建築の普遍性とは - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

津田 朋延
株式会社sunia 一級建築士事務所 一級建築士/京都精華大学建築学科・講師
建築家

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対象:住宅設計・構造

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建築の普遍性とは

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先日、とある方に「日本の建築と、海外の建築ってなんか違うんですが、何が違うん
ですかね・・・・?」っていうお話しを伺いました。


その時は「あらゆる物のスケールの基準が違うから、扉の枠やらあらゆるパーツの
ディテール(詳細部分/こまかい部分のデザイン)の違いが集積されてそう見えるのでは・・・」
って感じで曖昧にお答えした気がします。

でも今さらですが、その答えは多分、、「共に生きる建築に対しての時間の考え方の違い」
って、はっきりとお答えできます。

日本の住宅は、いろんなことで合理化、規格化が発達しています。

例えば、あなたの家の扉の枠の巾は、たぶん25mm(2.5cm)でしょう。
扉の厚みは36mmか、もしくはそれより小さいかも知れません。
天井の高さは2.4m、窓の高さは2.0mなどなど、、あらゆる部分は規格・製品化されています。

ただこの規格・合理化は日本にはずっと昔からある建築の文化でもあります。
日本の一般的な木造住宅で使われる、910mm×1820mm(サブロク板)の材料寸法は
尺間法の名残ですし、安藤忠雄の建築でも、基本はこのサブロクの寸法によって納められて
います。

僕はこの規格化された製品を使うこと自体には、反対していません。
製品化されたものを使うことで、安価に必要十分な品質をキープすることができます。

むしろ問題なのは、それらのものを吟味せずに、当たり前のように組み合わせ、
工業製品のパズルのような建築をつくってしまうことは憂うべきことと思います。

規格化というものは、建築のトータルで制御されてこそ、意味があるものだからです。
かつてル・コルビュジェが、モデュロールという黄金比を用いた規格寸法(定規)を
発案しましたが、彼の目的は庶民の劣悪な住環境を改善し、富裕層のためだけに
あった建築をより多くの人のものとするためのものでした。

今、量産(!)されている住宅をはじめ、たくさんの建築は、製品の組合せに終始して
いるものがたくさんあります。
これらを設計し、施工している人たちの多くは、扉の枠の寸法のことなど考えたこと
などないことでしょう。
また、扉の枠や巾木や窓廻りの額縁(部屋内側の木の部分)が、なぜ必要なのかを考えた
こともないかも知れません。

これらはただあって当りまえなのではなく、また施工をするために必要なのでもなく、
それぞれには重要な働きがあります。だから、生活するために必要なのか、空間の見え方を
美しくするために、小さくしたり、なくしてしまったりするべきなのかを、「デザイン」する必要が
あります。

同じ製品を使った建築でも、いろんなパーツの歴史や役割を知った上で選択され、そういった
部分的なところにまで思想のないものは、はたして「長期優良住宅」と言えるのでしょうか?

日本の法律までもを含んだ制度自体が、「建築のもつ時間的な要件」について、もっと
思想的な考えとなることを、僕は望みます。

次の世代に残していきたい建築を、もっとポジティブになれるほんとうの価値・財産を残して
いきたいと思います。

建築のキーワード、それはやっぱり「普遍性」です。

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