ソフトウェア業における工事進行基準の適用 - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

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ソフトウェア業における工事進行基準の適用

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雑感 会計と税法の乖離
平成19年12月27日に企業会計基準委員会(ASBJ)から
企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」
企業会計基準適用指針第18号「工事契約に関する会計基準の適用指針」
の2つが公表されている。

これによると、受注生産のソフトウェアに関しても、
工事進行基準を適用することを求められている。
しかし、会計基準でさえ、いまだに明確な基準の線引きが行われていないのが、
ソフトウェア業に関する工事進行基準の適用に関する明確な指針である。

なぜなら、実務対応報告(全国大学会計人会サミットでも立命館大学の意見
として出ていましたが、ASBJの会員でなければ閲覧が出来ませんので、
会員である日本公認会計士協会を始めとする会計研究者とそのスポンサー企業
以外見ることができません。もちろん、税理士や弁護士であっても
会員にならなければ閲覧は不可能です。会計諸則集にも掲載されていません。)
第17号「ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱い」
(平成18年3月30日公表)は工事完成基準の適用に関するものであるため、
工事進行基準の適正な適用を監査しなければならない公認会計士さえ、
その明確な基準をいまだに示してもらえていないのである。

また、平成20年度版「中小会社の会計に関する指針」73項(3)は、
長期の請負工事に関して、工事完成基準又は工事進行基準により、
収益計上することを求めるのみであり、その根拠条文には、
企業会計原則及び同注解が示されるのみであり、中小企業に対しては
企業会計基準及び同適用指針、実務対応報告を適用させないというのが、
日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、日本商工会議所、ASBJの
現状における見解であるとみることも出来る状況にある。

ところで、企業会計基準第15号は、本基準の適用事業年度を
平成21年4月1日以後開始する事業年度から適用される(基準23項)ことに
なっているが、同項但書きは本会計基準公表日以後、平成21年3月31日以前に
開始する事業年度から適用することができる、と規定していることから、
すでに工事進行基準を適用して、売上を前倒しで計上することが
会計基準上容認されているのである。
それも、工事進行基準の適用は、本基準を適用する最初の事業年度以後に
着手する工事契約から適用される(基準24項)ことが原則であるが、
本基準を適用する最初の事業年度の期首に存在する工事契約のすべてについて、
一律に本基準を適用することができる(基準25項)ため、
すでに期中監査を実行している法人の中には、工事進行基準への切り替えを
行っているところもあろう。その点については、従来からの工事進行基準の
議論以外に明確な基準が示されていない点なのである。
早急に実務対応報告の改訂が望まれるところであり、また、会員以外が
閲覧することが不可能な基準というものが、プロフェッショナルに対する
公的な基準として機能させているASBJの官僚的な態度を改めて頂くよう、
日本税理士会連合会及び日本弁護士連合会からも提言して頂きたいものである。

さて、このような状況にあるソフトウェアに関する工事進行基準の
適用問題であるが、ソフトウェア業を取り上げるのは、今回の基準の改正により、
ソフトウェアが工事進行基準の適用対象に入ったからに他ならない。

ソフトウェア業界は、ソフト開発型企業とSE派遣業に大別されるのであろうが、
今回対象になったのは、ソフト開発型企業のみである。

つまり、本基準は、仕事の完成に対して対価が支払われる請負契約のうち、
基本的な仕様や作業内容を顧客の指図によって行う工事契約を対象としています。
このため、請負契約ではあっても専らサービスの提供を目的とする契約や、
外形上は工事契約に類似する契約であっても、工事に関する労働サービスの
提供そのものを目的とするような契約に関しては、本基準は適用されない。
(基準30項)
また、工事の進行途上においても、その進捗部分において成果の確実性が
認められる場合には、工事進行基準が適用されるが、この要件を満たさない
場合には工事完成基準が適用されることになっています。(基準9項)

したがって、信頼性をもって工事収益総額を見積もるためには、
工事の完成見込みが確実であることが必要であり(基準10項)、
工事契約において当該工事についての対価の定めがあることが必要である。
それも、将来の不確実な事象に関連付けて定められていることが必要である。
(基準11項)
また、信頼性をもって工事原価総額を見積もるためには、工事原価の事前の
見積もりと実績を対比することにより、適時・適切に工事原価総額の
見積もりの見直しが行われることが必要である。(基準12項)

ところが、中小のソフトウェアベンダーではここまでの会計処理を会社で
実行できるところがどれだけあるのであろうか。税理士がどこまで
フォローできるのであろうか。はなはだ疑問である。

さらに問題は、ここまで検討した会計基準と平成20年度改正において行われた
税法の規定に大きすぎるほどのズレがあることであろう。

法人税法は、平成20年4月1日以後開始する事業年度より、
長期大規模工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例
(法人税法64条同施行令129〜131条)において、その対象範囲に
ソフトウェアの開発が追加され、工事期間要件1年以上(改正前2年以上)、
請負金額要件10億円以上(改正前50億円以上)の工事については、
本会計基準の制定に対応した改正として、工事進行基準の適用を容認した。

会計基準は、全ての工事契約について工事進行基準の対象とするが、
実質的に人材派遣である場合や、合理的な見積もりがないために信頼性を
欠く場合に限って工事完成基準を容認するというスタンスであるが、
法人税法は、工事完成基準が原則であり、長期大規模工事に関しては、
会計基準を尊重して工事進行基準を認めるというスタンスである。

なぜ、このようなズレが生じるのか。
保護する対象の違いとしか言いようがないのであるが、
会計基準は、公認会計士監査によって適正処理を担保することにより
自己責任を取らなければならない投資家の判断を誤らせない必要があり、
しかも、グローバル化した経済では、保護されるべき投資家は
日本人に限られないため、会計基準はできるだけ世界中で統一する
必要があります。
しかし、税法は、課税権の行使は国境を越えることができないから、
(もし越えたら相手国への内政干渉以外の何物でもないですね)
保護すべきは債権者(税という債権を挟むと国等が債権者として捉えられる)
ですし、商法の会計規定の目的も債権者保護にありますから、
税法では税務調査、商法では監査役(明治44年商法までは検査役規定が
ありました)の監査によって、間違いがないことを確認できればいいわけです。

目的が違うから、方向性が違ってきても仕方がないことではないでしょうか。
しかし、少なくともお互いの基準を参考にい合えることが求められます。
会計基準が国際的調和化の流れの中で大きく変わっていくことは
日本経済のためには必要なことであるだけに、少なくとも、
会計基準を利用することが多い税務の専門家である税理士や
法律の専門家である弁護士が見ることの出来ない会計基準や、
適用期限が直近に迫ってきながら公表されない会計基準を作ることは
ご勘弁願いたいものである。

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