以前目にしたあるコラムに、若手営業マンが、営業上のクレーム対応を直接謝罪しに行かずにメールで済ませようとし、なおかつそのメールの中身で顔文字を使っていたそうで、それを見た先方の会社は激怒して、取引自体が停止になったとの話がありました。
取引停止まではさすがに行き過ぎの感がありますが、この行動について、社会人の先輩世代は「そんな非常識なことをするのか・・・」という意見が多かったように思います。ただ、私自身は「おかしな行動」と批判、否定することはあまり正しいと思っていません。
最近、特に若い世代の間では、どちらかといえば相手に直接電話をするということ自体が、相手のその時の状況に配慮せずに一方的に割り込んでいくということで、「相手の時間を奪うもの」というマイナスの捉え方をします。
直接電話する相手は、家族や付き合っている相手などの親しい間柄か、しいていえば宅配便の配達連絡くらいに限定したいなどと言います。電話する前にLINEやメッセンジャーを使って、「今から電話していいか?」と尋ねたりします。
「メールの謝罪」を私が否定的に思わない理由は、少なくともこうやって相手に迷惑が掛からないように、自分なりに相手に配慮しようとした結果としての行動だと思うからです。
相手に配慮する感性そのものを他人が教えるのは難しいですが、配慮した気持ちを表現する方法は、教えればできるようになります。
もちろんそもそも配慮する感性が違うことはありますが、これは気遣いのポイントが違っているだけという捉え方もでき、それも時間をかけて教えていくことで、いつかある程度はできるようになります。
このようなマナーに関することは、時代とともに徐々に変わっていきます。電話でもない、手紙でもない、メールでもない、その間を埋めるような様々なコミュニケーションツールがどんどん出てきていますし、あと10年もすれば、「電話は失礼」と考える世代がビジネスの中心になっていきますから、今の常識もどんどん変わっていくでしょう。
最近聞いてなるほどと思ったことに、こんな話がありました。
「今の若い世代は、年長者からアドバイスされることは喜んでいて、話も一生懸命聞こうとする」
「ただし、“こうしなさい”などと強制めいたことを言った途端に、ものすごく拒否反応を示す」
というものです。
右肩上がりを知らない世代ということで、これから何かしようとすることには慎重であり、どんなことでも事前によく調べるということ、情報はインターネットやSNSなどを通じてたくさん手に入るので、その中でいかに自分に合った情報かをよく選別しているということ、そこでは広告や既存メディアのような作り手の発想に偏った情報でなく、自分と似通った等身大、リアルで一般的な情報を求めているということ、人から自分のことを見てもらったり構ったりしてもらうことは、決して嫌がらないということでした。
「聞く耳は持っているが、最後に決めるのは自分だ」ということだと思います。
こういう特性があるのだとすれば、やはり指導のしかたは考えなければなりません。
昔ながらの体育会のように、上意下達で押し付けようとしていては、それこそ退職、転職へまっしぐらです。そうは言っても本人の好き嫌いにかかわらず、教え込まなければならないことはたくさんあります。
最近は新入社員のような若い世代の常識と、一般的なビジネス常識の間の溝が広がってきている様子があります。今までは教える必要がなかったことを、あえて取り上げて教えなければならなくなっているという話をいろいろな人から聞きますし、私自身が体験することもあります。
こういう中で教える側の基本的な姿勢は、本人に考えさせ、選択させた上で行動させるというプロセスを踏むということです。
実際の現場では、そんなきれいごとばかりでは済まないかもしれませんが、「アドバイスは喜び、強制を嫌う」という傾向が徐々に強まっていることは、私自身も肌で感じることがあり、この傾向を知っておけば対処することもできます。
これから若手社員を指導する人たちは、こんなことも頭に入れておく必要があると思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
組織が持っているムードは、社風、一体感など感覚的に表現されますが、その全ては人の気持ちに関わる事で、業績を左右する経営課題といえます。この視点から貴社の制度、採用、育成など人事の課題解決を専門的に支援し、強い組織作りと業績向上に貢献します。
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