- 西田 淑子
- サクセスインサイド・コミュニケーション 代表・コミュニケーショントレーナー
- 大阪府
- ビジネスコーチ
対象:コーチング
小学生の頃、おばあちゃんから「夕食に高野豆腐の煮物つくっときや」と言われたことがあります。台所の手伝いはしたことがあっても、料理を一人で作ったことはまだありませんでした。なのに、おばあちゃんは、私に一人で作る、という課題を与えました。
うちは商売をしていたので、両親も祖父母も日中は仕事で家にいません。だから、教わりながら、というのはできないし、レシピがあるわけでもありません。食事はうちで働いているおっちゃん達も一緒に食べます。小学生の私には責任重大でした。
私はおばあちゃんに「作り方が分からへんから、できへん」と抵抗したら、おばあちゃんは、「あんた、いつも見とったから、覚えとるやろ。水で戻して、絞って、煮込んだらええんや」。そう言われて、なるほど、と思いちょっと出来る気になりました。だけどまだ味付けが分からない。
「味付けが分からへん」と再び抵抗したら、「そこにあるもんしか使こうてへん」と返された。そこにあるものは、砂糖、塩、醤油、酒、みりん、酢、胡椒、うま味調味料、だけです。「味の加減は、あんたの舌が知っとるやろ、足りんかったら足したらええけど、多すぎたら引くわけにはいかん。ちょっとづつ味見しながら足していきや、足りんくらいで丁度ええで」。おばあちゃんはそれだけ言ったら、さっさと店に行ってしまいました。
高野豆腐の煮物は、出来上がるまでに何回味見したのか、分からんほど味見して、時間はかかりました、が、おばあちゃんの判定が気になります。不味くはないけど、飛び切りに美味しくもない。だから、怒られも褒められもしないだろうと思っていたら、おばあちゃんは味見をして、「うん、うまい、上手に作ったな」と最初に褒めてくれました。それから「ちょっと塩が足りんな」と言って最後の仕上げをして、私に味見をさせました。
おばあちゃんは、優れたコーチでありティーチャーでした。料理を教える代わりに、見ながら学習しているということを、教えてくれました。調味料の分量を量る代わりに、体験したことは理解している、ということを示唆しました。そしてゴールは明確に指示し、あとは任せきったのです。魚を釣る代わりに、魚の釣り方を教えました。そして、良かったことを承認し、足りなかったことを指摘し、それを補って、私に味見という体験をさせることで、私自身が理想と現状の差異を確認する機会を与えました。
「あんたが知っとる」、おばあちゃんが、私の可能性を信じてくれた、という体験は、自信の芽となります。あなたも、自信の芽となる体験が、いつかあったのではないでしょうか?
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