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閲覧数順 2025年05月12日更新

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なぜ介護事業で情報セキュリティ対策が「待ったなし」なのか? ~利用者の信頼と事業継続のために~

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介護サービスの提供において、「情報」はなくてはならない基盤です。利用される方一人ひとりに適切なケアを提供するためには、氏名や住所といった基本的な情報はもちろん、病歴や心身の状態、服薬状況、家族構成、生活歴に至るまで、非常に詳細でデリケートな情報を把握する必要があります。これらは、個人情報保護法で「要配慮個人情報」として特に慎重な取り扱いが求められる、極めて機密性の高い情報です。質の高いケアを提供するための根幹であるこの「情報」は、同時に、ひとたび外部に漏洩したり、不適切に扱われたりすれば、取り返しのつかない事態を招く重大な「リスク」でもあります。だからこそ、情報セキュリティ対策は、単なるIT部門の問題や技術的な課題ではなく、介護事業の根幹を揺るがしかねない経営課題として、今まさに「待ったなし」で取り組むべき重要事項なのです。


介護事業者は、個人情報保護法を遵守する義務を負っています。特に、先ほど触れた「要配慮個人情報」については、本人の同意なく取得することや第三者に提供することが原則として禁止されるなど、より厳格なルールが定められています。さらに、厚生労働省が示す「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」など、業界の実情に合わせたガイドラインも存在し、これらに沿った適切な情報管理体制を構築・運用することが求められています。介護サービスは、何よりも利用者の方々やそのご家族からの「信頼」の上に成り立っています。その信頼は、日々の丁寧なケアの提供はもちろんのこと、預かっている大切な個人情報が、安全かつ適切に管理されているという安心感によって支えられています。情報を適切に管理することは、法律やガイドラインを守るという法的・社会的な責任であると同時に、利用者との信頼関係を維持・発展させていくための大前提なのです。これは努力目標ではなく、事業を行う上での必須要件と言えるでしょう。


では、もし情報漏洩が発生してしまった場合、どのような影響が考えられるでしょうか。まず、最も深刻なのは、利用者の方々やそのご家族への影響です。プライバシーが侵害されることによる精神的な苦痛は計り知れません。漏洩した情報が悪用され、詐欺や嫌がらせといった二次被害に遭うリスクも考えられます。これは、最も守るべき対象である利用者の尊厳を傷つけ、信頼を根底から裏切る行為に他なりません。事業者自身が受けるダメージも甚大です。長年にわたって地域で築き上げてきた信用は一瞬にして失墜し、既存の利用者が離れていくだけでなく、新たな利用者の獲得も困難になります。情報漏洩の原因調査や利用者へのお詫び、再発防止策の構築などには多大なコストと時間がかかり、場合によっては損害賠償請求に発展することもあります。行政からは指導や勧告、業務改善命令が出され、悪質な場合には事業許可の取り消しといった最も重い処分が下される可能性すらあります。こうした信用の失墜、経済的損失、行政処分が複合的に作用し、事業の継続そのものが危ぶまれる事態に陥ることも決して珍しくありません。


情報セキュリティを取り巻く状況は、年々厳しさを増しています。サイバー攻撃の手口はますます巧妙化・悪質化しており、医療機関や介護事業所も決して例外ではなく、重要な情報を狙った攻撃の標的となっています。また、ICT化の進展やテレワークの導入は、業務の効率化に貢献する一方で、新たなセキュリティリスクを生み出す側面もあります。さらに、こうした外部からの脅威だけでなく、内部の従業員による不注意なミスや、悪意を持った不正行為による情報漏洩も後を絶ちません。「うちは大丈夫だろう」「何かあってから対策すればいい」という考えは、もはや通用しません。問題が発生してからでは手遅れなのです。情報セキュリティ対策は、コストではなく、未来への「投資」と捉えるべきです。


利用者の尊厳とプライバシーを守り、地域からの信頼を維持し、そして安定した事業を継続していくために、情報セキュリティ対策は、まさに事業の生命線と言えます。それは経営層だけ、あるいは現場スタッフだけが取り組めば良いというものではありません。経営トップの強いリーダーシップのもと、組織全体が一丸となって、日々の業務の中に情報セキュリティの意識を根付かせていくことが不可欠です。今、この瞬間から、「まだ大丈夫」ではなく「今すぐ始める」という意識を持って、対策に取り組むことが強く求められています。


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(東京都 / 経営コンサルタント)
株式会社アースソリューション 代表取締役

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有料老人ホーム施設長・訪問・通所介護管理者・老健相談員、事業所開発等の経験を活かし、2007年7月に弊社を設立しました。介護施設紹介サービスをはじめ、介護事業所の開設・運営支援等を行い、最近では介護関連の執筆活動にも力を入れております。

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