プライマリーバランスの黒字化は7-10年先送り - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
税理士
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プライマリーバランスの黒字化は7-10年先送り

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雑感
財政再建計画について、平成23年までにプライマリーバランスを黒字化する
という政府公約が7~10年遅れる見通しであることが明らかになった。
21日8時5分産経新聞記事はこう報じた。

与謝野馨財務・金融・経済財政担当相は20日の参院予算委員会で、
国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)を平成23年度
までに黒字化する政府の財政健全化目標について「もはや到達できない」
と明言した。
世界同時不況による税収の落ち込みと度重なる景気対策に伴う財政支出が主因だ。
与謝野氏が目標達成を断念する考えを明確化したことで、6月にもまとめられる
政府の経済財政指針「骨太の方針2009」には、新たな財政健全化目標が
盛り込まれることが濃厚となった。
与謝野氏は黒字化の時期について、現状の試算では「7〜10年遅れる可能性が
出ている」と述べた。
そのうえで新目標として、国内総生産(GDP)に対する債務残高比率を
一定にする時期を設定することなどを検討していると説明した。

プライマリーバランスの黒字化は、小泉内閣時代の「骨太の方針2006」
で掲げられた目標で、歳出削減を重視した財政再建を目指していた。
しかし、景気の急速な悪化を受けて財政出動を増やす一方で、税収は
伸び悩んでおり、与謝野氏は3月以降、「客観的にみて達成は困難」
「財政再建の絶対的概念ではない。借金を増やさないという概念の方が
分かりやすい」などと強調。
日本経済が大幅なマイナス成長となっている現状を踏まえて、新たな
財政再建目標を示す必要があるとの認識を示していた。




わが国の税制構造が景気変動の影響を受けやすい直接税中心であることから、
景気が悪く政府の積極的な財政出動が求められる時期には、税収が落ち込み、
結果として赤字国債の発行に頼らざるを得ないことから、与謝野氏は
消費税増税の時期まで明示することに拘ってきたのであろう。
消費税重視へのシフトは、景気変動の影響を受けにくい間接税中心の税制構造を
構築することを意味するから、長期的に安定した税収の確保ができることになる。

今後の少子高齢化社会への対応を考える上で、直接税中心から間接税中心への
パラダイム転換が必要になっていることは確かである。

高齢者を中心に福祉政策に関わる歳出は、ますます拡大化していく中で、
景気変動によって福祉財源に変動があることはマイナス要因の方が大きい。

しかし、税制改革はタイムリーに行うことは難しく、法の予測可能性を
確保するためには、どうしてもタイムラグが存在する。
そのため、税制改正による財源確保だけでは賄い切ることはできず、
一時的には赤字国債の発行に踏み切らざるをえないのである。

特に今回の場合、世界的な金融不況からわが国の産業を守るためには、
早急な大規模経済対策を打ち出す必要に迫られており、財政均衡を旨とする
与謝野財務相とはいえ、赤字国債の大量発行に踏み切らざるを得なかった。
ここ10年来の努力の結果、せっかく減らしてきた財政赤字をまたもとの
水準に戻してしまうことになってしまうが、それは致し方ないことであろう。

ただ、これを常態化するのではなく、景気回復を待ってできる限り早く
財政均衡を取り戻す努力は続けなければならない。

少子化のため、これからのわが国は現役労働人口が減少し始め、必然的に
所得税収は減少していく。
わが国の産業をリードしてきた大企業は、グローバル化し、日本法人の
利益が必ずしも大きくなっているわけではないため、法人税収の拡大にも
それほど多くを望むことはできない。
それどころか、日本に本社機能を残す必要さえなくなっているところも
出始めているのだ。

できるだけ早急に赤字国債の返済を終えないと、人数の少ない将来世代に
過重な負担を先送りしただけのことになってしまうので、そのためには、
行政改革の徹底とともに、増税の選択肢も考えざるを得ない。

それは直接税による増税ではなく、消費税を中心とした間接税の増税で
対応するべきところであろう。

これは国民1人1人が、今の自分の負担と将来の自分の子どもたちの負担
とをきちんと考えた上で、議論すべき問題なんですね。

財政赤字をバブル時代に解消することなく、ここまで引っ張ってきた
ツケを払わなければならないわけですが、労働人口が増え続けた
ベビーブーマー世代(いわゆる団塊ジュニア世代)以降に社会人になる
若者は、すでに自分たちよりも人数の多いリタイア組の社会保険負担を
求められており、その上に、赤字国債の返済負担を課されているわけです。

財政赤字の解消まで7~10年先送りになるとの見通しであるが、
景気が悪いときには赤字国債を発行して景気を刺激し、景気がいいときには
できるだけ赤字国債を繰り上げ返済して、再度景気が悪くなったときに
また赤字国債を発行しても負担が増えないようにしておくことが肝要です。

これまでのツケがなかなか返せないでいますが、財政均衡派の出番は多い。

アゲアゲもいいでしょうが、足元を固めてこそのアゲアゲ。

上げ潮路線の出番はしばらくお預けなんでしょうね。