民主党政権誕生による税制改正のゆくえ(6) - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
税理士
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民主党政権誕生による税制改正のゆくえ(6)

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税制改正 平成22年度税制改正
今日は、昨日検討した消費税に関連して、
「個別間接税改革の推進」
「酒税・タバコ税」
「自動車関連諸税の整理、道路特別財源の一般財源化、地球温暖化対策税」
について検討します。

酒税に関して、8月31日にテレビ東京系ワールドビジネスサテライトに
出させて頂きました。

まずは、民主党政策集INDEX2009の文章を確認しよう。

「個別間接税改革の推進」
単一の経済行為に消費税と2本立ての課税を行うことになる個別間接税は
速やかに整理し、間接税は消費税に一本化すべきです。
一方で、税によって社会に益をもたらす特定の品目の普及や使用を促進
したり、社会的コストを生じる特定の品目の普及や使用を抑制したり、
あるいはその社会的コストの一部の負担を求めたりすることは、
適当であると考えます。
このような観点に立って、残存する嗜好品やエネルギーに係わる個別間接税は
「グッド減税・バッド課税」の考え方に基づいた課税体系に改めます。

「酒税・たばこ税」
酒税・たばこ税は国民の健康確保を目的とする税に改めるべきであり、
その際には国民に分かりやすい仕組みにすることが必要です。
その観点から、酒税については、特に清酒・焼酎などの現行の税負担に
配慮しつつ、基本的に致酔性に着目してアルコール度数に比例した税制
とすることを検討します。
たばこ税については財源確保の目的で規定されている現行の「たばこ事業法」
を廃止して、健康増進目的の法律を新たに創設します。
「たばこ規制枠組み条約」の締約国として、かねてから国際約束として
求められている喫煙率を下げるための価格政策の一環として税を位置付けます。
具体的には現行の「1本あたりいくら」といった課税方法ではなく、
より健康への影響を考えた基準で、国民が納得できるような課税方法を
検討します。
その際には日本たばこ産業株式会社(JT)に対するさまざまな事業規制や
政府保有株式のあり方、葉たばこ農家への対応を同時に行います。

「自動車関連諸税の整理、道路特定財源の一般財源化、地球温暖化対策税」
わが国の自動車関係諸税は、あまりに複雑で、一部が二重課税となっている
等、自動車ユーザーに過重な負担を強いており、抜本的な整理が必要です。
整理にあたっては、間接税の基本的な考え方に基づいて二重課税の排除等を
行います。
同時に、自動車の資産性や温暖化ガスの排出、交通事故、騒音などの
社会的なコストに着目し、負担を求めることとします。
以上のような考え方から、自動車関係諸税について以下のように整理します。
自動車取得税は消費税との二重課税回避の観点から廃止します。
自動車重量税および自動車税は、保有税(地方税)に一本化し、その税収を
自動車から生じる社会的負担に広く対応する地方の一般財源とします。
ガソリン等の燃料課税は、一般財源の「地球温暖化対策税(仮称)」として
一本化します。
なお、上記の改革を実現する第一歩として、暫定税率は地方分を含めて
すべて廃止します。
国直轄事業に対する地方自治体の負担金制度を廃止して、暫定税率廃止後に
おいても、地方における道路整備事業は従来水準を維持できるようにします。


民主党案の間接税に対する考え方は、基本的には個別間接税を廃止し、
消費税に一本化することのようですね。
ただ、税によって社会に益をもたらしうる税目や社会的コストを生じる
特定品目の普及や使用を抑制する効果がある税目(酒税・タバコ税・
自動車関連諸税・産業廃棄物税等)を残存し、社会に益をもたらしうる
税目を減税し、社会的コストを生じる税目については、消費税移行による
減税ではなく、温存することで高い負担をお願いする、という考え方ですね。

個別間接税は複雑になりがちで、利権を生みやすい構造にあっただけに、
税制の簡素化・透明化を標榜する民主党案の方向性に合致する。

特に、自動車関連諸税において4月攻防を見せた暫定税率の廃止については、
そもそも何ゆえに暫定でありながら、暫定のまま長年やってきたのか。
自民党道路族が暫定財率を維持したかったのであれば、何ゆえに本法に
組み込まないままできたのか。
明日検討する租税特別措置法も同様で、特別措置が何ゆえに本法化されずに
温存されてきたのか。
こういった問題が税制を必要以上に複雑にしてきたのだ。
判りやすくするためにも、必要不可欠なもの以外は原則に戻すべきでしょう。

自動車関連諸税については、自動車税および重量税は分割する意味がすでに
失われており、自動車保有税に一本化する民主党案は納得だ。
また、ガソリン等の燃料税も、化石燃料の燃焼によるCO2対策が求められる
現在において、ヨーロッパ諸国に足並みを揃え、「地球温暖化対策税」として
一本化するという方針は非常に好ましいところだ。

心配なのは、地方において特に必要とされるインフラ整備としての
道路建設がストップしてしまうことだろう。
これまでは自動車関連諸税は道路特定財源として原則として道路建設等にしか
使われなかったが、一般財源化するとなると、公共事業の優先順位として、
将来の発展のためのインフラ整備は後回しになろう。
東国原宮崎県知事らが危惧していたのもその点であろう。
特に宮崎は北に高速が繋がっていないため、例えば延岡の農産物を福岡に
運ぶのに、距離の短い(環境負荷の少ない)大分ルートではなく、
高速を使って、鹿児島、熊本を経由していく方が早いという。
スピードが求められる現在の世界市場で圧倒的なインフラ不備がありながら、
目の前に必要な公共事業があれば、当然にインフラ整備は後回しだ。
この点については、地方の首長たちの声を民主党政権がどう拾い上げるのか、
注目して見ていきたい。

酒税については、酒の種類で税率が変わる現行制度から、アルコール度数に
応じた課税に変わると、非常に判りやすくなる。
世界的にも高い税率だったビールは半減以下(試算では55%DOWN)、
発泡酒も若干下がりますが、あとは増税。
焼酎は従来から20度を越えると1度あたりで1万円税率が上がるため、
現行制度に近いものだが、試算では、酒税は1度あたり2万円になるので、
焼酎は倍、日本酒では倍から2.5倍程度になるようです。
ワールドビジネスサテライトでは、試算した税率2万円を出していません
でしたが、ビール等以外の方はがっかりな改正になりそうですね。
ただ、ビール需要が大幅に上がれば、ビールメーカーは儲かりますから、
酒税が減ったとしても、法人税でカバーできるのではないかと思います。
心配は増税の影響を受ける日本酒や焼酎の中小メーカーの命運ですね。
税のフラット化の功罪がまともに出てしまうかもしれません。

タバコ税に関しては、喫煙率を下げるための価格政策の一環とするという
民主党案を鑑みると、強烈な増税になる可能性は高いですね。
スモーカーはますます肩身が狭くなってしまいますね。
ただ、私は、スモーカーのマナーの悪さにも原因があると考えています。
私の両手は、学生時代にタバコの火を3度ほど受けています。
すれ違い際に火が当たっているんですね。
未だに携帯灰皿を持っている方は少数派ですし、KYな方々と言われても
自業自得ではないでしょうか。
逆に、スモーカーの側からも、吸える場所を作る運動があってしかるべきだと
思いますが、これまでの喫煙所の状況から考えれば、スモーカー以外からの
支持は広がらないでしょうね。