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決算上は黒字なのに、納税額ゼロ?

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雑感 会計と税法の乖離
決算書上の利益は黒字でも、納税はゼロという事態が、大手生保4社で
起きている。
生保危機といわれた2000年代始め以来だという。
27日4時2分asahi.com記事はこう報じた。

国内大手生保4社の09年3月期決算での法人税の納税額が、ゼロになる
見通しになった。
内部に積んだ金を取り崩して決算上は黒字を保つが、課税の対象になる
「その期にあげた損益」は、金融危機の影響で赤字になるため。
大手が軒並み「納税ゼロ」になるのは、生保危機といわれた00年代初め以来という。
大手生保は日本生命保険、第一生命保険、明治安田生命保険、住友生命保険の4社。
08年3月期決算では、4千億円を超える法人税や法人住民税などを納めた。
20日に決算発表した第一生命は、保有株式などの値下がりで6196億円の
損失を計上。
一方、株安などに備えた「価格変動準備金」と大規模災害などに備えた
「危険準備金」を計5980億円取り崩し、純損益では868億円の黒字を保った。
29日に決算を発表する他3社も同様の手法で、黒字化する見込みだ。
ただ、準備金はあくまで過去に稼いだ利益の「貯金」で、その分の税金は
計上した期に払っている。
このため、取り崩すときには法人税がかかる「所得」にも入らない。
こうしたことから、各社の09年3月期は決算上は黒字でも課税所得は
マイナスで、納税は発生しない。
準備金を取り崩して黒字化を図る背景には、契約者への配当を続けたいとの
考えがある。
決算上も赤字になれば、配当もしにくく、保険商品の販売で不利になる。
今回、第一生命は個人向け保険の配当を6年ぶりに減らすが、他3社は
前年度並みを保つ方針。
ただ、その分、財務上の余力は奪われる。
法人税では、3メガバンクも前回の金融危機下の00年前後から「納税ゼロ」
が続く。
単年度の赤字を繰り越して、翌年以降の黒字と相殺できるルールがあり、
過去の巨額の不良債権処理などの影響で、今も課税所得がプラスにならないためだ。




決算書上の黒字を計上していても、単年度決算の実態では赤字であれば
法人所得はマイナスになるため、法人税の納税は発生しない。
そのからくりを用いた利益創出方法は、従来からいわゆる税法基準といわれ
金融機関対策として従来採られてきた伝統的な手法であるといえる。

今回の大手生保4社のケースでは、過去に積み立ててきた準備金を取り崩す
ことによって特別利益を得て黒字決算を見せかけるものであるが、
これは申告書別表4で益金不算入と扱われるため、課税所得を構成しない。

このような課税所得を構成しない準備金の取り崩しが残っているということは
それだけ過去期の利益を配当せず社内留保していた証左であるが、わが国の
会計処理では伝統的に行われてきた。
わが国企業の配当性向が安定配当を志向するためであり、安定配当を旨と
するならば、利益が大きくなっても大きく配当するのではなく、社内に
準備金や積立金の形で残しておき、今期のように利益が少なくなった時に
取り崩して配当するという戦略となる。

ただ、わが国の法人税法が確定決算主義を採る以上は、このような
会計処理基準のルールと税法による基準とが異なることはできるだけ
避けるべきであろう。
会計ビッグバン以前はよく税法基準による逆基準性を批判されていたもので
あったが、現在では会計サイドが、会計基準がすべての規範になるとでも
言いたげな方向に変わっている。
しかし、強行法規性をもたない会計基準は裁判規範足りえず、会計基準の
不備が原因となる投資家への不当な損害が発生したとしても、これを
監査した公認会計士には法的責任はないのである。
会計基準が強行法である税法や商法、会社法を無視して規範性を持たせようにも、
不文法主義の英米ならいざ知らず、成文法主義のそれも後生大事に先例を
踏襲したがるわが国の法曹界の常識には相容れない。
だからこそ、かつては強行法である税法の基準が会計理論を犯してまで影響を
及ぼしていたのである。

しかし、会計ビッグバン以降、会計規範の国際的統一化を旨とする金融庁の
方針に従い、法制度自体が異なるアメリカの経済システムを安易に
取り込んできたわが国では、専門職業人としての高度な倫理規範を持つべき
公認会計士による不祥事が多発している。(税理士も同様であるが)

私は、商法学者と税法学者、会計学者の各々が知恵を出し合って、わが国の
実情に沿った企業会計法を策定すべきであると考えている。

現状では、税法による基準は場当たり的で、会計理論とは相容れないものも
多く、法律がもつべき規範の首尾一貫性を保持できていないと考えている。
この点は、会計学者側から、法理論上にも合致する会計規範のあるべき姿を
示して頂き、議論の俎上に乗せるべきではないかと思う。

残念であるが、わが国の法理論をキチンと理解した上で会計側から提示できる
方が少ないのではないかと危惧している。
アメリカ的な会計規範は不文法主義のアメリカの法規範に合致するものであり、
国会による議決がなければ制度自体が改正できない使い勝手の悪い成文法主義
の上に立脚して会計規範を論じている論文を見つけられていないだけかも
しれないが、戦後間もなくの大家の議論と比べて、わが国の実情を無視した
議論が余りにも多いように感じる。

会計サイドの国際会計畑ではない実務研究者が少ないせいもあるのだろう。

そもそも通達を法律と同じレベルで議論しようとする時点で、
法律学者からは何も知らない素人の戯言にしか聞こえなくなるのだ。

税務会計を専門とされる方や国際課税を専門とされる方に多い傾向だが、
実務家からしてみれば、明確に基準が統一されれば、事務負担の軽減になり、
判りやすい制度となる。

特にわが国の一般投資家は会計に詳しくない方が圧倒的に多いだけに、
基準の違いによる決算数字の見せ掛けは許されている範囲とはいえ、
誤解を与えやすい。

実務研究者として、何とかできないものかと苦慮しているところである。

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