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会社における契約の締結権限は誰にあるのか?

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 会社が取引において契約を締結する場合には、法人自体は、架空の存在ですから法人自体が契約締結権限者になるということはありません。その会社を代表する者や会社から代理権を付与されているものが契約締結権限を保有することになります。 それでは、会社における契約の締結権限は誰に帰属するのかを見てみることにしましょう。

 1.代表取締役・代表執行役

会社法は、「取締役会を設置する会社」(取締役会設置会社)と「取締役会を設置しない会社」(取締役会非設置会社)の会社の形態を認めています。

取締役会設置会社においては、取締役会は取締役の中から、会社を代表して業務執行を担当する1名以上の「代表取締役」を選んで(会社法362条3項)、その氏名、住所を登記しなければなりません(会社法911条3項14号)

 また、取締役会非設置会社においては、①定款、②定款規定による取締役の互選、または③株主総会決議により「代表取締役」を選ぶことができます(会社法349条3項)。  ①定款、②定款規定による取締役の互選、または③株主総会決議のどれによっても、「代表取締役」を選んでいない場合には、取締役が何人いたとしても、各取締役が会社を代表する権限を有します(会社法349条1項、2項)。

 会社間の取引においては、原則として、この「代表取締役」が第一義的に契約締結権限者になります。ですから、企業間の契約書の当事者欄には、「○○株式会社 代表取締役×山△夫」と記載されているのが通常です。 

【例①】代表取締役名義の契約締結の場合

甲 東京都○○区○○-○○ 

  株式会社 ○×商事

  代表取締役 ○△×○  印 ←※会社の「角印」ではなく「代表印」を押す。

 また、会社の中には、委員会設置会社という形態の会社もあります。委員会設置会社の取締役会は、執行役の中から会社を代表する「代表執行役」を選び(会社法420条1項前段)、その氏名、住所を登記しなければなりません(会社法420条1項前段、同911条3項22項ハ)。委員会設置会社においては、原則としてこの「代表執行役」が会社の第一義的な契約締結権限者になります。

2.代理人

 前述したとおり、会社の第一義的な契約締結権限者は、「代表取締役」(委員会設置会社の場合には「代表執行役」)ですが、この契約締結権限者から委任を受けた代理人も契約締結権限者になることができます。この場合には、相手方としては、代理人と称する人に委任状の添付を要求する必要があります。後で、代理権がなかったということになれば、いわゆる無権代理として契約が無効(効果不帰属無効)になってしまうおそれがあるからです。

 【例②】代理人名義の契約締結の場合

甲 東京都○○区○○-○○ 

    株式会社 ○×商事

    代表取締役 ○△ ×○  

    上記 代理人 ×山 ○夫  印 

 3.平取締役・平執行役・支店長・部長・課長

(1)平取締役・平執行役

取締役会設置会社の取締役は、対外的に代表取締役からの委任に基づいて代表取締役を代理していると解するのが相当です。この点は、平執行役も同様であると考えられます。

 (2)支店長・営業部長(事業部長)

 会社間の取引において、稀に支店長名義、営業部長(事業部長)名義で契約が締結されているケースがあります。会社の第一義的な契約締結権限者が「代表取締役」であるのが原則であることからすると、支店長名義、営業部長名義の契約は、無効なのでしょうか。答えは、Noです。支店長名義、営業部長名義での契約も有効です。

 会社法13条には、その会社の「本店又は支店の事業の主任者たることを示すべき名称を付した使用人」は、その会社の事業について、代表取締役に代わり事業全般の業務を行う一切の裁判上または裁判外の行為を行う権限が与えられています。

 ですから、支店長や営業部長名義で契約を締結した場合であっても、会社間の取引として有効なものということができます。

 【例③】営業部長名義の契約締結の場合

  甲  東京都○○区○○―○○

     株式会社 ○×商事

     営業部長 △山 ×夫  印

 (3)営業以外の部長・営業課長・購買課長・資材課長などの役職の人

 それでは、支店長や営業部長名義での契約書が有効なことがわかったとして、例えば、法務部長、財務部長などの営業以外の部長、または、営業課長・購買課長・資材課長などの役職の名義で契約を締結した場合には、どうなるのでしょうか。

