います。
※6:どうやって調達したのかが気になりますが、妻のためと思ったこの行為が妻の更生を遅らせることもあります。妻には、どうやって調達してくれたのかに興味を持ってほしいのです。
※7:やっと人生の軌道修正ができました。よほど妻を愛していて、大変な目に遭ったと思ったのでしょう。
【チェックポイント】
ともに生きていくことを選んだときから、間違いは始まっていたと思いますが、結果的には、まずは夫から、まともな人生に気づいたようなので、別れないで頑張ってほしいです。
夫婦問題に悩んでいる方へ 創業1991年相談件数25,000件 岡野あつこの離婚相談救急隊
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