同族会社の事業承継の紛争の裁判例(大阪高判平成元・12・21) - 事業相続 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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東京都
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対象:事業再生と承継・M&A

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同族会社の事業承継の紛争の裁判例(大阪高判平成元・12・21)

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【コラム】判例研究(大阪高判平成元・12・21判タ715号226頁)

(ⅰ)事案

形式上は株式会社ですが,実体は両親が中心となり,家族全員で経営する町工場が舞台です。父親が代表取締役,長男,次男が取締役であり,株主には,両親,長男,次男,父親の友人が名を連ねていましたが,両親以外は実際には,出資をしておらず,実質株主は両親のみです。

両親は,会社の中心的な働き手である息子に万一のことが起こったときのことを考え,息子を被保険者,保険金受取人を会社とする,いわゆる企業保険契約を保険会社と締結しました。当時,保険金の使途についての具体的な予定等は決まっていませんでした。その後,長男が死亡し,保険会社から会社に1500万円余りが支払われました。長男の両親は,残された長男の妻と子供の生活を心配し,右保険金の大部分を長男の妻に与えることとしました。その約3年後,父親が死亡し,次男が代表取締役に就任し,会社が原告となり,長男の妻に対してその返還を求めました。

(ⅱ)争点

① 本件保険金の支払いが長男の退職慰労金に当たるか

② 長男の退職慰労金に当たるとしても,会社法361条で要求される株主総会の決議がなく,法律上の原因を欠くのではないか

(ⅲ)判旨

 まず,①について,長男には本件保険金以外に退職慰労金は支払われていないこと,少なくとも長男の生前の取締役としての職務執行の対価ないし功労に対する報償の性格を否定できないことを理由に本件保険金の支払いが長男に対する退職慰労金の支払いに当たり,会社法361条の適用を肯定しました。

 次に,②について,本件保険金の支払いにつき,定款の定めも株主総会の決議も開かれていないことは明らかであるが,会社はいわゆる同族会社であり,実質的株主は両親のみであるところ,実質的な株主全員の承諾を得たことにより,本件保険金の支払いについて株主総会の決議があったものとして扱うのが相当であるとしました。

 

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