- 羽柴 駿
- 番町法律事務所
- 東京都
- 弁護士
対象:民事家事・生活トラブル
- 榎本 純子
- (行政書士)
控訴審判決は、F運転手が黄色信号を見た位置を西側停止線手前約20−30メートルと認定し、その時点で急ブレーキをかけても停止まで約43メートルを要するので交差点手前では停止できなかったと認めました。A君の証言については「歩行者用信号は、まだ青色表示に変わっていなかった疑いが濃く、被害児童(B君)についても、青色表示に変わる直前に横断を開始した可能性があることは否定できない」と述べました。すなわち、F運転手の言い分を基本的に認めるものでした。
しかしそれでもF運転手に過失があったとされたのは、前回紹介した検察官の新しい主張が認められたからです。ただ、執行猶予付きとなったのは、F運転手のような運転がかなり一般的に行われていることを考慮し、過失はあるがさほど悪質なものとはいえないと判断されたからではないかと思われます。
私は、有罪判決ではあるものの、最も肝心の事実認定については当方の主張を基本的に認めてくれたもので評価できると考えました。何よりも執行猶予付きの判決を得られたことは、被告人にとっては実刑判決に比べ、天と地ほどの差があるものです。F運転手も控訴審判決は自分の言い分を基本的に聞きいれてくれたのでこれ以上争わなくていいという態度をとりましたので、結局上告はしないことにし、この控訴審判決が確定しました。F運転手は、その後結婚して家庭を持ち、現在は元気に暮らしています。
(次回へ続く)