- 野平 史彦
- 株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
- 千葉県
- 建築家
対象:住宅設計・構造
しかし、それは大きな誤解である。
設計に入る前に、敷地を見て、施主の要望条件を聞いて、プラン作成に入る訳だが、
この段階で出せるプランというのは、「たたき台」でしかない。
この「たたき台」を前にして、具体的に施主の要望を聞き出してゆくことになる。
それを何度も何度も繰り返して、施主の声にならない声を聞き出してゆく、という作業が、「基本設計」というものかもしれない。
だから、基本設計を進めている間の設計者というのは、どちらかと言えば、「カウンセラー」に近いのかも知れない。
こうして、施主の要求が満たされるまで、とことんプランを作り替えてゆく訳だが、施主の要求が満たされたプランができた段階で、基本設計が終わる訳ではない。
設計者としては、「施主の要求を満足させる」という段階から、「施主の感動が得られる」段階まで引き上げる作業が必要である。
カウンセリングは、施主の感動を呼び起こすための地道な作業であるとも言える。
さて、「大きな木の下の家」は、3階目のプレゼンとなった。
求められる機能的な構成はだいたい掴めたので、この立地におけるこの家の魅力を引き出さなくてはならない。
45度に振ったリビングは、ケヤキの大木を真っ正面から捉える向きになっており、ある種の象徴的な空間を演出している。