- 尾上 雅典
- 行政書士エース環境法務事務所
- 大阪府
- 行政書士
対象:企業法務
- 尾上 雅典
- (行政書士)
- 河野 英仁
- (弁理士)
3月4日に配信したメールマガジンを転載します。
和歌山県田辺市で、一般廃棄物収集運搬業務の委託を受けている企業の許可が、役員の個人的犯罪を理由に取消され、市の廃棄物収集業務の受け皿が存在しなくなったため、逆に田辺市がその企業の従業員と車両を借受けて、自ら廃棄物の回収を行うことになった という報道がありました。
asahi.com 和歌山版
http://mytown.asahi.com/areanews/wakayama/OSK201103020158.html
注目していただきたいのは、欠格要件の対象となった犯罪が、「酒気帯び運転」で、「懲役8カ月執行猶予4年」という刑罰であることです。
執行猶予が付いていますので、おそらくこの方は初犯であったと思われますが、それでも欠格要件の対象であることには違いありません。
この手の刑罰の場合、警察に逮捕された後、警察署で長期間拘留され、取調べを受けることになりますので、会社との連絡が一切取れないことになります。
犯罪をしたのが常勤の役員なら、さすがに 「あれ? ●●役員が3日も出社していないけど、どうしたんだろう?」と気にすることもできますが、
中小零細企業ではよくありがちな、一族郎党から名目上の役員として選任するといった、会社にはまったく出社しない役員がいる場合は、気づいたときには判決が確定しており、今さら役員から外しても効果なし
という救いようのないケースが実際にあります。
「執行猶予だから刑務所に行かなくて済むってことで無罪?」と思い込み、本当は欠格者なのに、素直に許可申請をしてしまい、冒頭で紹介したような許可取消の憂き目に遭う企業が本当に多いのです。
だったら嘘の申請をすれば良いじゃないか!
いえ 廃棄物処理法では、虚偽の申請をすると刑事罰の対象となりますので、それは絶対にダメです。
欠格要件に該当した場合、事後にできる対策は何もないと言っても過言ではありません。
では、欠格要件対策としてできることとは何か?
それは、大きく分けて2つしかありません。
まずは、欠格要件に該当する犯罪を起こさないこと
もちろん、犯罪を起こそうとして生活している人はほとんどいないのですが、酒気帯び運転などのように、いけないと頭ではわかっていても、出来心でやってしまう犯罪に要注意です。
その他、罰金であっても欠格要件の対象となる犯罪には、特に注意が必要です。
具体的には、廃棄物処理法や浄化槽法などの環境関連法違反は、罰金であっても欠格者になってしまいます。
環境関連法はしっかり勉強しているので大丈夫!
という企業であっても、下記の刑法犯の場合、役員が私生活において罰金の対象になった場合は、同じく欠格者になってしまいますので、そのリスクを念頭に置いておく必要があります。
具体的には、傷害や暴行などは、酔っ払った状態で起こす可能性が高い犯罪ですが、おそろしいことに罰金でも欠格要件の対象になります。
「●●役員の姿を1週間見かけないな」と噂をしていたところに
「酔っ払って喧嘩をして、警察に1週間拘留されちゃった」と、件の●●役員が悪びれずに現れ、「罰金20万円も取られたよ」という一言が出た瞬間
社長の頭は凍りつくことになります・・・
役員として傷害罪で罰金を受けた以上、●●役員は欠格者となり、その●●役員が経営に参画している企業は、廃棄物処理業を営むのにふさわしくない企業として、「自動的に」業の許可を取消されることになるからです。
役員が酔っ払って個人的に起こした事件の責任を、なぜ会社全体で取らなければいけないのか!
という悲痛な叫びを聞くことが多いのですが、
廃棄物処理法では、暴力団などの反社会的勢力を徹底的に排除するために、それらの反社会的勢力の構成員が起こしやすいと思われる、傷害罪や暴行罪を罰金刑であっても欠格要件の対象に含めています。
ウチには暴力団の構成員なんていない
と主張したいところですが、残念ながら、そのような事情が考慮されることはありません。
では、最後に残った欠格要件対策のもう一つは・・・
メールマガジンで解説したいところですが、間違って悪用されると大変危険な知識であるため、あえてこのメールマガジンでは解説しません。
「判決が確定するまでのスピード勝負」というヒントだけを挙げておきます。
一番重要であり、唯一の予防策といえるのは、第1の対策 「欠格要件に該当する犯罪を起こさないこと」に尽きます。
欠格要件の対象となる犯罪や条件などは、下記のサイトにまとめてありますので、一度ご参照いただき、危険性をまず認識しておいてください。
すべてはそこから始まります。