風の流れを考える - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

野平 史彦
株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
千葉県
建築家

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対象:住宅設計・構造

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風の流れを考える

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設計の作法 大きな木の下の家
「大きな木の下の家」は、無事に基本設計が終わり、実施設計に入った。
しかし、基本設計と実施設計の区別はどこでつけるのか?
基本設計が終わったと言っても、実際にプランは最後の最後まで変更される。
基本設計の終わりとは、単に1/100のプランが終わって、倍のスケールのプランに入る、
という違いでしかないのかもしれない。

いずれにしろ、基本的な形はなんとなくできて、
それでは、実際にそれをどう「納めてゆくか、、」というのが、実施設計である。

模型を眺めている施主は、打ち合わせの度に疑問を投げかけてくる。
今回は、「風の通り道」について。
風の通り道は、確かに計画の基本である。
今回のこの平屋の家のプランでは、南北に風の通り道がないのではないか?という疑問。
実際に、キッチンの裏にはマルチ収納があり、LDから北に抜ける道がない。
ここでは、キッチン裏のカップボードの上面を抜き、マルチ収納の窓を開放して、
南北の風の流れを作っている。
キッチンがガスレンジなら、この手は避けたいが、IHヒーターなので良しとした。
即ち、ガスレンジの場合、油物の料理をすると、油の粒子が風の流れに乗ってマルチ収納に入り、
衣類を油臭くしてしまう。
IHの場合はその心配が少ないので、良しとした訳である。

風の流れは、平面的に計画する、と同時に、
立体的に計画する必要がある。
即ち、インテリアの一番高い所に開放できる開口部を設ける。
こうすれば、風のない日でも上下の温度差によって
自然換気が促進される。

この計画では、リビング上部に天窓のベルックスウィンドウを垂直設置し、1カ所は手動オペレーターで開閉し、もう1カ所は電動で開閉する。
電動のものはいつか必ず壊れるのでできるだけ使いたくなかったが、大きな開口を開けたかったので、やむなく使用することとした。
これは、施主にはよく説明しておかなければならない。