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対象:特許・商標・著作権
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米国特許判例紹介 (第2回)
方法クレームを複数当事者が分割実施した場合に侵害が成立するか
~寄与侵害に関する大法廷判決~
河野特許事務所 2012年11月21日 執筆者:弁理士 河野 英仁
Akamai, Inc., et al.,
Plaintiff-Appellant,
v.
Limelight, Inc., et al.,
Defendant Cross-Appellant.
3.CAFCでの争点
争点: 複数人が方法クレームの各ステップを分割実施した場合に特許権侵害が成立するか
以上の2事件においては争点が共通している。すなわち、方法クレームを複数人が分割実行した場合に、特許権侵害を問うことができるか否かである。当該争点について2事件まとめて大法廷にて争われた。
4.CAFCの判断
結論:単一当事者が方法クレームの全てを実施していない場合でも、誘発侵害の責任を負う
(1)米国特許法第271条(b)の立法経緯
直接侵害については米国特許法第271条(a)に以下のとおり規定されている。
(a) 本法に別段の定めがある場合を除き,特許の存続期間中に,権限を有することなく,特許発明を合衆国において生産し,使用し,販売の申出をし若しくは販売する者,又は特許発明を合衆国に輸入する者は,特許を侵害することになる。
間接侵害については誘発侵害について規定する米国特許法第271条(b)と、寄与侵害について規定する米国特許法第271条(c)とに分かれる。米国特許法第271条(b)の規定は以下のとおり。
(b) 積極的に特許侵害を誘発する者は,侵害者としての責めを負わなければならない。
誘発侵害は、直接侵害が現実に発生している場合にのみ、成立する[1]。BMC事件においては、当該要件に加えて、寄与侵害はさらに直接侵害が単一当事者により行われていなければならないと判断したのである。
これに対し大法廷は、故意に単一当事者が全てのステップを実施した場合と、複数人が共同して全てのステップを実施した場合とでは、特許権者に与えるインパクトは同一であると述べた。CAFCは米国特許法第271条の規定及び立法過程から見ても別の取り扱いとする必要性は無いと判断した。
米国特許法第271条は1952年に改正された。当時の法律の作成者の一人であり、法律制定におけるヒアリングにて頻繁に証人となっていたGiles Rich氏は、寄与侵害における初期の議会ヒアリングの過程において、侵害に関する改正法の規定は、単一当事者が直接侵害の責任を負わない場合でも、分割侵害の責任を負うということを明らかにしている。
(2)連邦刑法における取り扱い
米国特許法第271条(b)に類似する規定として、連邦刑法第2条(a)及び(b)( 18 U.S.C. § 2(a)及び2(b))がある。これらは、米国に対し犯罪を行う者、または、その行為を援助、幇助、助言、命令、誘発若しくは斡旋する者は誰でも主犯として罰し得、また、故意に直接その者または他人により実行されるべき行為を引き起こす者は誰でも主犯となる旨規定している。
例えば、United States v. Tobon-Builes事件[2]では、被告が、仲介者に犯罪行為に関与するよう誘発した場合、たとえ当該行為を起こした仲介者に犯罪意識がない場合でも、被告は責任を負うと判示された。
以上述べた連邦刑法の規定に鑑みれば、分割侵害の適用に際しては、たとえ誘発により各人が侵害行為を行い直接侵害としての責任を負わないとしても、誘発を行った当事者は誘発侵害の責任を負うことを示している。
[1] Deepsouth Packing Co. v. Laitram Corp., 406 U.S. 518, 526 (1972); Aro Mfg. Co. v. Convertible Top Replacement Co., 365 U.S. 336, 341 (1961)
[2] United States v. Tobon-Builes, 706 F.2d 1092, 1099 (11th Cir. 1983)
(第3回へ続く)
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