もしもの時の「備え」が「逆転」するとき - 保険選び - 専門家プロファイル

高津 嘉邦
代表取締役
兵庫県
保険アドバイザー

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対象:保険設計・保険見直し

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もしもの時の「備え」が「逆転」するとき

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私が保険の仕事に就いて間もないころ、田中さん(仮名)というお客様から相談をいただきました。

田中さんは、私がお会いしたとき、既に70歳を超えているお客様でした。
「もしも」のときを考えて、20代の頃から10年毎に内容を見直すタイプの保険にご加入されていました。
そして、5回目の更新の案内が来たそうです。

保険に加入することを決めた当時、田中さんは「もしも」のときの備えだからという理由で、
そこまで深く考えることなく、ある保険会社の営業マンが「日々の負担が少ない」と説明してくれた商品にご加入されました。

皆さんご存知のとおり、日本の保険の多くは、年齢が上がれば上がるほど、保険料も上がっていく仕組みになっています。
当然、田中さんの保険も10年に一度更新が行われ、その度に保険料は上がっていきました。

そして、月日が流れ、70歳になった田中さんはある日、何気なく保険を見直している際に、気付いてしまったのです。

「今まで支払ってきた保険料の総額が、『もしも』の時の保障金額を超えてしまった。」ということに。
保険についてご存知の方はお分かりだと思いますが、この場合、結論としては、険料の負担を少しでも下げるために「保障を下げる」しかないのです。
当時の私も、もちろん、田中さんに対してその旨を伝えました。

それを聞いた際の、田中さんのなんともいえぬ表情は今でも忘れることはありません。

保険というものは、「不測の事態(リスク)への備え」であるといわれています。
不測の事態が起こった際には、残された遺族へ保険金が支払われます。
では一方で、不測の事態が起こらなかった際にどうなるかというと、
「保険を使うような事態が起こらなくて良かった」と何も起こらなかったことを正当化することになるのです。
なぜなら、人間は自分の「過去の行動」を正当化したいという欲求を持っているのですから。

保険は「愛」であるとか、「心の安心」を買うものだと言われています。
だからといって、多くの人が、その「愛」や「心の安心」に対して、あまりに簡単にお金を支払ってしまっているのではないでしょうか?
頑張って働いて得た収入を毎月、何十年も支払っていくことを考えたら、もっとしっかりと、保険について考える必要があるのではないでしょうか?
ちなみに、余談ですが、私が「保険代理店」という形で起業を志したのは、田中さんとの出会いが大きなきっかけです。

もし、私が田中さんの若い頃に出会ってい「たら」。
そのときに、こういった保険の考え方をしっかりと伝えることができてい「れば」。
人生に「たられば」は禁句ですが、田中さんの表情は私にそういった感情を想起させるに十分なものでした。
そう考えたら、「自社の保険の売り方」を考えることに注力するよりも、「そもそも、保険とは人生を豊かにするために非常に役立つものである」ということを、より多くの方に伝える仕事を生業としたい、と。
今後もより多くの方に対して、こうした新しい保険の考え方についてお伝えしていきたいと考えています。

※「美楽」(2010年7月)に執筆したもの

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