
- 尾上 雅典
- 行政書士エース環境法務事務所
- 大阪府
- 行政書士
対象:企業法務
- 村田 英幸
- (弁護士)
- 尾上 雅典
- (行政書士)
1月14日に配信したメールマガジンを転載します。
メルマガではまだ解説しておりませんでしたが、昨年12月17日に、廃棄
物処理法施行令改正に関するパブリックコメントの募集結果が発表されました。
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=13273
パブリックコメント(以下、パブコメ)を募集した結果、施行令の改正内容
が大幅に変わるということは無かったのですが、「意見に対する考え方」の中
に、サラッと環境省の重要な発言が盛り込まれていました。
今回のメルマガでは、その中から3つをピックアップしてご紹介します。
○事業場外の保管届出に関して
(意見1)
「自治体において
1.自社が排出した産業廃棄物であること、
2.保管場所が産業廃棄物処理基準に適合する保管場所であること
が確認できなければ、届出を受理しないべき。」
という意見に対して、環境省は次のように答えています。
(環境省)
「届出が形式上の要件に適合している場合は、当該届出が行政庁の事務所に到
達したときに手続上の義務は履行されております。
形式上の要件を満たしている届出が到達しているにもかかわらず、これを受
理しないことは違法であると考えます。」
※よくぞ言ってくれた 環境省よ!! ヽ(^。^)ノ
まぁ 環境省は、行政法上常識とされる見解を述べただけなのですが、肝心
の地方行政レベルでは、イロハのイの知識である、届出の性質に関して誤解、
あるいは曲解している事例が多いため、このような場面に遭遇したら、この
パブコメ結果を印刷し、「それは違法ですよ」と静かに指摘しましょう。
(意見2)
「全ての産業廃棄物を届出対象とするべき。」
(環境省)
「今後、建設工事に伴い生ずる産業廃棄物以外の廃棄物についても問題が大き
くなった場合に対象として追加することは考えられますが、まずは、問題が特
に大きな建設工事に伴い生ずる産業廃棄物に限定するべきと考えます。」
※裏読みすると、もし大きな不法投棄が発生し、製造業などから出た廃棄物が
大量に捨てられるような事件が起これば、建設廃棄物以外にも届出の網の目を
かぶせますよ、という布石とも言えます。
○建設廃棄物の処理に関する例外
(意見3)
「通知『建設工事から生じる産業廃棄物の処理に係る留意事項について』(平
成6年衛産82号)は廃止されるのか明らかにするべき。
また、当該通知で認めている『建設工事のうち他の部分が施工される期間と
は明確に段階が画される期間に施工される工事のみを一括して請け負わせる場
合』については,これまでどおり例外として下請けが排出事業者になることを
認めるべき。」
(環境省)
「法改正を踏まえ衛産82号通知は廃止する予定です。
また、法律上元請業者は『注文者から直接建設工事を請け負った建設業を営
む者』とされています。」
※ここ 非常に重要な発言です。もう一度繰り返します。
「法改正を踏まえ衛産82号通知は廃止する予定です。」
法律の条文で、建設廃棄物の排出事業者は元請業者と明記した以上、それと
矛盾する内容である、「衛産82号通知」が効力を持たなくなるのも当然です。
従って、法律学の教科書にも載っている、「フジコー裁判」で生じた争いも
2010年の法律改正によって一挙に解決されることになりました。
具体的には、下請は、現場での保管と少量かつ特定の条件にあてはまる運搬
以外では、廃棄物の排出事業者となる余地がなくなりました。
環境省が衛産82号通知を廃止せずとも、法律の規定が行政通知に優先しま
すので、「通知が廃止されてないから、下請でも排出事業者になるのだ」とい
う理屈は通用しなくなります。
この他にも、色々と突っ込みどころのある受け答えが多いので、関心がある
方は、是非一度ご自身でパブコメの募集結果を確認しておいてください。
30枚もあるので大変そうに見えますが、意見が抽象的、かつ冗長なものが
多いだけで、環境省の回答は至極明快です(良きにつけ悪しきにつけ)。