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藤森 哲也 専門家

藤森 哲也
不動産コンサルタント

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容積率オーバーの物件について

2013/08/30 09:57
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5.0
)

はじめまして、不動産コンサルティング会社、アドキャストの藤森と申します。

ご質問いただきました件ですが、「同規模の建物は建築できないか」については、

建築可能な場合があります。


物件の情報が少ない中でのアドバイスとなりますので、あくまで可能性の話になりますが、

オーバーしているという既存建物の「オーバーしている容積率のパーセンテージ」

「現在の間取り」「敷地形状」「現行法での建築可能なスペース(建物配置・高さ等)」

などの状況と、そこにイマーム様が建て替えする際の「建物プラン」を考慮することに

よっては、同規模の建築がまったく不可能とは限りません。



まず容積率ですが、これは敷地面積に対する建築延べ面積(延べ床)の割合のことで、

「建物の延べ床面積÷敷地面積×100」の計算式で割り出されます。

容積率200%と定められた地域で、敷地の広さが90平米の土地であれば、

延床面積が180平米を超えてはいけないという意味です。



これを超えると容積率オーバーとなり、通常建築確認申請は通らないので、

建築はできません。


但し、この容積率を割り出す際の延べ床面積に数えなくて良いものがあります。

先程の例で言いますと、実際の床面積は全部で200平米くらいあるのに、申請では

180平米以内で申請でして良い場合です。




まずひとつが「地下緩和」です。

住宅として使用する地階部分であれば、建物全体の住宅部分の床面積合計から

3分の1までを限度に除外することができます。

例えば1階部分が70平米、2階部分も70平米、住宅として使う地下室が70平米の場合、

延べ床面積は210平米です。先程の例(容積率180%まで)で言えばオーバーしています。

しかし、地下緩和を利用すれば、容積率算定上では140%として申請できます。

「地下」かどうかの扱いについては、天井が地盤面から1mを超えて地表に出てはいけない、

地下室とする空間の高さの3分の1以上が地盤面より地下にあることなど、一定の基準

がありますが、半地下に近いイメージの居室でも地下扱いされます。


現在の建物に地下が無い場合、オーバーしている面積分を地下緩和で補うことが

可能かもしれません。







もうひとつに「車庫緩和」という方法もあります。

これは、駐車場の床面積は、延床面積から5分の1までを限度に除外することができます。

例えば1階部分が70平米(内30平米が車庫)、2階部分も70平米、3階部分も70平米の

場合、延べ床面積は210平米です。

しかし、車庫緩和(210平米÷5=42平米までを除外)を利用すれば、容積率算定上では

180%として申請できます。



ちなみに、この車庫緩和と先程の地下緩和は併用できます。

容積オーバーの既存建物の間取り、建て替え時のプランによっては、

容積率緩和を利用することでオーバー分を補い、建築確認申請より

現況では大きな建物を建築することが可能な物件もあります。




他にも、「壁面ラインの指定がある場合の緩和」「特定道路による容積率の緩和」など、

ちょっと特殊なケースでの緩和もあります。

また、現実的ではありませんが、隣の敷地を借りるという方法もあります。

購入して自身の土地としていなくても、建築確認申請時に隣の所有者から

土地を借りて建築面積が広がっていればOKです。

例えば自分の土地が100平米でも、隣の土地の内50平米借りれば、土地全体を150平米

として容積率の算定ができます。容積率200%の地域なら、延べ床面積300平米まで

を限度とできます。

実際に建てる建物位置が自身の100平米内でも問題ないので、隣が仲の良い親族などで

あれば、算定上の分子を大きくする為に借りるという方法もあります。

ちなみに貸した側は、貸した分の土地面積は使えませんが、例えば500平米の広さが

あっても、容積率、建蔽率、高さ制限、その他法令により、実際建てられるのは、

500平米の土地でも、300平米の土地でも、建築可能な限界は同じだったりすることも

あります。そのような数百平米、数十平米の土地を持て余しているようであれば、

