(続き)・・組織内で働いている以上、社員個人と会社の方針が完全に一致することはあり得ません。実際に会社側が担当部署に対して、過度と思えるノルマや一見理不尽にも感じられる要求をしてくることが多々あります。そのような場合に部下からは、「何でこんな業務をしなければならないのか・・」といった不満や疑問が上がることもあるでしょう。その場合に上司は「会社の方針なんだから仕方ないだろう!」などと一蹴してしまうケースが目立ちますが、これは正しい対応なのでしょうか。
上司たるもの会社の管理職ですから、会社の方針や業務命令を遵守することは大切ですが、それを盾にして社員の不満や疑問を一方的に封じ込めてしまうのは考えものです。不満を口にしたところ上司から「会社の方針だから・・」と一蹴された部下は、表向きは「そうですよね・・」とそれに従いますが、心の中では「上司はわかってくれると思ったのに・・結局のところ上司も会社の手先だな」と感じ、会社だけでなく上司に対しても不信感や警戒心を抱くことになりがちです。
特に若い社員には、「こういう仕事がやってみたい!」という志や野望があるものです。上司はその志を汲み上げる一方、会社の方針や立場も尊重し社員に伝えなければなりません。そのバランス感覚が大切なのですが、もし社員の志や意見を蔑ろにし、会社の方針ばかりを社員に押しつけていたのでは、社員は「どうせ意見を言っても無視されるんだ・・」とか「会社の方針に従ってさえいればいいのか・・」などと無力感を感じ、自主性の乏しい「指示待ち社員」に育ってしまいます。
職場全体でそのように、会社の方針や立場を社員に押しつけるような風潮が強まると、企業全体で「組織の論理」が全てに於いて優先されるようになり、個々の社員の間では「意見を言っても握り潰されるだけだから・・」「上には逆らわないほうがいい・・」などと、積極的な言動を避けるような右ならえの企業風土となってしまいます。その結果、業績を向上させるようなアイデアやイノベーションは生まれにくくなり、成長力の乏しい、閉塞感に支配された衰退企業に陥りかねません。
そのような事態を避け、社員がイキイキとした活力ある組織とするには、上司は社員の不満や要望にもっと真摯に耳を傾けなければなりません。例えば会社の方針や自分たちの部署への仕事の振り方に不満をもつ社員に対しては、「君たちの言うとおり、私も会社のやり方は理不尽だと思う。何とか改善を働きかけるので、今はこの業務を頑張ってくれないか」と社員の心情に配慮しつつも、目の前の仕事に取り組むことの必要性を改めて理解させることが大切です。
その上で上司は、自身や部署の受け持つ仕事の意義について、日常から社員に向けて「自分の言葉」で語っておくことが望まれます。例えば「これは会社にとって〇〇の目的があるだけでなく、我々の部署にとっても△△の意味がある大切な仕事だ。私はこの仕事を通して、皆と喜びと達成感を分かち合いたい!」などと熱く語ります。そうすることによって部下は、会社の方針とはまた違ったビジョンを上司に感じ取り、「この人についていこう!」と信頼を篤くするのです・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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