介護職員のエンゲージメント向上戦略:『働きがい』と『働きやすさ』を両立する職場環境とは - 経営コンサルティング全般 - 専門家プロファイル

ユーザー操作
株式会社アースソリューション 代表取締役
東京都
経営コンサルタント
03-5858-9916
※お電話の際は「"プロファイル"を見た」とお伝え下さい。

注目の専門家コラムランキングRSS

対象:経営コンサルティング

寺崎 芳紀
寺崎 芳紀
(経営コンサルタント)
寺崎 芳紀
寺崎 芳紀
(経営コンサルタント)
寺崎 芳紀
寺崎 芳紀
(経営コンサルタント)
荒井 信雄
(起業コンサルタント)

閲覧数順 2025年11月15日更新

専門家の皆様へ 専門家プロファイルでは、さまざまなジャンルの専門家を募集しています。
出展をご検討の方はお気軽にご請求ください。
取材・講演・書籍執筆依頼のお問い合わせ

介護職員のエンゲージメント向上戦略:『働きがい』と『働きやすさ』を両立する職場環境とは

- good

  1. 法人・ビジネス
  2. 経営コンサルティング
  3. 経営コンサルティング全般

介護業界は、超高齢社会の進展と共にその重要性がますます高まる一方で、深刻な人材不足という大きな課題に直面し続けています。高い離職率や採用の困難さは、多くの介護事業所にとって経営上の大きな悩みであり、サービスの質の維持・向上にも影響を及ぼしかねません。この状況を打開するためには、単に人材を確保するだけでなく、職員が組織に対して愛着を持ち、自律的に貢献しようとする意欲、すなわち「エンゲージメント」を高めることが不可欠です。そして、このエンゲージメントを育む上で鍵となるのが、「働きがい」と「働きやすさ」という二つの要素を高い次元で両立させる職場環境の構築です。本稿では、介護職員のエンゲージメント向上のための具体的な戦略について考察してまいります。


まず、介護職員のエンゲージメントがなぜこれほどまでに重要なのでしょうか。エンゲージメントが高い状態とは、職員が自身の仕事に誇りを持ち、組織の理念や目標に共感し、その達成に向けて積極的に能力を発揮しようとする状態を指します。これは、単に職場に満足しているという状態を超え、組織と個人が互いに成長し合える関係性が築かれていることを意味します。エンゲージメントが高い職場では、職員の離職率が低下し、定着率が向上する傾向にあります。これは、人材確保が困難な介護業界において極めて大きなメリットです。さらに、エンゲージメントの高い職員は、利用者一人ひとりに対してより質の高い、心のこもったケアを提供する傾向があると言われています。その結果、利用者の満足度向上にも繋がり、事業所の評判や信頼性の向上にも貢献します。また、チームワークが促進され、職場全体が活性化することで、業務改善へのアイデアが生まれやすくなったり、生産性が向上したりといった効果も期待できます。逆に、エンゲージメントが低い職場では、これらのメリットは得られず、むしろ職員の意欲低下、サービスの質の低下、高い離職率といった悪循環に陥ってしまう危険性があります。


では、エンゲージメントを高めるための「働きがい」とは具体的に何を指すのでしょうか。一つは、仕事そのものの意義や魅力を職員自身が深く実感できることです。介護の仕事は、利用者の生活を支え、時には人生の最期に寄り添うという、非常に尊い役割を担っています。利用者やその家族からの「ありがとう」という言葉は、何物にも代えがたい喜びとなり得ます。こうした日々の経験に加え、事業所として明確な理念やビジョンを掲げ、それを職員と共有し共感を育むことが重要です。また、個々の職員の頑張りや成果を認め、称賛し合う文化を醸成することも、仕事への誇りや達成感に繋がります。


次に、「働きがい」を感じるためには、成長とキャリアアップの機会が提供されることも不可欠です。介護の専門性は日々進化しており、職員が常に新しい知識や技術を学び続けられる環境が必要です。質の高いOJT(職場内研修)やOff-JT(職場外研修)の機会を提供し、介護福祉士やケアマネジャーといった資格取得を積極的に支援する制度を設けることは、職員のスキルアップとモチベーション向上に直結します。さらに、明確なキャリアパスを提示し、個々の職員が将来の目標を持って働くことができるようにすることも大切です。定期的な面談を通じて目標設定を行い、その達成度合いについて建設的なフィードバックを行うことで、着実な成長をサポートします。時には、新しい役割や責任ある仕事を任せることで、職員の潜在能力を引き出し、さらなる成長を促すことも有効でしょう。


