(続き)・・企業がビジネスを発展させていく上で、顧客との関係を良好に保つことは決定的に重要です。そのため上司は部下に対して「お客さんを大事にしなさい」と口を酸っぱくして強調するものです。ところが中には理不尽な要求をしてくる難しい顧客も少なくありません。それに手を焼いている部下に対して「お客様は神様だ。絶対にNOとは言うな!」などと言明し、過度のプレッシャーをかけてくる上司が結構おりますが、このようなアプローチは果たしてうまくいくのでしょうか。
「絶対にNOとは言うな!」と上司から言われた部下は、顧客側からの理不尽な要求や言いがかりなどの圧力があっても、それに反論したり商談を中止することができません。何よりも「お客様は神様」と言明されているので、顧客に物申すことが許されていないのです。せっかく別の提案を用意していたとしてもそれは活用できず、また他の良質な顧客に対応する時間や余力を奪われて、部下のモチベーションは低下する一方です。それが嵩じればメンタル不調に陥ることもあり得ます。
会社全体で「客にNOと言うな」式の教育が行われると、社員は常に顧客の顔色を窺うようになり、対等の立場で商品やサービスの提供をする心理的余裕が生まれません。毎日のように顧客の要求に振り回され、確実に心身ともに疲弊していきます。その結果、社員の定着率は低くなり、戦力がなかなか育たなくなります。サービスのレベルを見ても、顧客の意向に左右されるために有効なレベルアップが出来ず、ビジネスの成長性や将来性という点でも明るい要素はないのです。
ビジネスで顧客が大切なのは言うまでもありませんが、商品やサービスを提供する側と顧客とは本来、立場的に対等なはずです。顧客の要望に適したサービスを企業は提供し、その対価を顧客から受け取るのがビジネスの基本である以上、顧客の要求には自ずと限界や節度というものがあります。それを無条件で受け入れるということは、そのビジネスの公正さを阻害し、売り手の自信やプライドを傷つけるばかりか、商売としての健全性も損なってしまうのです。
社員のプライドとビジネスとしての健全性を維持するには、顧客の理不尽な要求には厳正に対処するようにしましょう。部下がその対応に手を焼いていると分かった場合には、可能ならば上司が現場に出向き「申し訳ありませんが、うちではそのようなサービスは行なっておりません。ほかで購入して頂いて結構です」あるいは「その要求にお応えするには、このくらいの金額が発生しますが、それでもよろしいでしょうか?」などと顧客にピシャリと告げることが大切です。
但しそのような理不尽な要求が頻発する背景についても考えておく必要がありそうです。普段から顧客の要望を聞き出し、彼らにとって必要な情報を充分に提供し、自社の商品やサービスのメリットを感じさせることが出来ていれば、そうそう過度な要求やクレームの類は出て来ないものです。顧客の口からそれらが出て来た場合には、自分たちの営業手法に問題がないか、顧客とコミュニケーションが取れているか、改めて確認しバージョンアップする好機と捉えてみては如何でしょうか・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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