- 塚本 有紀
- フランス料理・製菓教室「アトリエ・イグレック」 主宰
- 大阪府
- 料理講師
対象:料理・クッキング
- 黄 惠子
- (料理講師)
5/6〜8まで岩手県釜石市に、炊き出しのボランティアに行ってきました。
今私に何ができるのか。ずっと考え続けていたところ、人を介して「料理研究家によるプロの炊き出し」へのボランティア参加のお誘いをいただきました。悩みましたが、微力ながらも私でお役に立てるのならと、思い切って行くことに決めました。
代表は中山桜甫先生。http://www.sakuraho.com/
ご友人でいらっしゃる、タレントの竹内都子さんもおいででした。
中山先生のキッチンスタジオで仕込みをした後、夜9時半、東京を出発しました。総勢20名超がマイクロバスに乗って、釜石を目指します。400人分の食材を積み込むと、落ちてきそうにぎゅうぎゅうです。
東北への高速道路はかなり道がガタガタで、頻繁に車が大きく上下に揺れます。朝の10時少し前に釜石市大只越町に到着しました。
橋を渡り、商店街のあたりに入ったころ、突然目の前にがれきが現れ、息を呑みました。1階部分にがれきが積み上がっています。胸が苦しくなります。グラウンドにはさらに多くのがれきが集められているようです。
津波は大槌川と小鎚川を上って川からあふれ、濁流が町中心部を覆ったようです。少し遅れて、港中央部の海側から入った津波が防潮堤を破壊し、なだれ込んだのだそうです。
到着すると、ペンションの厨房を借りて、着替えるまもなくすぐに調理が始まりました。ペンションは少しだけ坂道の上にあり、津波の被害はありません。流されてしまったのは、本当に目と鼻の、すぐそこまで。
こちらはまだガスは使えず、カセットコンロやプロパンを利用します。ありがたいことに電気や水道は使えます。
2日間のメニューは
鮭の粕汁
クリームシチュー
からあげ
卵焼き
春雨入り中華スープ
ポテトサラダ
お家で、みなさんが普通に毎日召し上がっていらしたであろう献立です。しかし中山先生による、栄養学に基づいた「栄養たっぷりの病気対応型災害避難食」なのです。
避難所、小学校、お寺さんから、100人分、40人分・・と代表者の方が料理を取りに見えます。
初日はたぶん10時間以上料理を作り続けました。といっても、私はずっと厨房でひたすらひたすら人参を切って、きゅうりを薄切りし、玉ねぎをおろして・・・を繰り返していました。(詳しくはブログにて)
被災者の方は疲れ切っています。一般のボランティアである私たちには慰問許可はおりません。知らない人間と会話する事は人々をとても疲れさせ、無理をして笑顔を作らせることになるからです。
代表者である中山桜甫先生が被災者のもとを訪れ、お料理を届けられました。そのときの声はこんなふうだったそうです。
「不思議だね~、あんたさ作ってけさった料理はなんだかこんあたりが温もるだわ~
(胸と胸の間に手をおいていらっしゃいました)」
「あんりがとな、こげな美味しいもん作ってくれて、あんりがとな~」
「本当にありがてぇな~、こん人の手が、こげなうまいもん作ってくださった。
わしらのために頑張ってけさった、ほんとにあんりがとな~、、、」合掌
「こんひとの手ば、魔法使いの手だ。 食べたことねぇ料理だどもうめくて、うめくて、しんあわせな味がしたさ~、こげな料理毎日食べられるよう、はやぐ復興せねばなぁ~
唐揚げはもっと食べたかった、うまぐで涙が出たさ、うまぐでうまぐで津波を忘れたさぁ~」
「このたびは、わたしらのためにはるばると来てくださって、ほんどうにありがとうございましたぁ。
美味しい料理は心が豊かになりますた。 こどもらの嬉しそうに食べるかおばぁ、
はんじめてみました。」膝の低さまで頭を下げて、小学校の被災地会長。
『ここには私と都子ちゃんしか来ていませんが、近くのペンションで約20名が
一所懸命、心を形にした料理です。美味しいを届けるために来たのです。
ゆっくりと召し上がって下さい、余ったらおかわりもして下さい、大盛りで持って来てますから』
「みんな、においでわかったんだな~、食欲がなくて横にふせってたものも
いただきました~、卵焼きもサラダもこんなにうめ~と思って食べたことはなかったですよ。
感謝します、皆さんに感謝します、どうか皆さん、達者で、頑張っぺ!」
中山先生は「泣いてはいけない 心に決めて被災地に行っていても、
皆さんが頑張ってくれたことを伝えたら、被災地の皆さんが頭をホントに深く下げて
こんげな美味しい料理、はんじめでです、ありがたくて、ありがたくてと
手を胸に合わせて涙を流して下さいました」と聞かせてくださいました。
じっさいには私は聞いていませんが、聞こえてきそうで、ありがたくて涙がでそうです。
竹内都子さんも最初は慰問の許可が下りなかったそうですが、厨房で大活躍の姿を見た地元の人の働きもあって、許可されたのだそうです。都子さんはほんとうによく働かれました。温かく周囲を和ませ、仕事はじつに早くて的確です。大変な時間の中でとても救われる思いでした。
都子さんもこんなふうに様子を聞かせてくださいました。「地元の人達に話を聞きながらがれきに覆われた釜石の町を歩いていると、突発的に涙が出て・・。ホンマに突然涙がドッと出てくる。私が泣いてる場合ちゃうやろ?それでも地元のお母さん達は「そうなんだよねぇ~このガレキサ見てっど涙出てくるのさ~」って優しく声をかけてくれて、今までボランティアに行った友達のほとんどに言われた「逆に被災者の方達に励まされた」というのは本当だったよ」(都子さんのブログはこちら)
この模様は5月13日(金)17時半~テレビ朝日スーパーJちゃんで、
「脳の不安を取ったり、栄養たっぷりの病気対応型災害避難食の
炊き出し密着取材(岩手県釜石市にて)」として放送されました。
過酷な3日間でしたが、たくさん学ばせていただきました。たくさん考えさせられることがありました。
一日も早く、温かい料理が食べられる日常が、たくさんの人々のもとに戻りますように。
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