- 尾上 雅典
- 行政書士エース環境法務事務所
- 大阪府
- 行政書士
対象:企業法務
- 尾上 雅典
- (行政書士)
- 河野 英仁
- (弁理士)
地方ごとに異なる申請書類の問題
(第1回目)地方自治体の規制運用の問題
(第2回目)廃棄物流通の阻害要因となっている規制
(第3回目)リスクコミュニケーションのあり方
の続きです。
中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会 廃棄物処理制度専門員会において、現行の廃棄物処理制度の問題点の一つとして、「地方自治体の運用」が議論されました。
地方自治体の運用
住民同意や産業廃棄物の流入規制などの、産業廃棄物の円滑な処理を阻害している地方独自の規制を改善するべき
申請様式や添付書類、法の運用などが地方自治体ごとに異なる状況を改善するべき
というものです。
今回のコラムでは、「地方ごとに異なる申請書類の問題」について解説します。
同じ許可なのに、なぜ申請書類が異なるのか
産業廃棄物収集運搬業の許可申請を、同時に複数の自治体にしたことがある方は、次のような疑問を持ったことがあるはずです。
「同じ収集運搬業の許可なのに、自治体によって、なぜこんなに必要書類が異なるのか?」
具体的な事例を一つ挙げると
新規で開業される方が一番困るのは、「中間処理業者の許可証のコピー」ではないでしょうか。
許可を申請するということは、現在許可を持っていないということです(当たり前)。
許可を持っていない状態では、産業廃棄物の収集運搬をすることはできませんので、取引先を開拓すること自体が困難です。
廃棄物処理法も、無許可業者への処理委託に対し厳罰を科していますし、
「許可はまだ取っていませんが、御社の廃棄物処理を任せてもらえませんか?」と営業をかけるわけにもいきません。
そんな状態で、「中間処理業者の許可証のコピーをもらって来い」と強制されても、そもそも中間処理業者は、収集運搬業者の顧客ではありませんので、簡単には許可証のコピーは手に入りません。
一昔前なら、許可証のコピー1枚を入手するために、中間処理業者から「ウン万円」という金額を要求される場合があったそうです。
有名な「フジコー裁判」も、行政指導が訴訟の原因というよりは、許可証を入手するのに60万円程度の出費がかかったことがきっかけなのではないでしょうか。
それに、収集運搬業とは、排出事業者が指定した中間処理業者の所へ廃棄物を運搬する事業です。
収集運搬業者が独自に中間処理業者を選定するわけではありません。
そうである以上、収集運搬業の許可申請書に、中間処理業者の許可証のコピーを添付させる意味はまったくありません。
行政が、いままでこのような書類の添付を求めていたのは、
「申請者に事業を行う能力があるかどうかを審査するため」という理屈に基づいていました。
しかし、上述したように、実際には申請者の能力とまったく関係ない書類(しかも、簡単には入手できない書類!)が多いのが現実です。
遅ればせながら、この道理に気がつき
中間処理業者の許可証のコピーを添付しなくてもよい自治体が現れました。
大阪府内の5行政(大阪府、大阪市、堺市、東大阪市、高槻市)がそうです。
環境省も、申請書類の合理化を通知していますが、それを取り入れるかどうかは各自治体の裁量次第です。
通知を受けても、従来どおりの扱いを継続している自治体もたくさんあります。
この現状、すぐには変化しないかもしれませんが、申請者が声を上げ続けることで、徐々に流れを変化させることは可能です。
諦めずに、声を上げ続けることが不可欠ですね。
運営サイト 産業廃棄物許可コンサルティングセンター
著書 「最新産廃処理の基本と仕組みがよ〜くわかる本」