(続き)・・さてガンに対する実際の診療は、どのように行われているのでしょうか。ガンの疑いが浮上した時、まず行われるのが各種「検査」です。これには血液や尿の検査、レントゲン撮影、CT、MRI、内視鏡、細胞診などの検査が行われます。これによってガンがどの臓器や組織にあるか、どのくらいの大きさか、どういう形状や性質をもったガン細胞か、周囲への浸潤や他臓器への転移があるか、などが事細かに診断されます。
ここで早期ガンや局所に限定されたガンが発見された場合、優先的に行われるのが「手術」です。手術ではガン組織が周囲の正常組織から切り離されて除去されます。例えば早期胃ガンが見つかった場合、ガンの病巣を含む胃の3分の2か胃全体を切除し、食道あるいは小腸と吻合します。この手術で全てのガンが除去できた場合には「完治」の可能性がありますが、取り切れなかった場合にはいずれ「再発」することになります。
次に行われるのが「放射線治療」です。これはガンの病巣に高線量の放射線を照射することによってガンを叩く治療法で、手術の場合と同様、ガンが局所に留まる場合にとられる治療法です。ガンの拡がりに合わせて照射域を定め、出来るだけ正常組織に放射線を当てないように注意しながら定期的に照射します。放射線に対する感受性の高いガンの場合には、驚くほどガンが縮小する可能性があります。
3番目に行なわれる治療は「抗がん剤」です。ガン細胞は自らのDNA(遺伝子)を複製しながら際限なく分裂し増殖しますが、ある種の抗がん剤はそのDNAに傷害を与えることで増殖を阻止し殺傷します。またある抗がん剤はガン細胞の代謝経路に介入し、ガン細胞をいわば兵糧攻めにして攻撃します。抗がん剤は手術や放射線と異なり、ガンが進行し他臓器に転移しているような場合にも用いることが可能です。
これら手術、放射線、抗がん剤という3つの治療法を、ガンの「3大療法」もしくは「通常療法」と呼んで、少なくとも日本に於いてはごく普通に行われる、標準的なガン治療となっています。「病院でガンの治療を受けた」という話を聞いた場合には、その人はほぼ例外なく手術か放射線照射、抗がん剤の治療を受けているはずです。これら3つの療法を組み合わせた強力な治療は「集学的治療」などと呼称されています。
確かにこれら通常療法を受けると、早期ガンに限って言えば、かなり高い確率でガンを除去することが可能です。短い時間軸でみると、今ある早期ガンを取り除くには、何といっても手術が一番確実な方法です。また局所のガンに関しては、欧米を中心に放射線も有効な治療法とされています。そして抗がん剤の副作用さえ克服できれば、ガンの種類によっては進行ガンですらガンの病巣を縮小させることが出来るのです・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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