- 杉浦 繁
- Atelier繁建築設計事務所 代表
- 愛知県
- 建築家
対象:新築工事・施工
みなさんは高所恐怖症ではありませんか?
私は違いますが・・
あんまり、建築の設計と高所恐怖症とは関係ないように思えますが・・
実は大ありなのです。
それは、現場・・
私たちは現場監理をしなければならないのです。
現場には高いところがいっぱいなのです。
しかも超足元の悪い。
現場で実際に働いている鳶さんや大工さん達から見れば我々なんてへなちょこのへ・・でしょうが。
そこは手摺りもなければ足元も悪い、へたすると壁もなければ持つところもない。
2階建て程度ではけっこうどうってことはないのです。
これが3階・4階となると世界が変わってくる。
高層ビルなんてなると・・
足場なんて恐怖です。
よくビルの工事なんかで足場の廻りに半透明やネット状の防護シートを一面に張っているのを見かけると思うのですが・・
あれは工事中の安全をはかるためや近隣に迷惑をかけないようするために、火花とか塗料とか落下物なんかが廻りに飛ばないようにするのが第一目的です。
しかし・・
あれがないと足場なんて怖くて歩けないのです。
現場では外壁がや屋根が完成すると足場を撤去します。
これを足場をばらすと言います。
そして、足場をばらす前に我々は完成した外壁や屋根の検査をします。
工事が押している時、つまり時間的にあまり余裕がない時には、ほっとくと検査や補修の前にすぐ足場をばらしだしてしまうのです。
足場をばらす時はまずシートから撤去。
シートのない高層の足場なんてあんた・・
おいらは絶対に登らない!
頼まれたって登らない!
冗談じゃない、シートをもう一回張らないなら検査は不合格!
言っておきますが私は特に高所恐怖症ではありません。
普通の高い所はまったく平気です。
昔、まだ若かりし頃のこと。
まだ担当も何もないぺーぺーの頃・・
ろくに図面もかけない・・
現場に行ってもただ突っ立っているだけだった頃・・
ある日、上司がどこどこの現場に行くからお前ら付いて来い、なんて言われたのです。
そこは、とある15階ほどの高層ビルの現場です。
実はここで外壁か何かに問題があり検査が不合格になったのです。
そこで担当者が上司に相談し、上司が現場を見に行くことに・・
ゼネコンに負けないために頭数で呼ばれたのです。
現場に着くと上司は何も言わずに足場の階段を登り出します。
あわててゼネコンの担当者がついて行く。
まだエレベーターは稼働前・・
でもすでにリフトは撤去してしまっています。
おいおい、15階だぞ・・
足場の階段で上がるんかい・・
まじかよ・・
って言ってもしょうがないので、上司の後をついて行く。
下の方はまだシートが残っています。
だんだん上がっていくと7~8階からシートを撤去している真っ最中。
10階くらいからはシートがもうありません。
実際の話、現場でエレベーターもリフトも内部階段も使えないって時はそうあるもんじゃない。
たまたま、このときは事情が事情でタイミングが悪かった。
登るのに必死の私・・
へろへろ。
必死に登り続けていると同期の連れが前で止まってしまい、言います。
俺・・もう無理!
何が?
登れない!
は、なんで?
下・・下・・!
そこで、ふと下を見た私。
ぎぃょえー!
今まで登るの必死でまったく周りを見てなかった!
足が震える!
足下は巾30cmの穴あきまくりの薄い蹴ればひん曲がりそうな足場板だけ・・
横はぶち当たればはずれそうな短管の手摺り1本だけ・・
周りはほとんど何もない空中・・
当然ヘルメット以外安全索も何もない私達・・
階は12階、眼下は30m以上・・
これは無理!
上司は怒鳴る、早う来んか!
そこからは手摺りにしがみつきながらの命がけの登段です。
以来、私はシートのない足場には絶対に登らない!
いやはや鳶さんは凄い。
そうそう、あの時の上司も凄かった。
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