
- 海田 修平
- カイダ建築設計事務所 一級建築士事務所
- 東京都
- 建築家
対象:住宅設計・構造
注文住宅というのは施主の希望にあった住宅がオーダーメイドで設計されるものだと思いますが、
建築家が設計する場合、どうしても建築家それぞれのやり方、考え方が反映されることになります。
それは、作家性があるからというだけではなくて、
どういう経歴を経て来たかによって手法が異なるからです。
描く図面の量や、ディテールなど、設計事務所によってさまざまなのです。
同じような図面をどの設計事務所も描きますが、統一した方法というのがありません。
みんなある意味我流なのです。
もちろん、建築家の世代間による感覚の違いといったものも大きく影響します。
バブルを享受した世代の建築家の作品には未だにバブルの残滓を見て取れます。
それは、素材の色や扱い方や艶の具合などの表面的な部分と、完全に空間を統制しようとする過剰な設えです。
この感覚は景気が低迷した後に建築を始めた今の若い建築家には見られない感覚だと思います。
建築費が抑えられるようになって久しいため、設えが簡素になっていったのは必然だと思いますが、
空間を完全に統制したいという感覚も薄れていっている気がします。
テーブルや椅子、ソファーまでも品番を決めて、置く位置も指定するのは、
やりすぎだと今では誰もが思っていると思います。
雑誌などのメディアが浸透したおかげで、建主の趣味が良くなったからかもしれません。
住宅は建築家の作品でも、研究者の実験でもなく、施主とのコラボレーションです。
建築家の考えを押し付けるのではなく、
利用する人が自由に空間をアジャストするための余白を残しておくことが重要だと思います。
敢えて作り込まないような設計は、余白を設計するということなのです。
収納や設備をきっちり要望通りに作っても実際には融通が利かず、使いにくい結果になることがあります。
少しずつ生活に合わせられるような設計。
全てを建築家の枠にはめ込まないようなゆるやかな設計が、
建築家と施主のコラボレーションを生み、結果として満足いく家づくりにつながるのだと思います。
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