建築基準法では津波に対する安全性の検討を何等義務付けしていません。安全性の検討は地震・台風・降雪に限られています。これは国として片手落ちではないでしょうか。
海溝型地震が発生すれば32万人の死者が発生すると公表しながら、建物を守るマニュアルが何も整備されていません。
国がしないので、私家版の津波対策を考案しました。
津波の力は凄まじいものがあります。地震力の比ではありません。木造住宅の津波の流され方を見ていると、土石流の様に押し潰されてしまう様な壊れ方をしていません。徐々に水嵩が増し一定の高さまで来ると、室内の空気が浮き袋の役目を果たし、プカリと浮き上がってそのまま流されて行くように見えます。実際室内の気密性を高めれば数時間程度は浮いていられるでしょう。
潮が引いた後元に戻れるように工夫してやれば、床上浸水程度の被害で済むのではないでしょうか。
家財道具ごと建物がなくなってしまうのと、後片付け程度で済むのでは経済的損失は雲泥の差となります。また瓦礫処理も減らすことが出来ます。
現行法では、建物は基礎を介して地面と強固に緊結しなければなりません。このために浮いた途端に床下が破壊され、次に主要構造部が破壊され、倒壊に至り瓦礫となって波間を漂う結果となります。
基礎と土台を緊結せずに、簡単に離れる様にして、建物の四方に救命ボートの様な浮き袋をつけてやれば建物は倒壊せずに済みます。流されて何処までも漂っていかない様にアンカーをセットしていれば、潮が引いた後の原点復帰も比較的容易です。
基礎と土台が離れていない家が合法的に造れるのかどうかですが、現行法でも基礎と土台が離れている建物があります。免震構造の住宅です。建物を免震させるため基礎と架台から上の上部構造部はきりはなれています。架台周囲にエアバッグの様な浮き袋をセットしてやれば、新しいテクノロジーを開発しなくても、既知の技術で水に浮く家が出来上がります。
サンフランシスコのサイサリート地区には、ボートハウスがあります。近年は法規制等で数が減ってしまいましたが、海の上に家を造り水上生活をしている人がいるのです。家は水に浮かないと考えるのは大きな間違いで、津波が来たらその位置で浮き上がって津波をやり過ごす構造の建物を建てれば津波も怖くはありません。
国の仕事は国民の生命を守るばかりでなく、財産も守る義務があると思いますが、津波に関して国はその問いに応えていません。
このコラムの執筆専門家
- 福味 健治
- (大阪府 / 建築家)
- 岡田一級建築士事務所
木造住宅が得意な建築家。
建築基準法だけでは、家の健全性は担保されません。木造住宅は伝統的に勘や経験で建てらていますが、昨今の地震被害は構造計算を無視している事が大きく影響しています。弊社は木造住宅も構造計算を行って設計しています。免震住宅も手掛けています。
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また、IAU型免震住宅設計資格取得者として、免震住宅等の相談も行っています。
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