(続き)・・まず供給力の増強に関してですが、東電の電力供給力は通常の約5200万kwから、震災直後には約3100万kwまで急激に低下しました。福島第一、福島第二原発の操業停止はもとより、広野、鹿島、五井など主要な火力発電所も一斉に停止してしまったのです。
東電はその後およそ1か月間で、休業中の火力発電所を稼働させるなどして約1000万kwの電力供給力の上積みを実現し、取りあえずの電力不足を解消しました、そして7月末までには最大5200万kwまでの更なる上積みが可能だと発表しています。
電気を発電しているのは地域ごとの電力会社だけではありません。紙・パルプ、鉄鋼、化学業界などの大手は主要な生産拠点に自家発電設備を備えていますが、そのいくつかはこの電力不足にあたり余剰の電力を電力会社に売電しており、その量を増やすことはある程度可能です。
しかし昨年夏の猛暑では、梅雨明け間もない7月23日に東電管内で5999万kwという年間最大の電力需要を記録しました。それをピークに暑い日には軒並み5500kw以上の電力を消費したのです。そのような状況では、5200kw程度まで供給量を増やしただけでは到底追い付きません。
中部電力など西日本の電力を東日本に供給することも可能ですが、電力の周波数が東日本の50ヘルツに対し西日本の60ヘルツと異なるために、変電所を経由しての電力の融通は限られています。特に中部電力の浜岡原発も操業停止の指令が出たことで、融通が一層難しくなっています。
原発事故に伴い、国民の原発への不信が決定的になった現状では、もはや原発の新設が絶望的になっただけでなく、ついに既存の原発の存続にも疑問符がつきました。そこで他の発電方式に活路を見出すことになりますが、それぞれに大きな問題が指摘されています。
火力発電所を増設することも検討されていますが、着工から稼働までには4~5年はかかるとされており、この夏にはとても間に合いません。それに火力発電はCO2排出量が桁違いに多く、地球温暖化進行の防止などの観点から、増設には慎重な意見が多く寄せられています。
クリーンなエネルギー源として注目されている風力発電や太陽光発電に関しては、この震災を契機として更に見直され、官学を挙げて研究が進められていますが、現状ではコストがたいへんかかるため、本格的な実用化までにはあと10年以上を要するとみられています。
しかも上記の電力の上積みは、全てうまくいったと想定した場合の計算です。実際には未だに続く余震などによる発電機の予期せぬ不具合、豪雨や雷などの天候急変、夏の渇水による水力発電の不調などの異変があれば、予想以上に電力供給が伸びないという事態も想定されるのです・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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