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閲覧数順 2024年04月27日更新

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最近見聞きする、太陽光発電の「悪者説」について

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普及が始まった当初は「環境とお財布に優しい」として時代の寵児になった太陽光発電ですが、実際に普及が進んでくるとさまざまな意見や憶測が飛び交うようにもなりました。そんななかで気になるのが、最近ネットなどで囁かれている太陽光発電の「悪者説」です。

太陽光発電は夢の再生可能エネルギーというイメージをまとって普及が進んだ部分がありますが、今度はそれに対して懐疑的な見方が散見されるようになりました。デマや根拠が不明な意見も含めると、主に以下のような「悪者説」があります。

①無秩序な開発によって土砂崩れのリスクが増している
②光害による新たな問題が発生している
③景観を損ねている
④大量の産業廃棄物が発生して全然エコではない
⑤太陽光発電の普及は中国を利するだけである

それでは、順に1つずつ検証してみましょう。

①無秩序な開発によって土砂崩れのリスクが増している

無秩序な太陽光発電所の開発が土砂崩れの原因になっているというのは、確かに事例もあります。2015年には集中豪雨によって鬼怒川の堤防が決壊して洪水が発生したことがありますが、これは太陽光発電所の用地を造成するために堤防の一部を削ったことが原因であるとの指摘がありました。指摘というより、ネット上は「太陽光発電所が悪い」という情報で溢れかえって「炎上」に近いものでした。
実際のところはどうなのかというと、この場所はもともと堤防がなく越水の危険があると指摘されていた場所であると、施工会社は見解を発表しています。それでも自然堤防を削ると越水の危険があるのは間違いないので、やはり太陽光発電所が洪水の一因になっていると言われても仕方ないでしょう。
その他にも、2021年に起きた熱海の土砂崩れでは上流区域にあった太陽光発電所の乱開発が原因であるとの指摘があります。実際には直接的な原因を及ぼすような場所に太陽光発電所があったわけではないので「悪者説」はデマに近いものだったのですが、それでも「太陽光発電は環境を破壊して災害を増やす」とのイメージが強まったのは間違いないでしょう。いずれも直接的な原因とはいえないものの、現在のような乱開発には何らかの秩序が必要だと思います。
なかには土地の造成における技術やノウハウが未熟な業者もあるようなので、そういった業者の存在が太陽光発電「悪者説」に関する本当の「悪者」ではないでしょうか。

②光害による新たな問題が発生している

あまりこれまでは聞かれなかった言葉ですが、太陽光発電に日光が当たることによってその反射した光が周辺に悪影響を及ぼす「光害」が問題視されるようになりました。
太陽光発電所の近隣にある家に光が当たり続けると悪影響があるのは間違いないので、それも太陽光発電のせいだ、となるわけです。これについても、太陽光パネルを設置する際に反射した光がどちらに向くのかを計算して設計されるのが普通です。
太陽光パネルは適切な角度で設置しないと発電量にも影響するため、最適な角度を計算した上で設置されます。その最適な角度で設置されている以上、人が住んでいるところに光が反射したりといったことはありません。つまり、これもずさんな工事をした結果による弊害です。

③景観を損ねている

太陽光パネルが景観を損ねているという指摘は、以前からありました。住宅用の太陽光パネルを屋根に取り付けると景観が悪くなるという理由で設置を見送ってきた人も少なくありません。こうした問題の多くは、太陽光パネルの違和感が原因です。
もともと家の屋根にそんなものはついていなかったわけで、それを後付けにすると見映えが悪いというのは仕方ない部分があります。そのため、現在販売されている太陽光パネルの多くは景観に配慮したものとなっています。最初から太陽光発電を導入することが前提の住宅で景観に溶け込むようなデザインになっているものが大半なので、以前あったような違和感はなくなりつつあります。
また、景観条例が設けられている京都などでは太陽光パネルを設置する際の基準が設けられています。もちろんその基準を満たしているものであれば合法であり、景観との調和も図られているので問題はありません。

④大量の産業廃棄物が発生して全然エコではない

太陽光パネルなどの主要機器には寿命があるので、これらが寿命を迎えたあとの廃棄物が大量に発生し、むしろエコではないという指摘もあります。特に太陽光パネルにはそのまま廃棄すると有害な物質も含まれていることから、不法投棄が横行すると環境破壊につながるとの懸念があります。
もちろん、適切に処理すれば環境破壊をすることはなく、太陽光パネルが大量に廃棄されたとしても問題が大きくなるわけではありません。問題は、廃棄するのにかかるコストを嫌った悪質な業者が不法投棄をしてしまうケースです。これだと確かに太陽光パネルに含まれている有害物質が自然環境に悪影響を及ぼす可能性があり、現在懸念されていることも的外れではありません。
結局は太陽光パネルを設置した業者、処理する業者のモラルに依存する部分が大きくなってしまうわけです。しかしながら太陽光発電から生じる廃棄物はクルマなどの工業製品と比べるとその比ではなく、使われている部品の数や量を見てもクルマのほうが圧倒的に環境負荷が高いというのが実情です。

⑤太陽光発電の普及は中国を利するだけである

「悪者説」の最後は、中国との兼ね合いです。現在、世界の太陽光パネル製造は中国が圧倒的なシェアを有しており、太陽光発電が普及すればするほど中国が儲かるという構図があるのは確かです。そのこと自体も面白くないと感じる人は多いかもしれませんが、それは現実です。
最もコストを安く大量生産できる国がシェアを握るというのは避けられないことです。かつて日本が世界のトップシェアを握っていたことを考えると、その優位性が中国に移ってしまったということです。
そうなると次に懸念されるのが、「中国はウイグル人などを強制労働させて安くパネルを製造している」という指摘です。ことの真偽はともかく、人権よりも経済の効率性を重んじる国なのは間違いないので、そう疑われても仕方ないでしょう。
さすがに強制労働とはいかなくても、劣悪な環境で太陽光パネル製造をしていることは容易に想像がつきます。そうでなければ圧倒的に安く製造することは不可能です。
残念ながらこの現実は当面続くと思われますが、その場合は国産パネルを選ぶなど、利用者の意識で変えられることはあります。例えば長州産業は純国産の太陽光パネルを販売しており、消費者がそれを選ぶことで国産パネルの市場も拡大していくでしょう。太陽光発電の普及はエネルギー安全保障の観点からも、日本の利益になります。単純に太陽光発電が普及すると中国を利するだけではないことにも、理解を深める必要があります。


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(大阪府 / 住宅設備コーディネーター)
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