小額の費用で容積率の計算上、貸してくれるかもしれません。




尚、容積率では緩和だけでなく、規制されることもあるので、注意が必要です。

敷地の前面道路の幅員が12m未満の場合、その幅員によっても規制されるのです。



容積率が200%の地域でも、前面道路の幅員が4m(2項道路のような2m以下含む)の

場合、用途地域が住居系なら「幅員:4m×40%」の計算による160%となり、

都市計画で定められた200%と比較し、小さい方が限度となります。

用途地域が商・工業系なら「幅員:4m×60%」の計算による240%になりますので、

200%と240%の小さい方となります。240%が限度とはなりません。



建築には、当然容積率だけでなく、高さの制限もあります。建築基準法の建蔽率や

民法234条の隣棟間(境界から50センチ)など、様々な規制により、敷地内での建築可能な

スペースを制限してきます。


容積率には「地下緩和」「車庫緩和」などの方法もありますが、他の制限により、

緩和の適用が意味を成さない場合(他の規制で結局規模を制限される等)も考えられます。

ちょっと勉強しただけでは、その法律関係を加味して、建築可能なボリュームをイメージ

するのは難しいと考えます。


もし、同規模か建つかどうかで契約を迷っているようであれば、その地域(法令)で、

検討している土地形状、土地面積、道路幅員ではどのような建物が建てられるか、

場所、土地をしっかり限定して、建築事務所などで建物プランを出すことが賢明です。






昔は、申請だけしっかりやって、実際の建築では申請より大きなものを建ててしまう

ケース(違反建築)や、建築時に法令遵守して建てた建物が、建築後に法律が変わり(容積率

が少なくなった場合)、結果として容積率オーバーになっていったケース(既存不適格)が

多々あります。

これら全てが住宅ローンの対象とならないようでは、中古市場はほとんどキャッシュのみ

の方しか買えないことになってしまいます。

違反の程度(オーバーしているパーセンテージ等)によっては、住宅ローンが組める

場合もあります。

契約条件に○○銀行で金利○○%のローンが通らなかった場合は解約できるという、

「ローン条項」をしっかり設定していれば、物件の購入はできなくなるかもしれませんが、

金利の高いローンで借りたり、支払う金銭が用意できないから違約といった扱いには

なりません。



値切りについては、先に回答されていらっしゃる方もおっしゃっていますが、

販売価格が市場の需要と供給に対してどうかによります。

但し、交渉しなければ値引きも当然ありませんし、買主側が常識の範囲内で値段交渉

するのは当然の権利ですから、仲介業者に相談してみてはいかがでしょうか。




以上、ご参考になりましたでしょうか。

アドキャスト:http://ad-cast.co.jp/  藤森哲也

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評価・お礼

イマーム さん

2013/09/17 20:58

藤森さん、ご回答ありがとうございます。
緩和などの建築プランんは初耳だったので、調査したいと思います。
いろいろ抜け道はあるものなんですね。

回答専門家

藤森 哲也
藤森 哲也
( 不動産コンサルタント )
株式会社アドキャスト 代表取締役
03-5773-4111
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売ってしまえば終わり・・・になりがちな不動産業界の現状に疑問を抱き、不動産購入には欠かせないお金の勉強をスタート。FP資格を取得。住宅購入に向けての資金計画、購入後の人生設計までトータルにサポートする「一生涯のパートナー」を目指しています。

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この回答の相談

容積率オーバー物件

住宅・不動産 不動産売買 2013/08/27 21:28

購入しようか迷っている物件があります。
しかし、
『1、容積率がオーバーしている
 2、将来建て替え時には同規模の建築はできない
 3、一般の住宅ローンの利用は難しい』
との特記事項が書いてありま… [続きを読む]

イマームさん (埼玉県/38歳/男性)

このQ&Aの回答

容積オーバーについて 前野 稔(ファイナンシャルプランナー) 2013/08/28 16:10

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