ここまで来た!うつ病治療/NHKスペシャル - 心と体の不調全般 - 専門家プロファイル

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茅野 分
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閲覧数順 2016年12月03日更新

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ここまで来た!うつ病治療/NHKスペシャル

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新うつ病

この10年で倍増し、患者が増加し続ける「うつ病」。働き盛りの世代が多く、治療も長期化しやすいため、社会的損失はあらゆる病気の中で最大だと言われている。脳科学研究によって、この病の診断や治療のあり方に、今大きな変化が起き始めている。これまで気分の落ち込みや無気力といった症状から、ひとくくりに「うつ病」と診断されてきた患者の中に、実はさまざまなタイプの精神疾患が含まれていることが分かってきた。誤診を防ぎ適切な治療につなげられると注目されているのは、脳血流の画像診断装置・光トポグラフィー(NIR)による診断だ。前頭葉の血流量の変化を測定することにより、「うつ病」と症状が似ている「双極性障害」や「統合失調症」とを客観的に見分けられるようになってきた。また薬による治療で改善が見られない患者への新たな治療法として注目を集めているのが、脳に直接、磁気刺激を与える方法だ。機能が低下している脳の部位を磁気で刺激し症状改善しようというもので、アメリカでは長年苦しんできたうつ病の症状が劇的に良くなるなど、確かな効果が報告されている。番組では日本やアメリカを中心に進み始めた診断と治療の最前線を取材。苦しんでいた患者たちが改善していく過程を見つめていく。

平成20年、厚生労働省の患者調査によると、国内では「うつ病」に罹患する方が100万人を超えました。平成22年、医療計画においては、「精神疾患」を癌・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病に加え「5疾病」とし、重点的な医療・政策が講じられることになりました。

しかしその反面、うつ病の診断・治療にて、疑問や誤解を認められるようにもなりました。この理由は精神医学・医療が科学として発展途上であり、各医師の知識や経験にゆだねられていることが挙げられます。番組では、DSM, Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (アメリカ精神医学会) という診断基準により、うつ病が安易に診断される可能性も指摘されていました。現病歴による横断的な診断のみで、家族歴や生活歴も詳細に聞く、縦断的な診察が不足しているためと考えられます。

そこで番組では、NIRS, Near Infra- Red Spectoroscopy(近赤外線スペクトロスコピー)を用いて、うつ病と躁うつ病、統合失調症などを鑑別できる可能性が紹介されました。これにより、躁うつ病や統合失調症である方に抗うつ薬が処方され、躁転したり幻覚妄想化したりする誤りを防げます。但し、脳表面のヘモグロビン濃度を調べる検査であり、脳深部の血流や代謝までは分からないことや脳の静的状態を観察できないことなどの限界もあり、補助的診断の一つとして考えるべきでしょう。

一方、新たな治療法として番組ではまず、TMS, Transcranial Magnetic Stimulation(経頭蓋磁気刺激法)が紹介されました。これは特殊な磁石により脳内の神経細胞に電流を誘起させる治療法です。主に不安や恐怖を惹起する扁桃体の過活動を抑制するため、推論や意思決定を司るDLPFC, Dorsolateral prefrontal cortex(背外側・前頭前野)を活性化させます。これは電気けいれん療法(ECT, Electro-Convulsive Therapy)のように脳全体の神経細胞を興奮させることなく、局所的な刺激に留めることができるため、非侵襲的と言えます。番組では著効した複数の患者さんの様子が映されていましたが、効果はECTほどではないとも言われています。厚生労働省はまだ保険診療として認可していません。

番組ではさらに、DBS, Deep Brain Stimulation(深部脳刺激療法)も紹介されました。これは脳の深部に留置した電極から神経細胞へ電気刺激を送る治療法です。脳内の神経回路の「ハブ」として働くACC, Anterior Cingulate Cortex(前帯状皮質、ブロードマン25野)を活性化することにより、上記のDLPFCを活性化・扁桃体を抑制し、抑鬱が軽減される仕組です。番組ではEmory大学のMayberg教授のもとで薬物治療に抵抗性を示す、難治性のうつ病の患者さんが劇的に回復する様子が放映されていました。しかし、これも厚生労働省はまだ保険診療として認可していません。

番組では最後に、「ことばの力」として認知行動療法がDLPFCの活性化、扁桃体の抑制をもたらすこと、および自分自身でも良い思い出を思い出し、同様の機序を経ることで、うつ病を予防できることが紹介されました。いずれもTMSやDBSのような特殊な機械を用いることなく、日常生活の延長で、自然に行える方法です。

以上、本日放送されたNHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」を簡単に解説しました。この番組が制作された理由は、うつ病100万人という事態が起きている裏で、DSMによる安易な診断・SSRIなどの過剰な処方が横行していることが問題になっているからでしょう。精神医療の関係者は改めて正確な診断、適切な治療を考える必要があります。さらに、うつ病を診断・治療する前に、発病を予防するような地域や社会など環境因を考える必要もあります。これらは社会精神医学の命題でもあり、引き続き考察してまいります。

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