 先ほど説明した「本店又は支店の事業の主任者たることを示すべき名称を付した使用人」(会社法13条)にはあたらないと考えられていますが、会社法14条には、「ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人」は、その事項に関して一切の裁判外の行為をなす権限を与えられている旨を定めており、明らかにこれらの部課長の担当範囲に属する契約と認められる場合は、代理権を有していると考えられます。

従って、上記のような役職の名義で締結した場合にも、これらの部・課長の担当範囲である限りは有効であるということになります。

(4)営業係長・その他係長

 課長職が会社法14条によって契約締結権限が認められるとして、係長はどうなるでしょうか。これについては、「ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人」に係長があたるのかどうかが争われた事例(大阪高裁昭和60/12/24)があります。事例を簡易化すると以下のような内容になります。

 【事例】繊維製品の販売をする「X会社」と同じく繊維製品を販売している「Y会社」の間のトラブルですが、「X会社」の専務取締役A氏が、「Y会社」の「物資部繊維課洋装担当係長」のB氏と交渉の上、「X会社」が「Y会社」にタートルネックシャツ2000枚とワークシャツ5040枚を737万1520円で売却する契約を締結し、X会社がY会社に対して代金を支払ってくれと請求した事案です。Y社が「それはB係長が会社の承認を得ないで勝手にした取引だから無効だ!代金は支払わない!」と主張した場合、このような主張は通るのでしょうか。

 【例④】物資部繊維課洋装担当係長B氏が契約締結する場合

  甲 東京都○○区○○-○○

    株式会社 Y 会社

    物資部繊維課洋装担当係長 B   印 

 争点は、「物資部繊維課洋装担当係長」であるB氏にタートルネックシャツとワークシャツを購入するという契約締結権限があったか否かという点です。B氏がY社において契約締結権限がないのであれば、取引は無効(=X社はY社に請求できない)ということになりますし、契約締結権限があるのであれば、取引は有効(=X社はY社に請求できる)ということになります。

これについて判例は、「係長B氏は、Y会社において洋装関係の繊維製品の取引については対外的にはY会社を代理して売買契約を締結する一般的な権限を与えられていたと解するのが相当であ(る)」と判示し、「この帰結は、(B氏)の地位職名である「物資部繊維課洋装担当係長」なる名称にも適合することからして裏付けうるところである。」としています。これは、旧商法43条に関して出された裁判例ですが、会社法14条の「ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人」においても同様の判断がなされると思われます。

常識的に考えて、「物資部繊維課洋装担当係長」という肩書きが会社から与えられているB氏にタートルネックシャツとワークシャツを仕入れる契約締結権限がないというわけにはいかないでしょう。

 <Y会社の内部決済との関係はどう考えるべきなのか>

 あと、この裁判例の注目するべき点は、多くの会社では取引をするに当たって、稟議制度のような決済システムが設けられていると思いますが、本件では、「社内の決済承認がおりていなかった」事案です。このように(Y会社の)「社内の稟議が通っていない・決済がおりていない」場合には、どう判断されるのかを理解をしておく必要があります。

 この点について、上記裁判例は、「(B氏)に原則として課せられていた前記のような上司の事前決済、所定様式の履践義務等はいずれも(B氏)が前記包括的代理権を行使するにさいし、(Y会社)内部の手続として必要な制約にすぎないと解すべきである。」として、稟議制度等によって内部手続の制約があったとしても、対外的な代理権限(契約締結権限)が制約されることはないということが示されています。

会社法の下では、会社法14条2項の「使用人の代理人に加えた制限」に該当することになり、「善意の第三者」すなわち、「決済を通過していないことを知らない相手方」には「対抗できない」ということになると思われます。

 

 

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