そして、専門職としての誇りを持ち、主体的に仕事に取り組める環境も「働きがい」に繋がります。介護職員は専門的な知識と技術を持つプロフェッショナルです。彼らの意見や提案を尊重し、ケアの方針決定に参画できるような風通しの良い職場風土を作ることが求められます。また、画一的なマニュアル対応だけでなく、個々の利用者の状況に応じた最適なケアを実践できるよう、一定の裁量権を与えることも、自律性と責任感を育む上で効果的です。チームでケアを提供する際には、それぞれの専門性や役割を明確にし、互いに尊重し合いながら協働できる体制を整えることが重要となります。


一方で、「働きやすさ」の向上もエンゲージメントには欠かせない要素です。どれほど仕事にやりがいを感じていても、心身ともに疲弊してしまうような環境では、長く働き続けることは困難です。まず、適切な労働時間管理は基本中の基本です。過度な残業を常態化させず、有給休暇を取得しやすい雰囲気を作ることは、職員の健康維持とワークライフバランスの確保に繋がります。また、十分な休憩時間を確保し、リフレッシュできる休憩スペースを整備することも大切です。近年では、ICTの導入や介護ロボットの活用によって、記録業務の効率化や移乗介助などの身体的負担を軽減する取り組みも進んでおり、こうした投資は「働きやすさ」の向上に大きく貢献します。さらに、清潔で安全、かつ快適な物理的職場環境を整えることも、職員のストレス軽減に繋がります。


人間関係の良好さも「働きやすさ」を左右する重要なポイントです。上司や同僚と気軽にコミュニケーションが取れ、困ったときには相談しやすい雰囲気は、精神的な安定感をもたらします。定期的なミーティングの開催や、1on1ミーティングの導入など、意図的にコミュニケーションの機会を設けることも有効です。また、いかなる形のハラスメントも許さないという断固たる姿勢を示し、実効性のある防止対策と相談窓口を整備することは、職員が安心して働ける職場環境の基盤となります。時には、チームビルディングを目的としたレクリエーションや社内イベントなどを通じて、職員同士の連帯感を深めることも良いでしょう。特に管理職には、部下の話を丁寧に聴き、共感し、公平な態度で接するといったリーダーシップが求められます。


さらに、福利厚生の充実や多様な働き方への対応も、「働きやすさ」を高める上で考慮すべき点です。経済的な安定は生活の基盤であり、給与水準の向上や各種手当の充実は、職員の生活を支え、仕事への安心感に繋がります。また、育児や介護といったライフステージの変化に対応できるよう、時短勤務やフレックスタイム制度、あるいは副業の容認など、柔軟な働き方を可能にする制度設計も重要です。育児休業や介護休業を取得しやすい雰囲気を作り、スムーズな職場復帰を支援する体制を整えることも、長期的な人材確保に繋がります。職員の心身の健康をサポートするための健康診断の充実やメンタルヘルスケアの提供といった「健康経営」の視点も、これからの時代にはますます重要になるでしょう。


これらの「働きがい」と「働きやすさ」を高めるための取り組みは、経営層の強いコミットメントとリーダーシップがあって初めて実効性を持ちます。定期的にエンゲージメントサーベイなどを実施して職場の現状を客観的に把握し、そこで明らかになった課題に対して真摯に向き合い、継続的に改善活動を行っていくPDCAサイクルを回すことが不可欠です。そして何よりも、職員一人ひとりの声に耳を傾け、それを職場環境の改善に活かしていくという姿勢が、信頼関係を築き、エンゲージメントを高める土壌となるのです。


介護職員のエンゲージメント向上は、一朝一夕に達成できるものではありません。しかし、地道な努力を継続していくことで、職員がいきいきと働き、誇りを持って質の高いケアを提供できる職場環境は必ず実現できます。そして、そのような職場こそが、深刻な人材不足を乗り越え、これからの日本の介護を支え、その未来を明るく照らしていく原動力となるのではないでしょうか。


 |  コラム一覧 | 

カテゴリ このコラムの執筆専門家

(東京都 / 経営コンサルタント)
株式会社アースソリューション 代表取締役

介護事業所の開設から運営まで、オールワンでお手伝いいたします

有料老人ホーム施設長・訪問・通所介護管理者・老健相談員、事業所開発等の経験を活かし、2007年7月に弊社を設立しました。介護施設紹介サービスをはじめ、介護事業所の開設・運営支援等を行い、最近では介護関連の執筆活動にも力を入れております。

03-5858-9916
※お電話の際は「"プロファイル"を見た」とお伝え下さい。

このコラムに類似したコラム

総合事業の見直し議論 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2020/09/21 08:00)

令和2年度第2次補正予算が閣議決定 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2020/05/29 08:00)

地域包括ケアシステムの深化と事業所の役割 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2025/05/24 11:00)

小規模事業所でもできる!BCP(事業継続計画)策定のポイント 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2025/05/25 11:00)