- 井門 隆夫
- 株式会社井門観光研究所 代表取締役
- 東京都
- マーケティングプランナー
対象:イベント・地域活性
- 宮崎 隆子
- (日本産精油スペシャリスト)
- 宮崎 隆子
- (日本産精油スペシャリスト)
需要と供給の差
旅館に少しでも安く泊まりたいと願うのは、誰もが同じ思いだろう。
ところが、泊まりに行けるのは土曜日が多く、その土曜日は必ずといっていいほど高い。
「平日は安いのに~」と思った方は少なくないだろう。
需給バランスの結果、「土曜は需要が多いので高い」といえばそれまでだが、差が大きい宿もあれば、小さな宿もある。
その差は何なのだろうか。
なぜない標準料金
まず、その前に、何を見て「土曜は高い」とおっしゃっているだろう。
その多くが、数多くある「宿泊プラン」の料金ではないだろうか。
その前に「標準料金表」がその宿にあるかどうか。
それが、その旅館の良し悪しを判断するひとつの指針だと思う。
実は多くの旅館のホームページには「標準料金表」が載っていない。
数々の宿泊プランで料金を判断する方式が多い。
これは「料金はその都度、旅館の都合で変えます」と言っているようなもの。
そうではない旅館あれば、標準料金表を加えたほうがいい。
標準料金を載せるということは、価格に自信のある証拠だからだ。
なぜ「料金をその都度変える」のか。
口悪く言えば、銀座の寿司屋のようなもので「時価」だからだ。
ただし、最近では、シティホテルも航空会社なども全て「時価」になっている。
需給バランスをみながら、需要が弱ければ安く、需要が多い日は高く、自由に設定できるのだが、旅館もそれにならっているのだ。
1泊2食の罠
しかし、シティホテルや航空会社と、旅館の間には大きな違いがある。
それは、前者は「客室や座席」というコモディティ(空けておくより安くても埋めた方がいいし、価格によって品質の差はない)であるのに対し、旅館は「1泊2食制のため(原価によって変わるはずの)食事も含まれる」点だ。
このへんを、旅館の予約システムを作る会社はわかっていない(ホテルと同じだと思っている)。
つまり、安く売るということは、食事の内容まで落ちるおそれがあるということ。
すなわち、安いプランは、季節や曜日・客室の種類で安くなるだけではなく、時として「食事の内容まで勝手に落とす」ことで安くしていることもあるのである。
土曜日が通常料金
つまり、「土曜が高い」のではなく、「平日が安い」のである。
しかも「安くなっているが、食事内容を確認したほうがいい」場合もある。
そう言われると、「井門は旅館の代弁(土曜が高い言い訳)をしているのでは」と思われるかもしれず申し訳ないのだが、旅館の1泊2食を(想像で)分解して考えてみて欲しい。
土曜日は、「通常の客室料金」に「通常の食事料金」で成り立っている。
平日は、「割引した客室料金」に「通常の(時として内容を落とした)食事料金」なのだ。
その差があまりにも大きい時は、食事内容で調整しているのだ。
差が小さいほど「よい旅館」
「週末と平日の料金差」が小さい旅館ほど「よい旅館」である。
まずは、差が大きな旅館は、食事内容を落としているおそれがあるということ。
加えて、平日が安いということは、平日にお客様がいないということ。それだけ「リピーターや地元客が集客できていない」と推測できるからだ。
せいぜい、その差は土曜日の1割引き程度までであろう。
数々のプランは料理の差
数々の宿泊プランは、少しでも平日の単価を上げたい(落としたくない)ための手段だ。
客室料金は落とさなくては集客できない。しかし、少しでも単価(原価)の高い料理を食べて欲しい。そのため、料理のグレードアップのプランが多い。
それが数多くなりすぎて、何を選べばいいのかわからなくなっている。
旅館は、あわよくば、一番安いプラン(料理内容を落としている)ではなく、料理グレードアッププランを選んで欲しいと願っている。
が、何がお得なのかわからないので、利用者は一番安いプランを選んでしまう。
割引された平日料金を基準としてしまうための誤解
標準料金がないということで、スタンダードになっているのが「~(から)料金表示」。
「○○○円~」
という表示が旅館料金を表す標準形になっており、その料金は割引された「平日」料金が基準になっている。
そもそもこれが「土曜は高い」と誤解される根本原因だ。
さらに料金表も「平日」が基準になり「休前日は○○円アップ」と書いてしまうのも誤解をさらに助長している。
これを助長したのは、旅行会社のパンフレットだ。
とにかく安い料金を見せて、旅行に出かけてもらいたい。
そう願う商業主義が、旅館の料金を複雑にした。
中小企業である旅館業界にはマーケティング機能がなく、旅行会社に依存してきたせいもある。
それを正常に戻す手段はただひとつ。
どの旅館も「標準料金」表を示すことだ。
できないのであれば、永遠にこの誤解は続くであろう。
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