緊急投稿 「答案の見直しって、子どもにできるの……?」 その1 - 中学校受験対策 - 専門家プロファイル

岡松 高史
岡松教育進学研究所 代表
愛知県
家庭教師

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対象:子供の教育・受験

大澤 眞知子
大澤 眞知子
(カナダ留学・クリティカルシンキング専門家)
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閲覧数順 2024年04月24日更新

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緊急投稿 「答案の見直しって、子どもにできるの……?」 その1

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子どもたちは、つまらないミスをよくします。もちろん、しない子もいますが、4教科の模擬試験を受けて、ひとつもミスがない子というのは、そうはいないと思います。

単位を書き間違えた、計算用紙から解答用紙に書き写す際に数字を書き間違えた、単純な足し算をミスした……。

私の専門の国語でも、あります。たとえば、「ぬき出す問い」で、本文はひらがななのにわざわざ漢字に直してしまった。正しく書ける漢字なのに、トメるところを勢いがついてハネてしまった。「あてはまらないものを選べ」という問いなのに、あてはまるものを答えてしまった。などとなど。

こんなミスを見つけると、「もっと注意しなさい。ホントに注意力がないんだから」「解いているときに注意できないなら、解き終わったら『見直し』なさい」などとついつい大人は言ってしまいます(ここで、「保護者は」とせずに、敢えて「大人は」としたのは、保護者だけでなく、塾や家庭教師の先生でも、こう言ってしまうケースがあるからです)。こういったミスを「注意力の欠如」などと性格のせいにしても、問題は解決しません。このことについては、いずれタイトルを改めて投稿します。今回は、時期が時期ですので、この「見直しなさい」という指示について、お話ししたいと思います。というのも、次のような理由があるからです。

コラム「緊急投稿 入試直前期の過ごし方『親は……』 その2」でもお話ししましたように「入試本番では制限時間よりはやく終わらせて、残った時間は『見直し』に充てろ」。そのために、「今は過去問を、制限時間マイナス5分で解け、マイナス10分で解け」という指示を出す塾、先生、保護者が多いようです。しかし、この指示がうまく機能してない、というよりも逆効果になっているのではないかと思っているからです。

「言ってしまう」という表現からもわかっていただけると思います(「不本意であることを表す」補助動詞「しまう」を使っていることから)が、私は「見直して、得点を上げるのは、かなり難しい」と考えています。つまり、「見直し」で得点を上げられるのは、ごく限られた子や、指導する側が明確な指示を出した場合に限られる、と思っているのです。

入試が近づいてくると、私は自分が指導している子に、一通り問題を解き終えたあと、「じゃあ、あと5分あげるから、見直してごらん」と指示を出してみるようにしています。とりあえず「どのようにして『見直す』か」ということは言わずにです。

これは、その子が「見直す」ことができるかどうかを見てみるためです。

するとほとんどの子は、「見直しなさい」と言っているのに、解答欄が空欄になっている部分を一所懸命「埋めよう」とします

たとえば、漢字の書き取りの「改装」の「装」が思い出せないと、「ソウ」という読みの漢字を、「創」「送」「層」「総」「相」など、思いつくまま書き出す子がいます。また、「読み取った内容をまとめて答える記述の問い」の部分が空欄になっている子は、その空欄になっている解答欄を「ジッと」にらんでいたりします。いくらにらんでも、多分答えは浮き出てこないと思いますが。あるいは、「ぬき出して答える問い」の部分が空欄になっている子は、本文のあちこちを思いつくまま「拾い読み」をして、答えを探そうとします。そして、いずれも解答欄には何の変化もなく、5分が過ぎます。結局、5分あっても得点は全く上積みされていません。ごくまれに、正しい漢字と巡り会う、ぬき出すべき場所を見つけだすこともあり、若干の得点のアップがある場合があります

また、「解答欄がすべて埋まっている子」の場合、あるいは、埋まっていない部分がある子に「空欄はひとまずおいておいて、答えが書いてある問いを『見直し』てごらん」と指示を出した場合、子どもたちは、およそ、次のような行動を取ります。

まず、解答用紙をまるで賞状を持つように両手で持ち、ながめるというものです。文字通り「見ている」わけです。そのあとにとる行動としては次のようなケースが見られます(ひとつの行動で終わってしまう子もいれば、次に挙げる行動パターンのなかの複数の行動をとる子もいます)。

ひとつめは、そのまま5分が経過する場合です。この場合は、何も指示を出さなかったケースと同じく、ただ5分が経過したわけですから、得点はアップせず、5分を有効に活用したことにはなりません。

ふたつめは、乱暴に書いた字を書き直す、書き取りの漢字のトメ・ハネ・ハライなどを丁寧に書き直す場合です。、本質的には答えは変えず、丁寧に「書き直す」わけです。こうすれば、とりあえず採点者の心証は良くなるでしょう。しかし、答え自体が変わっているわけではありませんから、もともとそれなりの字を書いていた場合は、得点はアップしません。最初に書かれていた字(の酷さ加減)によっては、×が○になるかもしれませんが(ただし、得点が上がるのは、「解答の内容はもともと正しかった」+「もともと書かれていた文字が判読不可能なほど酷かった」+「書き直したら、判読可能になった」場合に限られます。もともとそれなりの字を書いていた場合は、得点はアップしません。当然ですが)。また、「(採点者によっては×にされかねない)危なっかしい」漢字が、「非の打ち所がない」漢字に書き換えられた場合も、若干の得点のアップが期待できます

みっつめは、解答の不備を発見するケース、つまり、本当に「『見直し』て良かった」と言えるケースです。たとえば、「ぬき出して答える問い」で写し間違えていたことに気づく、「本文の内容を自分でまとめ直して答える記述の問い」で内容の不備に気づくといったケースです。これは、もちろん得点はアップします

最後に紹介するケースは、最悪のケースです。「選択肢中から選び、記号で答える問い」で、「正解は、さっき書いたこれではなく、こっちだ」と早合点し、正しかった答えをわざわざ誤った答えに書き直してしまうケースです。先ほどのケースとは逆で「『見直し』なんか、しなければ良かった」と言えるケースです。

このように見てくると、いずれのケースも、得点が上がるかどうか、どころか、下がるかどうかは、偶然に左右されていることがわかると思います。

子どもたちに、ただ「見直せ」と指示を出した場合は、「見直した結果、得点が『上がる』か、『変わらない』か、『下がる』かは、『偶然に近い形で』決まることが多い」ということです。

ですから、まず保護者の方は、自分が(つまらないミスを発見した怒りにまかせて)ただ「見直せ」とだけ言っていないかどうかをふり返ってください。そして、塾の先生や家庭教師に、お子さんが安易にただ「見直せ」と言われていないかどうかを確認してください。

次の「答案の見直しって、子どもにできるの……? その2」では、どんな子なら「見直せ」と指示を出していいか、出すとしたらどんな指示を出せばいいのか、についてお話ししたいと思います。

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