中国特許民事訴訟概説(第2回) - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
河野特許事務所 弁理士
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中国特許民事訴訟概説(第2回)

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中国特許民事訴訟概説 ''〜中国で特許は守れるか?〜''(第2回) 
河野特許事務所 2008年8月26日
執筆者:弁理士 河野英仁、中国弁理士 張   嵩


2.権利行使の方法
(1)Dual Track System
  中国における特許侵害の解決手段は行政によるアプローチと司法によるアプローチの二つがある(中国専利法(以下,中国特許法)第57 条(1))。これはDualTrack System とよばれ,中国特有のシステムである。すなわち,民事訴訟を提起し人民法院にて解決する以外に,中国各地57 カ所に存在する特許業務管理部門に侵害行為の停止処理を求めることができる。

(2)特許業務管理部門の役割
 上述のとおり,中国における侵害対策は司法アプローチと行政アプローチとに大別される。その中で,行政アプローチは特許業務管理部門により取り扱われる。
 ここで特許業務管理部門とは,
「各省,自治区,直轄市人民政府及び特許管理業務量が多く,かつ,実際的処理能力の有する区を設置している市の人民政府により設置されている特許業務を管理する部門」
を指す(中国特許法実施細則第78条)。実務上は,各省,自治区,市の知識産権局(以下,地方知識産権局)により担当されている。
1.地方知識産権局と中国国家知識産権局との関係
 端的に言えば,両者の間に主従の関係はない。各地方知識産権局はその相応する地方政府に直属するが,業務上,中国国家知識産権局からの業務指導を受ける場合もある。なお,中国国家知識産権局は特許権に関する紛争を処理・解決する職能を有しない。
2. 特許業務管理部門の特許権に関わる紛争を処理・解決する過程における職能及び作用
 特許業務管理部門の職能は特許管理職能と特許紛争処理職能とに大別されるが,ここで,特許業務管理部門の特許管理職能については割愛させていただき,特許紛争処理職能を中心に説明する。
(i)侵害認定及び処理
 侵害事件が発生した場合,当事者(特許権者)は特許業務管理部門に侵害行為の認定を請求することができる。特許業務管理部門は,侵害行為であると判断した場合,侵害行為の差し止め命令を侵害者に発行する。
しかし,特許業務管理部門は差し止め命令を発行するにすぎず,損害賠償命令を発行する権力を有さない。特許業務管理部門はあくまでも損害賠償の調停を行うにすぎない(中国特許法第57 条)。
 なお,特許業務管理部門は侵害の判断を行う際に,意匠に係る判断の場合を除き(意匠侵害に関しては,専門知識に対する要求が低いから),該当する分野の専門家に技術上の分析を依頼する場合が多い。
(ii)他の特許紛争に対する調停
 侵害認定及び調停の他に,特許業務管理部門は更に以下の特許紛争に対する調停を行う職能を有する(中国特許法実施細則第79 条):
(a)特許出願権と特許権帰属の紛争
(b)発明者,考案者資格の紛争
(c)職務発明の発明者,考案者の奨励及び報酬の紛争
(d) 発明特許を公開した後,特許権を付与する前にその発明を使用したが適当な費用(日本国特許法第65 条の補償金に相当)を支払わない紛争
 なお,(d)に掲げる紛争について特許権者が特許業務管理部門に調停を請求する場合,特許権付与後でなければならない。また,以上の各紛争については,特許業務管理部門は調停をすることしかできず,認定または判定等をすることができない。
(iii) 他人の特許と詐称する行為及び特許ではないものを特許と偽る行為に対する処理
 特許業務管理部門は,他人の特許と詐称する行為及び特許ではないものを特許と偽る行為を発見または他人の密告により発見した場合,それらの行為を差し止め,更に行政処罰を実施する権利を有している(中国特許法第58 及び59 条)。   (第3回に続く)
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