「インプラントの事故増加」の報道で思うこと

2012-02-09 16:00

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＜コラムの要旨＞　

　先月、報道各社のニュースで「インプラント治療の事故が急増している」と伝えられました。インプラント治療に携わるものとして、本来は優れた治療法だけにマイナス面だけが強調され報道されたことは大変遺憾でした。

　患者さんの不信感も高まったようで、不安の声が聞こえてきたため、インプラントの安全性と治療を受けるにあたっての心構えについてご説明したいと思います。

1.インプラントは危険？

　この２０年ほどで普及して、今ではどこの歯科医院でも受けられるようになったインプラント治療、入れ歯に代わってますます注目を集めている治療法ですが、雑誌やインターネット上ではスパイシーな宣伝文句が並び、様々な情報が錯綜して、患者さんには分かりにくくなっているように思います。

「高額なインプラント治療…どこからどこまでがいくらなのか？」
「費用をかけても本当に長持ちするのだろうか？」
「どこのクリニック（先生）を選べば良いのか？」
「手術のリスク（安全性）や術後の痛みが心配だ・・・。」

など、最近は多くの患者さんの疑問や不安の声を耳にします。

　治療を受けようと考えていても、良くも悪くも情報が有り過ぎて悩んでいる方がたくさんいらっしゃいます。

　また、先日ニュースになったように、患者さんによってはインプラント治療を受けたものの、トラブルが出て困っている方も大勢いらっしゃいます。インプラントは優れた治療法ですが、盲目的にその効果を信用するのは危険です。手術が必要な治療である以上は、「絶対に成功する」とか、「誰でも大丈夫」というものではありません。

　患者さんの健康状態や医師の技量、口の中の状態に成否は左右されます。私自身の2010年までの治療成績も成功率は97.9％（手術後2年経過して違和感や不快症状などの支障なく使用できいるものを成功とした場合）で、残念ながら慎重に取り組んでいますが100％ではありません。

インプラント治療は痛いのか？痛みの程度は？ http://profile.ne.jp/w/c-118895/

2.入れ歯は安全だから良いもの？

　逆に「インプラントは危険な治療で、安全な入れ歯にするべき！」という、インプラント全否定論もちがうのではないかと思います。

　インプラントはすでに研究・開発の段階ではなく、安全性が確立され普及・成熟の段階です。そのことは多くの統計的研究や論文が証明しています。

　一方で昔からある入れ歯は新しい素材なども出てきてはいますが、使用感や構造に大きな変化はなく、相変わらず患者さんに我慢を強いる治療です。微調整を繰り返し、皆さんなんとか自分なりに使いこなしているのです。「義足では全力疾走できない」のと同じで、何でも噛める入れ歯なんてありえません。