若い演奏家の登竜門の日本管打楽器コンクールの打楽器の部門が今年開催されました。1回のコンクールで管楽器と打楽器の中から3~4種類がおこなわれ、打楽器の部門は3年振りの開催となりました。
今回のコンクールでの私の注目点は
(1)前回までの「打楽器部門」から、今回は「パーカッション部門」と「マリンバ部門」にわけて開催
(2)課題曲には定番曲が多くラインナップされていた
という点です。
1点目の部門分けですが、世界クラスのコンクールではパーカッションのソロコンクールとマリンバのソロコンクールでは分かれているものも多くあります。マリンバだけでも独立して世界的なコンクールが開催され、日本人演奏者が優勝したものも多くあります。部門を分けるというのは時代の要請でもあると思います。マリンバはピアノ教室やヴァイオリン教室のように小さいころからソロのレッスンで楽器を始めた方も多くおられ、ソロ楽器としての認知度は年々高くなっています。
2点目の課題曲についてですが、このコンクールは「1次・2次・本選」の中でそれぞれ課題曲が設けれれ、2次では課題曲に加え任意の自由曲の演奏もあるので、短期間の中で膨大な曲数を演奏しなければなりません。パーカッション部門の課題曲では本選での A.ジョリベ「打楽器協奏曲」や2次での M.カルス「4つのインベンション」のように私が学生の頃からの定番の曲が多くありました。打楽器独奏の曲は音楽史の中では近代・現代の曲が大半で、他の楽器に比べソロ楽器としての歴史は深くありません。新曲初演も積極的におこなっている楽器ではありますが、「超絶技巧」によっていたり「新たな奏法」「独創的な奏法」を提示する作品が多いのも実情です。その中で今回のコンクールのように定番曲を課題曲に設定するということは「打楽器としての基礎的な技術を身につけているか」という意図をくみ取ることができ、非常に意味のある選曲だと感じました。
今回のコンクールの入選者(本選出場者)にはすでにプロのオーケストラの奏者として活躍している方、CD等のレコーディングやリサイタルで活躍している方もおられ。今回のコンクールが更なる飛躍のチャンスとなることでしょう。私も会場に足を運び、生の演奏を聴きたいと思います。
【第28回日本管打楽器コンクール】
・開催日 2011年8月22日~27日
・会場
パーカッション部門:昭和音楽大学
マリンバ部門:東京音楽大学
・1位受賞者による演奏会
2011年8月31日 文京シビックシティ大ホール (尾高忠明 指揮 東京ニューシティ管弦楽団)
このコラムの執筆専門家
- 成澤 利幸
- (長野県 / 音楽家、打楽器奏者)
- 成澤打楽器音楽教室
音楽はみんなのもの
楽器の演奏は専門家からのちょっとしたアドバイスによりスムーズに上達したり音楽の奥深さに触れることがあります。ドラムやマリンバ、いろいろな打楽器のレッスンを通して皆さんのお力になれればと思います。
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