対象:住宅設計・構造
回答:2件
野平 史彦
建築家
1
防湿シートについて
お答えします。
住宅断熱に用いられるグラスウールやロックウールなどの製品は胴縁間に納まる幅(@455)のサイズで袋詰めになったものが多く出回っていますが、これは一般的に耳の付いた室内側が防湿気密シート、外壁側が透湿防水シートになっています。
即ち、室内で発生した水蒸気がグラスウール内に侵入して結露を起こさない様に,室内側は防湿気密シートになっています。しかし、万が一グラスウール内に水蒸気が侵入した時のために外壁側は透湿シートとして侵入した水蒸気が外に逃げ易くしている訳です。
耳付きになっているのは、耳の部分を胴縁の上に重ねてタッカー止めして石膏ボードを上に貼ることで気密層を容易に形成しようということなのですが、軸組の中には筋交いがあったりコンセントやその他、断熱材を充填する時に邪魔になるものが多く、理想通りに施工できない部分が多々発生し、巧くセットできなかったり、防湿気密シートを破いてしまったところをきちんと気密テープで塞いできちんと気密を確保している施工者は本州では皆無ですから、袋詰めのグラスウールできちんと防湿をはかるというのは、現実的には極めて困難なことなのです。
と言って、防湿シートを貼れば良いのか、と言えば、やはり気密を破る箇所をきちんと気密テープなどで塞ぐことを怠っていては、同じ事なのです。(袋詰め+防湿シートで2重の防湿をすれば結構いけるかもしれませんが、、)
何故、防湿シートが必要なのか、と言えば、それは壁の中で結露が起きることを防止するためです。壁内結露が恒常的に起こると、構造体が腐り、カビやダニが発生し、シックハウスを引き起こすことになります。
(追記)
補足
外壁に透湿抵抗の大きな構造用合板を使用している場合、防湿シートが効いていなければ、壁内に侵入した水蒸気の逃げ道がないので内部結露を起こしてしまいます。
しかし、外壁側が透湿性の高いものであれば、防湿シートが効いていなくても内部結露の心配をぐっと少なくする事ができます。
私は素材の透湿性に着目して防湿シートをしなくても内部結露を起こさない断熱工法を「透湿断熱工法」と呼んで「高気密・高断熱」後の断熱法として実践しているのですが、この辺のことは以前にも質疑回答で書いた事があるので、詳しくは私共のHPの「住宅断熱基礎講座」や「木の家マニアの駆け込み寺」、あるいは「工務店/設計事務所再教育センター」の中でも取り上げているので、覗いて頂ければ幸いです。
本田 明
工務店
2
野平さんよい解説
野平さんの回答は、理論と実際の工事状況を良くご存知のよい解説だと思いました。
ご質問の答えからは少しずれますが、
私は、以前に、構造用合板の野地板の裏側の結露に頭を悩まし、
色々参考資料を当りました。
それ以後は、外壁や、野地板には、構造用合板を使用しないと、
決めて、建物を作っています。
耐力壁は、構造用合板を使わず、筋違をバランスよく配置し、
野地板には、杉板を使用しています。
そのようにしてからは、今のところクレームは発生していません。
日本の住宅では、湿気を、室内から排出し(室内の換気)、
かつ建物躯体の中に貯めない構造が、良いと思います。
原理的には、その湿気を貯めない構造の一つが、
室内側に湿気を遮断する気密層を作る構造であり
もう一つが内壁も外壁も湿気を通す構造とし、
常に、湿度を室内外と定常状態にする方法です。
一般的な話として、
北海道・東北などの寒い地方では、気密施工でないとだめみたいですが、
比較的温暖な地域では、両方の手法が可能だと思います。
(現在のポイント:-pt)
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